「悲嘆の門」宮部みゆき

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
インターネット上に溢れる情報を監視する会社でバイトを始めた三島孝太郎は、同僚の一人がホームレスの失踪事件を追って失踪したことから、自分自身も真相を追い始める。やがて孝太郎(こうたろう)は夜間に動くガーゴイル像の噂を耳にする。
主人公が「サイバーパトロール」という、あまり世の中では知られていないアルバイトをしている設定にすることで、ネットでの言葉のやり取りが生み出す不安や恐怖の連鎖に警鐘を鳴らしているかのようだ。
そんな会社で働いているために、世の中を騒がせる事件の情報をより深く知ることとなり、同僚の失踪を機に、自らもその事件に入り込んでいくのである。そんな、序盤の展開は宮部みゆき作品らしく、読者を物語にどんどん引き込んでいく力を感じさせる。
ところが物語は中盤からファンタジー色が強くなる。個人的にはイメージできない世界が大きく、あまり物語についていけなかった印象を受けた。宮部みゆきは今までもファンタジーをいくつか世に出しているが、どれも時代物や現代物語に比べると魅力を感じないので、ひょっとしたら宮部みゆきのファンタジーが好きな人はまた異なる捉え方をするのかもしれない。
【楽天ブックス】「悲嘆の門(上)」「悲嘆の門(中)」「悲嘆の門(下)」

「Divergent」Veronica Roth

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
その世界はDauntless、Amity、Erudite、Abnegation、Candorという5つの派閥で構成されていた。Dauntlessは恐怖を克服して生きること、Amityは人に対する優しさや道場を、Eruditeは知識を、Abnegationは自分を主張せずに人のためにいきること、Candorは嘘をつかずに正直に語り生きることを重視していた。若者たちは大人になるときに自分の所属する派を選択することができる。本書はAbnegationの家庭に生まれ育ちながら、Dauntlessとして生きることを選んだBeatriceの物語である。
最初の舞台設定がかなりおもいっきっているので世界観になれるのに時間がかかるかもしれないが、そんな世界を想像しながら描く著者の楽しさが伝わってくるようだ。主人公であるBeatriceは派の選択儀式の前の診断テストで試験管に、どの派にも向いていないDivergentであると見出されるが、同時にその事実は秘密にすべきだとも忠告される。なぜDivergentの事実を秘密にしなければならないのか不思議に思いながらもDauntlessで生きる選択をするのである。
その後はBeatriceのDauntlessとして生きるための通過儀式の様子を描いている。恐怖に打ち勝つことや、戦いの技術などを学びながら、その一歩でAbnegation以外の派から移った仲間たちとの交流に戸惑う様子などが描かれている。
もちろん物語はそこからそれなりにクライマックスへ向けて大きく動くのだが、結局BeatriceのDivergentが現代の人間の象徴であり、それぞれの5つの派が重視する強さ、優しさ、知性、謙虚さ、正直さのすべてのバランスをとることこそ重要であるということを物語を通じて伝えているように感じた。
続編もあるらしいが読み続けるかどうかはなんとも言い難い。暇つぶしとしてはいいかもしれないが、学び取れる部分は多くはなかった。

「デザインの次に来るもの」八重樫文

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
イタリアでデザインをしていた著者が、グローバルな視点からこれからのデザインを語る。
前半では、「デザイン」という言葉について触れている。日本に限らず世界では「デザイン」という言葉は視覚的な「スタイリング」を指して使われることが多く、一握りの最先端の企業だけが、プロセスや戦略に「デザイン」という言葉を用いているのだという。本書はそんな「デザイン」の捉え方の違いを「大きなデザイン」「小さなデザイン」と呼んでいる。そして、これからの時代の変化に対応するために「プロセス」や「戦略」にまでデザインの考え方を適用するためにすべきことを事例を交えて語っている。
基本的に自分が今世の中に憂いている点と重なる部分が多かった。本書を読んで思ったのは、今、世の中には多くのデザイナーが存在し、その多くはスタイリングだけを考える「小さなデザイナー」であり、自分自身が「大きなデザイナー」であることを示すためには「デザイナー」という肩書きはあまり適切でないのではないかということ。本書では「クリエイティブディレクター」という言葉を例に挙げているが、肩書き自体を考え直すきっかけになった。
正直読み易い書き方がされているとは言いがたく、言いたいことも漠然としか伝わってこなかった。とはいえ、いくつかのことを考え直すきっかけにはなったがあまり人に勧められる本ではない。
【楽天ブックス】「デザインの次に来るもの」」

