「錨を上げよ」百田尚樹

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
大阪に生まれ育った又三(またぞう)の破天荒な人生を描く。

物語は小学生時代から順を追って、高校生、社会人、大学生、また社会人とその定まらない又三(またぞう)の人生を描いていく。女性に出会えば、必ずと言っていいほど恋に落ち、執拗なまでにアプローチを続ける点や、女性の影響を受けて進路や仕事を選んでいく感情に任せた生き方が面白い。

そして、そんな破天荒の生き方のなかで、たびたび気づく、学歴による社会の仕組み、世の中の矛盾や心理についての視点が面白い。

そうした知識群の多くは、秀才たちが学校の勉強の延長線上に自然に身につけたものではない、積極的に知識の森に分入らないと手に入れられないものだった。

後半はよりグレーに近い領域の仕事に取り組み始める。そのうちの一つは根室でのウニの密猟である。北方領土という国籍の曖昧な地域に対する、ロシア、日本の難しい立場も見えてくる。

最初は著者自身の体験を別の主人公を据えて描いているのかと思ったが、あまりも破天荒するぎるので違うのだろう。「海賊と呼ばれた男」や「永遠の0」など、深いテーマを持った作品が多い印象に対して、本作品は行き当たりばったりに感じ、本書を書いた理由を知りたいと思った。

とはいえ、又三(またぞう)がさまざまな生き方を体験する中で改めてに、世の中に対してこれまでと異なる視点をモテた気がする。確かに学歴や生まれた環境がその人生に影響を与える部分は多いが、それでもどんな生き方をしても生きていけるのが日本という国なのである。

テーマがはっきりしないので人に勧めることはしないと思うが、人それぞれ得るものはあるだろうと思える作品。

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投稿者: masatos7

都内でUI / UXデザイナー。ロゴデザイナーをしています。

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