「1/2の騎士」初野晴

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
高校のアーチェリー部主将の円(まどか)はある日、オカマの幽霊サファイアと出会う。時を同じくして中高生の間に広まる不思議な噂。円(まどか)はサファイアとともに見えない犯罪に立ち向かうことになる。
読み終わったときは「まあまあ」という評価でも、時が経つに従って、印象を強めていく物語がある。僕にとってはそれが吉田修一の「パレード」と初野晴の「水の時計」なのだ。そんなわけで、期待とそれを裏切られる不安とともに購入した本作品。
女子高生を中心に据えた物語のため、「時をかける少女」のようなさわやかな物語を想像したが、読んでみると、もちろんさわやかなテンポで描かれているものの、それぞれの犯罪者と、そこで登場する人たちの間で描かれる妬みや失望などの表現にはときどきハッとさせられた。
かといって、そんなに重い内容というわけではない。一方では円(まどか)とその友人たちの友情の物語という側面も持っていて、ときにはおっちょこちょいで、ときには熱い物語が繰り広げられている。
基本的に5つの章に分かれているが、個人的には障害者たちとともに真相に迫っていく4番目の物語が心に残った。特に、障害者の近くで生きている人間が言ったこんな台詞。

ひとりでトイレに行けるようになりたい。それが叶うなら、歩けないことも口がきけないことも我慢する。本気でそう願っていた十六歳の少女を、私は二年前に看取った。

少し怖くなるような生々しい表現に「水の時計」との共通点を感じた。しばらくこの著者の作品は見逃さないように、と思った。

四色型色覚
色情報を伝えるために4つの独立したチャンネルを持つ状況をいう。(Wikipeida「4色型色覚」

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