「幸福な生活」百田尚樹

オススメ度 ★★☆☆☆ 3/5
短い19の短編を集めた作品。
どれも日常のなかにふと起こりそうな出来事を扱っている点が面白いかもしれない。また、もう一つ特長的なのはどの短編も最後の1行で読者に衝撃を与えるように意図されているという点。
正直、物語としての深さはあまり感じられず、どちらかというと小説を書き始めたばかりの人が趣味として書いたような内容ばかりな印象を受けた。展開としても「実はこのひとがあの人だった」というような同じパターンの話もあり、短編だけど深みが感じられるというようなものでもなかった。
「永遠の0」や「海賊と呼ばれた男」などのような深さを求めて本書を取るなら後悔するだろう。
【楽天ブックス】「幸福な生活」」

「ストーリー・セラー」有川浩

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
小説家である妻と、その作品に惚れ込んだ夫の物語。
特別印象的な内容というわけではなかったが、女性の小説家を主人公に据えているということで、著者自身の体験が反映されておりかなりの部分が現実に近い形でえがいているんだろうと感じられた。
物語全体がSideAとSideBの大きく2編に分かれており「イニシエーション・ラブ」を連想させる。ひょっとしたら僕が読み取ることができなかった裏の意図が込められているのかもしれない。
【楽天ブックス】「ストーリー・セラー」

「二十億光年の孤独」谷川俊太郎

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
タイトルはずいぶん前から知っていたが、知り合いから勧められたことで、読んだことはなかったことに気づき、今回手にとった。
正直、わからない。もう少し共感できるような詩があるのではないかと期待したのだが、どこか表面的に感じられてしまった。それぞれの詩になにかもっと深い真意のようなものがあるなら僕には理解できなかったようだ。
印象的なのはこの「日日」という詩の最初の4行。

ある日僕は思った
僕に持ち上げられないものなんてあるだろうか
次の日僕は思った
僕に持ち上げられるものなんてあるだろうか

誰しも、辛い日もあれば調子のいい日もある。そんな思いを綴ったのだろう。
ひょっとしたらもっと若いときに読むべき詩集だったのかもしれない、と感じた。
【楽天ブックス】「二十億光年の孤独」

「星間商事株式会社社史編纂室」三浦しをん

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
川田幸代(かわたゆきよ)は社史編纂室に勤務する29歳。社史をまとめることが仕事なため、年配の社員や、退社した社員から話を聞いて情報を集めようとするが、過去のある時期に関して、関係者は頑なに口を閉ざす。一体その時代に何があったのか。
社史をめぐる業務が、やがて商社の海外進出の際の闇の歴史を暴き出すこととなる。すべてがフィクションとはいえ、同じようなことが実際にあったのではないかと考えさせられる。
ただ、残念ながら他の三浦しおんの作品のように読者を強烈に引き込むような面白いさは感じられず、また、なぜこのようなテーマで物語を描いたのかも感じられない中途半端な仕上がりだと感じた。
【楽天ブックス】「星間商事株式会社社史編纂室」

「塩の街」有川浩

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
塩害と呼ばれる災害が地球に広がり、多くの人が塩と化して亡くなった。そんななか出会った秋庭(あきば)と両親を失った真奈(まな)の物語。
塩害によって秩序を失った世界で生きる2人の様子が描かれる。なぜ「塩害」なのかという部分には触れられていないので、洪水や地震のようにもう少し実際に起こるような災害にしても著者が訴えたいものは訴えられたような気もする。
物語はそんな災害のなかで知り合った秋庭(あきば)と真奈(まな)が少しずつ絆を深めていくという流れである。著者有川浩の初期の作品ということで、物語自体に強い個性のようなものは感じられない。よくある物語の一つといった印象である。
【楽天ブックス】「塩の街」

「自分にできる努力しなくていい努力」和田秀樹

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
日本ではなぜか「努力は美しい」という考え方が広まっている。そして努力をしないと「怠け者」というレッテルを貼られる。その風潮が、正しい努力と、ただ単に辛い事に我慢するということを混同させ、しなくていい努力に耐え続ける人を多く生み出しているのだ。
本書で繰り返し語られる内容は、まさにそんな無駄な努力を続ける人に向けたものである。

正しい方法を知らずに、ただ時間とエネルギーを費やしても得られるものはない。
「努力した」ということに満足しては結果は出ない。
努力して向上しないことに力を注ぐより、努力して向上することに力を注ぐべき。

