「私という運命について」白石一文

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
以前から名作とは聞いていたが、そのタイトルから「人生を考えさせよう」という意図が見えるような説教臭い物語をイメージを抱いていたことも確かだ。しかし、実際読み始めてみると、描かれているのは、やや勝気ではありながらも一生懸命生きている自分と同年代の女性、亜紀(あき)の生活である。
亜紀(あき)は仕事や恋に悩み、理想と現実との間のギャップに違和感を覚えながら生きている。20代後半という年齢ゆえに、周囲は結婚という道を選び、そして自分の目の前にもそういう運命の選択が訪れるにもかかわらず、違う何かを求めて踏み出せない。女性だけでなく、将来を悩むすべての人に共感できるのではないだろうか。
そして人生には多くの喜びや悲しみがある。亜紀(あき)の人生も例外ではない。親しい友人の恋愛や、弟の結婚、そして身近な人の死、時に、空気の読み方すら知らない不条理な運命が襲いかかってくる。そしてあまりに不条理だからこそ、「運命」と思わずにはいられない。「何か意味があるのではないか」と願わずにはいられない。
そして亜紀(あき)の周囲で起こる小さな偶然。それは30年、40年と生きていれば誰でも数回は目にするような偶然ではあるが、運命を信じる者にはその偶然は運命として受け止められる。
死んだらどうなるんだろう?
運命って信じる?
誰でも一度は考えたことがある問いかけに対して、本作品もいくつか答えを提供している。

運命を信じるって、決して、あきらめたり我慢したりすることばかりじゃないでしょう?

恋人を失ったがゆえの答え。
死を常に意識して生きてきたがゆえの答え。
その考え方はみんな少しずつ異なるけれど、それでもみんな見えない何かの力を信じている。

運命というのは、たとえ瞬時に察知したとしても受け入れるだけでは足りず、めぐり合ったそれを我が手に掴み取り、必死の思いで守り通してこそ初めて自らのものとなるのだ。

一体、何度この作品の中に「運命」という言葉が出てきただろう。読む前に心配したような説教臭さは微塵もなく、読んでいるうちにいろんな考え方が僕の中に優しくしみこんでくる。読む人によっては人生のバイブルにさえなりかねない作品である。


ベルガモット
ミカン科の常緑低木樹の柑橘類。イタリア原産。(Wikipedia「ベルガモット」

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