「猛禽の宴」楡周平

オススメ度 ★★★☆☆
日本でコカインネットワークを築いた朝倉恭介はアメリカで組織の長であるファルージオを介して幹部たちと顔を合わせる。その後ファルージオが襲撃されたことで組織は、トップ争いの混乱に向かう。
「Cの福音」の続編に当たる。舞台をニューヨークに移し、そこをテリトリーとする多くの組織、中国系マフィア、イタリア系マフィアなどの間で広げられる勢力争いと、駆け引きに焦点があてられている。
メインはそのマフィア間の抗争であるが、むしろ興味をひかれたのが、湾岸戦争の後遺症に悩む元米軍兵士のアラン・ギャレットの人生である。
国を守るために多くのものを犠牲にしたのに、国は何も助けてはくれない…。この物語はもちろんフィクションであるが、似たような話は世界中にあるのだろう。
物語自体は朝倉(あさくら)とギャレットが出会って自らの安全やプライドを守るために闘いを始めるというものだが、朝倉恭介シリーズの「つなぎ」的な印象が否めない。このシリーズの続編を今後も買うか考えてしまう。
ただの人間の物語であるだけでなく、なんらかのテーマを内包した物語でなければ貴重な時間を割いてまで読む意味を見出せなくなるかもしれない。

アパラチン会議
1957年11月14日にアメリカ合衆国ニューヨーク州の町オウェゴ(Owego)の郊外アパラチン(Apalachin)で開かれたマフィアによる秘密会談のこと。 (Wikipedia「アパラチン会議」

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