日々、いろんな人に出会う中で、こんな無駄な努力のワナに陥っている人をたくさん見かける。彼らに一体どんな言葉で説明すれば伝わるのか、それが知りたくて本書を手に取ったが、もちろんそんなことは本書には書かれていない。
【楽天ブックス】「自分にできる努力しなくていい努力」

「はなとゆめ」沖方丁

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
「枕草子」を書いた清少納言の物語。
28歳の清少納言は中宮定子のもとに使え始める。最初はその華やかさに気後れしていた清少納言だが少しずつその才能を表に出して行くことで、認められて行く。本書は清少納言が有名な歌を引用して会話をする様子が多く描かれている。
見方を変えればすこし知識をひけらかすようで不愉快な感じを与えるのが面白い。実際、清少納言の夫は歌を嫌っていたという。歌の知識があるものはその知識を用いて会話し、その楽しさを謳歌する一方で、歌の知識がないものはそれに嫉妬しそれを使うものに対してコンプレックスを抱くのである。これはどこか現代の人々に似ている部分を感じる。
やがて清少納言は藤原道長、定子の政治的な争いに巻き込まれて行くのであるが、そんななか中宮様からもらった紙を有効利用するために「枕」を綴り始めるのである。
当時の雰囲気を理解するには十分であるが、細かい人間関係やそれぞれの人の思惑まで理解できたとは言い難い。しっかり内容を理解するためには平安時代についての結構な知識が必要だろう本書の評価は読者の持っている平安時代の知識によって大きく異なるかもしれない。著者沖方丁(うぶかたとう)の歴史小説としては「光圀伝」「天地明察」が非常に有名でしかも読みやすいが、本作品に同じような読みやすさは期待しない方がいいだろう。
【楽天ブックス】「はなとゆめ」

「指名される技術 六本木ホステスから盗んだ、稼ぐための仕事術」堀江貴文/斉藤由多加

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ホリエモンとゲームクリエーターがホステスの技術を題材にして人間関係を円滑にする方法を語る。
タイトルでは「仕事術」とあるのだが、読んだ印象としては「人間関係の構築方法」だった。特に大きなまとまりも流れもなく、著者の2人が思うことをひたすら書き綴っているという感じで、とりたてて目新しさもない。しかし、普段の行いを少しずつあるべき姿に近づけて行くためには、このような本に定期的に触れる必要があるのだろう。そういう意味では本書のようなあまり濃くない本でも存在意義はあるのだろう。
わずかながら印象的だ多野は「共犯になるための技術」である。簡単に言うと「向かい合う」よりも「同じ方向を向く」機会を作る事で仲が深まる、というもの。アルコールや飲み会の苦手な僕に取っては、共感できる人間関係を作るのはほかの人程簡単ではないが、こういう機会をもっと増やしたいと思った。
全体的にはそれほど人にお勧めできる内容ではないが、大した時間もかからずに読み切れるので身近にあるなら読んでみるのも悪くないだろう。
【楽天ブックス】「指名される技術 六本木ホステスから盗んだ、稼ぐための仕事術」

「過食にさようなら 止まらない食欲をコントロールする」デイヴィッド・A・ケスラー

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
世の中ではなぜこれほどまでに過食がはびこるのか。過食から抜ける事のできない原因を探る。
前半と後半は、過食に悩む人の研究を描く。僕自身は過食に悩む事はないが、本書で描かれる彼らの様子からは、「意思の弱さ」と一言では片付けられない深い心理的な理由があるようだ。また、過食から抜けるためには、食べ物が近くにあったりするなど環境の問題や、周囲の人間のサポートが重要であることがわかる。
しかし、個人的に本書でもっとも印象的だったのは中盤の「食品業界の手口」という章である。世の中の人気のレストラン等で出されるメニューが、視覚的かつ触覚的に可能な限りの享楽を詰め込んだ結果であることを説明するのだ。ある人気メニューは野菜の色で健康的に見えるように意図しながらも、大量のカロリーを含んでいるのである。砂糖、脂肪、塩をどれだけ見事に組み合わせ、食べる時の障害を可能な限り取り除いて消費者を惹き付けようとする試行錯誤に驚かされる。また、同時にここまで考え抜かれた食べ物の芸術に、抗う事のできない人たちがいるのも仕方がないとさえ思ってしまう。
本書のメインテーマである食欲のコントロールよりも、食品業界のメニュー作成の方法に興味を喚起させてくれた。
【楽天ブックス】「過食にさようなら 止まらない食欲をコントロールする」

