「笑う警官」佐々木譲

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
女性警察官殺人の容疑者として挙げられた津久井(つくい)巡査部長。組織はその容疑を利用して津久井(つくい)の射殺許可を出す。かつて津久井(つくい)と苦難をともにした佐伯(さえき)警部補は独自に津久井(つくい)の潔白を証明しようと動き出す。
多くの人が理解しているとおり、警察というのは決して清廉潔白な組織ではない。単純に私腹を肥やしている警察官もいるだろうが、世の中の平和を維持するための行動ではあっても必ずしも規則に則っていることばかりではない。軽微な犯罪を見逃す見返りとして裏の情報を得ることで、より大きな犯罪を防いだりするのはその1例だろう。
そして時には大きな犯罪を防ぐために犯罪者に協力することもあるらしい。最終的に「平和を守る」という点では一致していても、どこまでが赦される行為か、という点ではそれぞれの警察職員によって異なる。
本作品では、公の場で、警察内部の真実を語ることを正義と信じて行動しようとする津久井(つくい)巡査部長と、その行為を「警察に対する裏切り」と受け止める派閥との争いである。個人の利益に直結するものではなくそれぞれの信念に委ねられるものだからこそ、どこに敵がいるかわからない。そんな環境の中で友人である津久井(つくい)を守ろうと行動する佐伯(さえき)の周到で機敏な判断と、その良きパートナーとを果たすことになる女性警察職員、小島百合(こじまゆり)の知性溢れる言葉の数々がなんとも魅力的である

もし、正義のためには警官がひとりふたり死んでもかまわないってのが世間の常識なら、おれはそんな世間のためには警官をやっている気はないね。

警察小説は、おそらく小説の中でももっとも多く書かれている小説だろうが、そんな警察小説の中でも際立って個性のある作品に仕上がっている。