「怖い絵」中島京子

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
タイトルのとおり、西洋絵画を「怖い絵」という視点で見つめなおす。「怖い絵」と言っても「怖い」の種類にはいくつかあり、単純に絵自体がグロテスクだったり残虐なシーンを描いたものを語ることもあれば、その時代の背景を知って初めてその絵が怖くなる場合や、その絵の描かれた前後に起こったことを含めて恐ろしかったりと、読者を飽きさせない。
確かに僕らはどうしても今の時代の常識をもって絵を鑑賞してしまう。たとえばドガはバレリーナを数多く描いたことで有名だが、現代のバレリーナと当時のバレリーナの持つ地位はまったく異なるもので、それを理解することで初めてこの絵の持つ意味が理解できる、と著者は書いている。
そうやって著者は多くの絵画のその背景に潜む意味を解説していくのだが、好感がもてるのは、いずれも断定せずに「?をあらわしているのではないだろうか」「?はなぜだろう」という表現を使用している点だろう。結局その絵が何を示そうとして描かれたのかは画家本人にしかわからない。鑑賞者はあくまでもそれを推測することで楽しむ、それが絵画の楽しみ方なのだろう。
本書を読んでまた少し絵画の見かたが変わった気がする。またいくつかの歴史的事実や神話のエピソードを知るきっかけになった。

ティントレット
師匠のティツィアーノとともにルネサンス期のヴェネツィア派を代表する画家。ティツィアーノの色彩とミケランジェロの形体を結びつけ、情熱的な宗教画を描いた。(Wikipedia「ティントレット」
サトゥルヌス
ローマ神話に登場する農耕神。英語ではサターン。ギリシア神話のクロノスと同一視され、土星の守護神ともされる。(Wikipedia「サートゥルヌス」
アルテミジア・ジェンティレスキ
17世紀イタリア、カラヴァッジオ派の女性画家。(Wikipedia「アルテミジア・ジェンティレスキ」
ガニュメデス
ギリシア神話の登場人物である。イーリオス(トロイア)の王子で、美しい少年だったとされる。オリュンポス十二神に不死の酒ネクタルを給仕するとも、ゼウスの杯を奉げ持つともいわれる。(Wikipedia「ガニュメーデース」
メデゥース号
フランス海軍のパラス級40門帆走フリゲート。1810年進水、就役。ナポレオン戦争後期、1809年から1811年にかけてのモーリシャス侵攻に参加し、またカリブ海でも活動した。メデュース号、メデューサ号などと表記されることもある。(Wikipedia「メデューズ (帆走フリゲート)」

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