「迷いながら、強くなる」羽生善治

将棋界で前代未聞の偉業を成し遂げた羽生善治が、その考え方を語る。
羽生善治の言葉は他の本などで耳にした事があり、それなりの深みを感じていたので、本書も楽しみにしていたのだが、読み始めてすぐ、文字の大きさとページのスペースの広さにがっかりした。実際、軽く読み終えることができて、印象的な言葉はほとんどなかった。あまり将棋に関わった話というわけでもないし、この内容であれば羽生善治(はぶよしはる)が書く必要はなかった気がする。軽いビジネス書として通勤時間の暇つぶし程度であれば役に立つかもしれない。一番魅力的な文章は本書のタイトルのような気がする。
【楽天ブックス】「迷いながら、強くなる」

「人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの」松尾豊

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
人工知能研究者で東京大学の准教授である著者が現在3回目のブームに差し掛かっているという人工知能について語る。
著者が書いているように、これまで人工知能はブームと誰の話題にも上らないような冬の時代を繰り返してきたという。確かに「人工知能」という言葉はかなり以前から耳にするが、現実に人工知能が生活のなかに浸透しているとは言い難い。本書ではまず、その理由の1つとして「人工知能」という言葉による世間の認識と専門家の考えのずれを指摘する。そして、第一次人工知能ブーム、第二次ブーム、第三次ブームをそれぞれの特長を交えて説明するのである。
著者が意識的に簡単な言葉を使おうとしているのは伝わってくるが、それでもなかなか説明を読んだだけで理解することは難しい。第1次ブームが「推論」と「探索」の時代、第2次ブームが「知識」の時代、第3次ブームが「機会学習」と、なんとなく過去の人工知能ブームの違いが感じられる程度である。
後半では人工知能の未来として、ターミネーターなどの映画で御馴染みの「特異点」についても触れている。この辺りの内容は、多くの人が興味ある内容かもしれない。
全体的にあまり上手く書かれているとは言い難い。初心者向けと言えるほどわかりやすく書かれているわけでもなく、かといってしっかり理解したい人向けに詳細に書かれている訳でもない。書きたいことを書いてそれぞれを無理に繋ぎ合わせたという印象である。

モンテカルロ法
シミュレーションや数値計算を乱数を用いて行う手法の総称。(Wikipedia「モンテカルロ法」
ディープブルー
IBMが開発したチェス専用のスーパーコンピュータ。(Wikipedia「ディープ・ブルー (コンピュータ)」
フレーム問題
人工知能における重要な難問の一つで、有限の情報処理能力しかないロボットには、現実に起こりうる問題全てに対処することができないこと。(Wikipedia「フレーム問題」
シンボルグラウンディング問題
記号システム内のシンボルがどのようにして実世界の意味と結びつけられるかという問題。(Wikipedia「シンボルグラウンディング問題」
ミーム
人類の文化を進化させる遺伝子以外の遺伝情報。(Wikipedia「ミーム」
DARPA
アメリカ国防高等研究計画局(Defense Advanced Research Projects)。軍隊使用のための新技術開発および研究を行うアメリカ国防総省の機関。(Wikipedia「国防高等研究計画局」
関連本
「われ敗れたり―コンピュータ棋戦のすべてを語る」米長邦雄

【楽天ブックス】「人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの」

「ゼロ なにもない自分に小さなイチを足していく」堀江貴文

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
ライブドアの経営者として有名になった後、2年6ヶ月の実刑判決を受けてすべてを失った著者「ホリエモン」がその過去や働く事に対する考え方を語る。
目的を見つけるとひたすらそのために努力をするその姿勢は(本人は「努力」とすら思っていないでひたすら好きな事をやっているつもりだと思うが)、同じ種類の人間である僕にとっては特に新しいものではない。だからといって、普段努力をしない人が読めば良い影響を受けるかというとそんなこともない、そういう人はその感覚が理解できないだろう。
多くの自己啓発本と同様に本書は、挑戦することによって得られるスキルや、充実感などについて語られているので、内容についても新鮮なものはないだろう。
唯一、印象的だったのは、田原総一郎が著者に語ったという言葉

あなたはこの国を牛耳る年寄りたちから嫌われ、怖れられ、ついには逮捕され、実刑判決まで食らってしまった。なぜか?それは堀江さん、あなたがネクタイを締めなかったからだ。ちゃんとネクタイを締めて、年寄りにゴマをすっていれば、球団買収だって成功しただろうに…

