「屈折率」佐々木譲

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
安積啓二郎(あづみけいじろう)は自分の事業からの撤退を機に、兄の経営していて存続の危機に瀕していた実家のガラス工場の建て直しを担うこととなる。啓二郎(けいじろう)はそのガラス工場で透子(とうこ)というガラス工芸作家に出会う。
本作品には、優秀な営業マンが企業を立て直す経済小説の要素と、恋愛小説の要素が取り入れられている。
この物語で新しいのはその恋愛の形だろうか。啓次郎の妻は経済的にも自立したキャリアウーマンで夫の浮気も仕方がないものと考える。また、透子もガラスと恋人ならガラスを選ぶという女性。男性目線で描かれた物語でありながらも女性の強い生き方を魅せてくれる。
また、ガラス工場という点でも、面白い。大田区という世界でも有名な工場地帯を舞台としており、やや頑固な生き方をしながらも、そこで働く人々は高い技術を持つが、市場調査や営業力を持たない。そこに経験豊かな啓二郎(けいじろう)が取締役として加わることで徐々に業績は上向いていく。
屈折率のものすごい高いガラスのエピソードはなんとも興味深くロマンチックで印象に残った。自分の中の話のネタの一つに加えておきたい。
その厚さにやや戸惑うかもしれないが、個人的には、読んで後悔することのない作品と感じた。

予納金
自己破産を裁判所に申立てする際、裁判所に収めるお金のこと。これを収める事が出来ないと自己破産の手続を受けることはできない。

クラインの壺
境界も表裏の区別も持たない(2次元)曲面の一種。(Wikipedia「クラインの壺」
参考サイト
日本ガラス工芸協会

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