「誘拐の果実」真保裕一

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
都内で大病院の孫娘、17歳の辻倉恵美(つじくらえみ)が誘拐された。犯人の要求は入院患者、永淵孝治(ながぶちたかはる)という患者の命である。一方、神奈川県内では書店の息子で19歳の工藤巧(くどうたくみ)が誘拐された。こちらの犯人の要求は七千万円分の株券である。
別の場所で起こった二つの誘拐事件が、それに取り組む刑事たちの努力の末に次第に共通点が見えてくる。
物語全体としては、誘拐を起こした犯人たちの意図や家庭環境が複雑で感情移入できない箇所も多い。それでも「自分を許せない」というような、今では多くの人が忘れかけている純粋な気持ちを思い出させてくれる話ではある。作者の多くのアイデアが詰まった作品であるというのは感じるが、それが効果的に物語りに取り入れられたとは言いがたく、一般的な刑事物語の範囲を出るものではないと感じた。
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