「千里眼とニュアージュ」松岡圭祐

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
史上最大のIT企業が設置した”48番目の都道府県”萩原県。そこはニートと呼ばれる無職の人々や失業者たちが、生活費も支給されながら暮らす最先端の福祉都市である。
ところが住民たちは悪夢にうなされて臨床心理士への相談を希望する。そんな舞台の上で、「蒼い瞳とニュアージュ」の主人公であり、萩原県で生活する一ノ瀬恵梨香(いちのせえりか)と、千里眼シリーズの主人公であり、「千里眼 トランス・オブ・ウォー」の話の後にイラクから帰国したばかりの岬美由紀(みさきみゆき)の人生が重なるという、松岡作品ファンにとっては待ちに待った作品だったのではないだろうか。
物語は、主人公クラスの二人が活躍するという内容ではなく、どちらかというと主役の座は美由紀(みゆき)に譲り、恵梨香(えりか)は自分の生き方に迷い、時に投げやりな姿勢が印象に残る。
美由紀(みゆき)は相変わらず、読者の誰もが憧れるような行動力と聡明さを併せ持ちながらも完璧な女性であり続けるわけではなく、誰もが味わいそうな悩みや葛藤を見せるところがまた読者のヒロインであり続ける要素なのであろう。

イラクで過ごした日々は、あまりにもわたしの視野を大きくしすぎた。たとえ相談者でなくとも、目の前にいる人に苦痛を与えておいてカウンセラーといえるのだろうか。多数が少数に優先するという考えは、自衛隊を辞したときに捨てたはずなのに。

物語全体としては、美由紀(みゆき)と恵梨香(えりか)が出会うこと意外は今までの松岡作品と比べて目新しいことも、感動する場面もないように思えた。ニッポン放送株買収問題で脚光を浴びたライブドア、2000年に発覚した藤村真一氏の遺跡捏造事件など、社会の出来事を上手く素材として物語に取り入れようとするあまり、内容が薄くなってしまったように感じる。次回作品に期待する。


モノマニアック
幼少の頃の偏執的な性格を残し、他人を所有物で判断する傾向のある人格のこと

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