「ピース」 樋口有介

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
埼玉の秩父で起こった連続猟奇殺人事件。犯人の目的は何なのか。被害者に繋がりはあるのか。
最近書店で平積みになっている本作品。物語は秩父にある一つの「ラザロ」というスナックを中心に進む。埼玉の奥地にあるスナックに集まってきた人々。若い大学生もいれば、熟年のカメラマンやピアニストもいる。みんなそれぞれ過去を明らかにしないまま、週に何度かそのスナックに集い、顔と名前だけは知っている関係になる。そんななかで周囲でおこった殺人事件。物語は必ずしも事件解決に勤める刑事たちに集中する訳でもなく、また、そのスナックに集まった人たちは必ずしもそんな殺人事件に明確な恐怖をいだくわけでもなく、そのまま疲れた日々を送り続ける。
猟奇殺人事件という本来スリリングな展開になるであろう題材でありながら、田舎町のゆっくりとした時間の経ち方を感じさせる。ハリウッド映画というよりもフランス映画。そういった意味では個性を感じさせる作品。読者は途中になって考えるだろう。そもそもタイトルとなっている「ピース」の意味とは?と。
個人的にはむしろ秩父という土地に非常に興味を抱いてしまった。機会があればのんびり訪れてそのゆっくりした時間の経過を楽しみたいものである。
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