「不祥事」池井戸潤

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
花咲舞と相馬は事務管理部ループ調査役。問題を抱える支店を訪問し指導することで、解決に導くのが仕事である。本作品はそんな2人の仕事の様子を描いている。
本作品も「オレたちバブル入行組」と同様に銀行を舞台とした物語。多少、問題の発生する頻度には誇張があるだろうが、著者の経歴を考慮するとかなり現実の銀行内の出来事を忠実に描いているのであろう。
そして、本作品では相馬と花咲舞が指導役として支店を巡ることから、それぞれの支店にそれぞれの物語が描かれる。雰囲気のいい支店、悪い支店。土地柄忙しい支店とそうでない支店。物語はもちろん取引先や窓口を訪れる顧客との間でも起きる。融資をめぐった取引先との人間物語。そして銀行という組織の中に蔓延する出世競争と派閥間の内部闘争などである。

ここには人を動かし、時に狂わせるいくつかの物差しが同時に存在してる。銀行の利益という物差し、そして派閥や個人的な私利私欲という物差し、だけど私たち個人が幸せになれるか、本当にやりたい仕事ができるかという物差しはいつだって後回し

銀行という古い体質の組織に嫌気を感じながらも、その正義感とその歯に衣着せぬ花咲舞(はなさきまい)の物言いが最終的には物語に痛快な空気を漂わせている。実際に勤めなければわからないであろう、一つの業種の中を読者にわかりやすくリアルに描いたという点だけでなく、物語のテンポも含めて読みやすくほどよくスリリングで非常にバランスの取れた作品だと感じた。
ちなみに本作品の主人公的役割を担う花咲舞(はなさきまい)のような、気が強くても、賢くそして優しい女性はなんと魅力的に映ることだろう。彼女の登場が本作品だけに限らないことを望む。


引当金(ひきあてきん)
引当金とは、将来の特定の費用又は損失であって、その発生が当期以前の事象に起因し、発生の可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積ることができる場合に、貸借対照表上に積み立てられる金額。(exBuzzwords用語解説「引当金とは」
債務者区分
金融機関が融資先を債務の返済状態に応じて分類している区分で、正常先、要注意先、破たん懸念先、実質破たん先、破たん先の5段階ある。(用語集:マネー・経済「債務者区分」

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