「どれくらいの愛情」白石一文

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
男女の恋愛模様を描いた短編集である。
名作「私という運命について」のあの独特な空気をもう一度味わいたくて手に取った。実際、最初の物語「20年後の私へ」はその期待に応えてくれたと言えるだろう。
39歳にして離婚暦を持つ岬(みさき)は、多くの同年代の女性と同じように、人生を考え、自分の存在意義を考え、そして、恋愛に悩む。仕事を一生懸命こなしながら、お見合いなどをして人生が満足のできるものになるように努力もしている。
そんな中で遭遇するいくつかの真理や新たな疑問が、岬(みさき)の考えを通して見えてくる。

この人は愛するべき人を探しているのではなく、妻となるべき人を探しているのだ。その二つのどこがどう異なるのかはわからないが、そこはどうしても譲れない一線だった。

答えのない疑問だからこそ、それを考えることの無意味さと重要さという相反するものを感じる。
本作品自体は短編集という形式をとっているが、表題作「どれくらいの愛情」は十分なボリュームがある。その中で主人公である正平(しょうへい)の良き助言者である、不思議な力を持った男性の言葉が素敵である。

与えられた運命というのはいわば地面のようなもので、その地面があるからこそ、そこから飛び立つことができる。または与えられた運命は、最初に電車に乗る駅のようなもので、その始発の駅があるからこそ、別の目的地に向かって旅立つことができる。

主人公にすえられた登場人物だけでなく、その周辺の登場人物からも、お手本となるような生きかたをいくつも見れた気がした。カッコいいことは若いときだけ限ってできることではなく、強い意志を持ち、深く自分を見つめ続けて、その生きかたの意味を考え続ければ、何歳になってもできるものなのだと、教えられた気がした。

カリエス
脊椎を含む骨組織の結核菌による侵食などを指す医学用語。(Wikipedia「カリエス」)

【楽天ブックス】「どれくらいの愛情」