「螺鈿迷宮」海堂尊

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
借金を背負った天馬大吉は終末医療で注目を集めている病院への潜入を依頼される。そこでは次々と患者が死を遂げる。
「チームバチスタの栄光」から1年半後を描く。物語事態の面白さより、拡大する海堂尊(かいどうたける)の世界が興味深い。今回の舞台はチームバチスタの栄光の舞台となった東城大学病院と同じ自治体に属する碧翠院(へきすいいん)桜宮病院である。
物語は東城大学病院と桜宮病院の因縁に、終末医療を軽視する日本の医療問題にも触れながら展開する。

僕の脳裏に、チューブで雁字搦めにされた祖母の姿が浮かぶ。あれこそ医療の現実。だが、あの光景は果たして、人の生の最後の姿として、ふさわしいのだろうか。

海堂尊(かいどうたける)作品にはもはや馴染みのキャラクターであるロジカルモンスター白鳥や「ジェネラル・ルージュの凱旋」で強烈なインパクトを残した看護師、姫宮(ひめみや)も登場するため、シリーズを読み続けている読者にはそれだけで楽しめる作品と言えるだろう。とはいえ、他の海堂作品と比較すると、やや物足りなさを感じてしまった。もっと現代の日本の医療問題をリアルに反映するか、(もちろん終末医療の問題点については触れているのだが)、そうでなければ物語の面白さをもっと深めるか、他の作品ほど登場人物に魅力を感じなかったことも物足りなさの一つの原因だろう。
【楽天ブックス】「螺鈿迷宮(上)」「螺鈿迷宮(下)」