「さよなら渓谷」吉田修一

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
幼児の殺害の容疑をかけられていた実の母親立花里美(たちばなさとみ)は隣に住む尾崎俊介(おざきしゅんすけ)との関係を示唆した。別の女性と同棲している俊介(しゅんすけ)は過去に強姦事件を起こしていたのである。
幼児殺人事件という体裁をとって物語は始まるが、その焦点は過去にその殺害事件そのものではなく、関係者の過去を洗っていたマスコミに寄って明らかになった、隣人尾崎俊介(おざきしゅんすけ)の起こした過去の集団強姦事件と、その関係者のその後の様子である。
同じ強姦事件の場にいながらも、そのことを忘れたように成功している人も入れば、それを機にその苦しみから逃れられない人もいる。同じ出来事でもそれを受け止める人に寄って、その記憶はよくもわるくも、長くも短くもなるのだろう。

ああ、この人もずっとあの夜から逃れられずにいたんだなぁって。あの夜から逃れて、自分だけが幸せになっていくことを、心のどこかで許せずにいたんだなぁって。

幸せになるというのが怖い、という行き方があることはなんとなく分かっているがなかなか、それを描いてくれる物語は少ないように思う。そういう意味では貴重で印象に残る内容である。

一緒に不幸になるって約束したんです。そう約束したから、一緒にいられたんです

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