「壬生義士伝」浅田次郎

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
南部藩を脱藩して新撰組に入隊した吉村貫一郎(よしむらかんいちろう)は大坂・南部藩にやってくる。その人生はどんなものだったのか、新撰組で吉村(よしむら)と同じときを過ごした人々がその人がらを語る。

先日読んだ司馬遼太郎の「燃えよ剣」に続いて新撰組を描いた物語に触れたくなった本書にたどり着いた。

面白いのは新撰組に在籍し生き残った隊士たちの証言によって物語が構成されているところだろう。また、どちらかというと新撰組は土方歳三(ひじかたとしぞう)を中心に最後まで戦い抜いた英雄のような扱いを受けているにも関わらず、本書では、武士になりきれなかった百姓たちが見栄と面子の芝居をしている、と切り捨てている。描く人が異なればまた解釈も異なる。そんなことを改めて感じた。

やがて、様々な生き残りの隊士の証言から少しずつ、吉村貫一郎(よしむらかんいちろう)の生き方が見えてくる。新撰組の物語では土方歳三(ひじかたとしぞう)、沖田総士(おきたそうし)、近藤勇(こんどういさみ)に焦点が当てられることが多いが、そんな時代の影にいきた1人の男の信念に沿った生き方を描いた物語。

それにしても浅田次郎の作品は、史実をベースに見事に物語に仕上げた作品と、そうでない軽めの物語の出来、不出来の差が大きいと常々感じているが、本書は良い方の作品と言えるだろう。

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投稿者: masatos7

都内でUI / UXデザイナー。ロゴデザイナーをしています。

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