大きな目標を達成しようとする目前で、小さな礼儀不足や身だしなみのせいで失敗することがある。信念も大切だが、多少の譲歩もやはり必要なのだ。
【楽天ブックス】「ゼロ なにもない自分に小さなイチを足していく」

「内村航平 心が折れそうなとき自分を支える言葉」児玉光雄

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
ロンドンオリンピックで金メダルをとった内村航平のこれまでのコメントや家庭環境などから、その考え方を描く。
金メダルを取ってさえ満足しない内村の生き方は、ひたすら自らの理想の演技と求め続けているゆえである。本書では、そんな彼の生き方は普段の仕事にも応用できる、という姿勢で語っている。日々漫然と仕事をこなしている人に何か新たな気付きを与えてくれるかもしれない。
しかし、内村航平の生き方や考え方は好きだが、それを利用してこのような薄い内容の本でお金を稼ごうとする著者は好きになれない。読み終わって気付いたのだが数年前にも「イチロー式集中力 どんな時でも結果が出せる!」という同著者の本を読んでいて、そのときにも同じ事を感じたのだ。著者が実際に、内村浩平やイチローに話を聞いたような記述は一切ないのも残念である。
【楽天ブックス】「内村航平 心が折れそうなとき自分を支える言葉」

「黒い羽」誉田哲也

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
幼い頃から右肩に瑕(きず)のある君島典子(きみじまのりこ)は遺伝子治療を受けることを決意し、軽井沢にある研究施設に向かう。しかしその途中で車が横転し、生き残った4人の患者とスタッフで施設にたどり着くが、そこではさらなる悲劇が待っていた。
瀕死の状態でたどり着いた研究施設では、多くのスタッフ達がすでに惨殺されており、そんななか恐怖と向き合いながら4人で生きようとするという物語。
遺伝子治療という考えも特に新しい概念ではなく、それであれば皮膚の病気に悩む人々の心情描写をリアルに行っているというわけでもなく、全体的にあまり深みを感じられる部分がなく、誉田哲也の最近の本なのが信じられないほどである。
いい作品を書くことができる著者であるだけに、お金儲けのためだけに小説を書くというような著者にはなって欲しくないと思った。
【楽天ブックス】「黒い羽」

「ドッグ・ラン」樋口明雄

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
横浜の探偵の鯉沼(こいぬま)と鷹羽(たかば)はある日目を覚ますと首に爆弾ば巻かれていた。自らの命と引き換えに銀行強盗をするように要求されるのである。
こんなコミカルなドタバタ劇は久しぶりである。世の中は最近小説さえも現実の多くの新しい情報が詰まっているせいで、このような物語はむしろ時代の古ささえ感じる。
著者、樋口明雄は動物、特に犬を描いた作品で最近注目していたので、本作品もそのタイトルからそのような内容を期待したのだが、犬はペットとして登場するものの、期待した内容とはほど遠かった。まだ、著者自身が書く小説のスタンスに試行錯誤しているのかもしれない。
本作品自体は、時間つぶしに役立てられる程度のものだろう。本書から学べるものはほとんどない。
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「ダイヤモンドより平和がほしい 子ども兵士・ムリアの告白」後藤健二

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
ダイヤモンドの産地として有名なシエラレオネ。著者はそこで少年兵士をしていた青年ムリアと出会う。
ムリアは父と母を殺され、そのまま誘拐されて少年兵として訓練され、多くの人を殺したのだという。被害者である彼は、多くの人を殺したがゆえに、多くの憎しみも向けられ、罪悪感を抱えながらも、現在多くの事を学んで国の平和に貢献使用している。
あまり馴染みのないシエラレオネという国の現状、未だ平和がほど遠い国があるということなど、改めて感じるのではないだろうか。
タイトルに惹かれて読んだのだが、思った以上に子供向けの内容で中身が薄かったのが残念である。ちなみに著者は先日シリアで犠牲になった後藤さんだということです。
【楽天ブックス】「ダイヤモンドより平和がほしい 子ども兵士・ムリアの告白」

「傷ついた日本人へ」ダライ・ラマ14世

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
東日本大震災によって傷ついた日本人に向けて、ダライ・ラマが語る。
ダライ・ラマの考え方はほかのダライ・ラマ書籍と同じように、心の持ち方が人を幸せにする、ということを語っているのだと思うが、難しい言葉が多く、ややとっつきにくい印象を受けた。「般若心境」や「因果応報」、「ビッグバン」などにも話がおよび、残念ながらストレートなメッセージが伝わってこなかった。先日読んだ「心の育て方」のほうがはるかに分かりやすかった。
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