「遠い太鼓」村上春樹

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
1986年から1987年までギリシャ、イタリアで過ごした村上春樹がその日々を語る。
3年の間、村上春樹はスペッツェス島、ミコノス、イタリアのシシリー、ローマと住む場所を変え、その場所で生活をしながら執筆活動を行った。そんななか書き続けた日々の記録が本書である。特に何か目的があって書いていたわけではないだろうが、ただの旅行者としてではなく、それぞれの国で生活していたからこそわかる、その国の事情が伝わってくる。
面白かったのは駐車場が作れない構造ゆえに解消しないローマの車事情や、選挙の旅に生まれた土地に戻らなければならないギリシアの選挙事情などである。また本書を通じで、村上春樹はイタリア人の仕事に対する熱意のなさを嘆いている。公務員がしっかり働かないから、イタリア市民は税金を納めないのか、それとも税金が回収できないから給料が安くてみんな働かないのか、最後までわからなかったが、日本のシステムは非常に微妙なバランスの上に成り立っているのだと感じた。
村上春樹はこの3年の間に「ノルウェーの森」「ダンス・ダンス・ダンス」を書き上げている。海外での生活が小説にどのように影響を与えたのか、あまり好きな作家ではないが、本書を読んだことで、ぜひその2作品を読んでみたいと思った。
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