「国境事変」誉田哲也

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
新宿で殺害された在日朝鮮人の吉男(よしお)。事件を担当する警視庁捜査一課は事件解決のために弟の英男(ひでお)を追求する。しかし英男(ひでお)は公安が長年かけて作った情報提供者であった。刑事と公安という同じ警察組織内の目的を異にする組織の思惑が交錯し始める。
公安嫌いの刑事東(あずま)と、公安でありながら、どこかその仕事に疑問を抱いて任務に就いている川尻(かわじり)。この2人の目線で物語は進む。印象的なのは、川尻(かわじり)の学生時代の経験や、在日朝鮮人であるがゆえに、普通の生活を送ることができない英男(ひでお)の過去やその経験から来る言葉だろう。

監視はときに楽しく、また悲しくもある。神のような気分になる場合もあれば、自己嫌悪で吐き気を催すこともある。
公安ってなんだ。警察ってなんだ。自分は本当に人間なのか。人命より優先して秘匿されるべき身分など、本当に存在するのか。

そして、物語はたびたび国境の島、対馬に向けられる。これほど重要な位置にありながらも、僕ら日本人がほとんど意識することのない島。その重要性を知るだろう。
いくつかの組織名称が登場するゆえに若干組織の利害関係がわかりにくく、スピード感にも欠ける部分があるが、それよりむしろ、すれ違いながらも少しずつ近づいていく、東(あずま)と川尻(かわじり)という二人の警察職員の緊張感が面白い。

【楽天ブックス】「国境事変」