「風の中のマリア」百田尚樹

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
30日生きることのないオオスズメバチの物語。マリアは飛ぶのが速く「疾風のマリア」と呼ばれる。
百田尚樹は僕にとって注目の著者であるため、内容など確認せずに手にとったのだが、それにしてもハチの物語とは。読み始めてそれに気づいた後は、むしろこのハチをどのようにして200ページを越す物語に仕上げたのか、とそちらに俄然興味を抱いた。
序盤は巣のなかでワーカーという餌を捕獲する役割を担う一人のマリアの狩りの様子を描きながら、オオスズメバチの生態を説明している。30日という短い生涯ということで1日1日と上の立場になって、毎日戻らない仲間のハチたちの情報によって、自分も近いうちに命が尽き果てることを意識して狩を続ける。
周囲の昆虫と話すことにより一生餌を捕獲し続け、恋もせず子供も生まないということに疑問を持ち始めるあたりは、短い一生のなかに人並みの悩みを与えて、人生の縮図のようで面白い。
物語を楽しみながら、女王蜂による集中産卵の意味が見えてくる点も興味深い。昆虫にしゃべらせて擬人化させてしまっている時点で、小説としては難しい部類の構成になったと思うが及第点は十分に与える内容と言えよう。
むしろ本書を読んでさらに興味を持ったのが著者が今後どのような作品を手がけるのかということ。「永遠の0」で戦争を描き「ボックス」でさわやかなスポーツ物語。「輝く夜」でラブストーリーを描いたと思ったら今回は昆虫の話。まだまだ新しい方向から物語が生まれそうである。
さて、僕がハチ関連の本を読むことなど数年に一度だと思うが、意図せず連続してしまった(「ハチはなぜ大量死したのか?」)この偶然も面白い。本作品にもミツバチの話は出てくるのであわせて読んでみるのも面白いかもしれない。
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