「ペテロの葬列」宮部みゆき

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
杉村三郎(すぎむらさぶろう)は同僚と取材した帰りにバスジャックに遭遇する。妙なことに犯人の老人は人質となった人々に事件解決後に慰謝料として大金を払うことを約束するのである。
物語の発端はバスジャックという形をとっているがバスジャック自体はすぐに解決し、物語は人質となった7名が、名前の知れない老人の正体を突き止める過程を描く。そして、その過程でネットワークビジネスや詐欺など、社会の問題に踏み込んで行くのだ。
そして、その流れとは別に、杉村三郎(すぎむらさぶろう)とその妻菜穂子(なおこ)の関係や会社での同僚との関係もシリーズ内の他の作品よりも多く描かれている。派閥争いに敗れた同僚との関係は、今の世の中どこにでも起こりうることで、やけに現実味を感じてしまった。
バスジャックという一見派手な物語展開を取り入れながらも、それぞれの登場人物の人生に焦点を当てていくあたりは、人の心を描き出すのが上手い宮部みゆきらしい。しかし、若干詰め込みすぎの印象も受けた。同じことを訴えるのに、ここまでたくさん詰め込みここまで物語全体を長くする必要はあったのだろうか、と。
最後は次回作へのつながりを予感させる終わり方。若干後味の悪さを感じさせるが、続編のための伏線なのかもしれない。
【楽天ブックス】「ペテロの葬列」

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。