「インビジブルレイン」誉田哲也

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
一人の暴力団員が殺害された事件の捜査中に、刑事姫川玲子(ひめかわれいこ)はある一人の男の名前を上層部から伝えられる。そして、その男が捜査線上に浮かんでも一切調査はするな、とも。
女性刑事姫川玲子シリーズの第4弾である。暴力団員が殺害された事件を機に物語は始まり、そこに、警察内部の過去の失態に対する関心の再燃を恐れて、一人の男の捜査をするな、という圧力を上層部からかけられる。そんななかで玲子(れいこ)を服務、警察内部のさまざまな立場の人間の反応が面白い。また、前三作品と同様に、事件自体は深刻ながらどこかコミカルな雰囲気が漂う言葉のやりとりは健在である。
本作品では、物語は玲子の目線以外にも2つの目線で語られる。一人は暴力団員の牧田(まきた)。暴力団を殺した過去を持ち、それによって自らも暴力団員のなった男。そしてもう一人は、姉を亡くし、父を自殺でなくし、その恨みをはらすことだけを目的に生きている男。いずれも普段の生活では関わる事のないヒトの物事の考え方を読者に見せてくれるだろう。そしてこの2人がどうやって事件と関わっているのかも次第に明らかになっていく。
前三作品と比べるとやや僕の心に残した印象は薄いだろうか。犯人の気持ちに過剰なまでにシンクロしてしまう玲子(れいこ)の個性も本作品ではあまり出てこないように感じる。むしろ短編集となった前作「シンメトリー」の印象を引き立ててしまった感じさえある。
【楽天ブックス】「インビジブルレイン」