「封印再度」森博嗣

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
犀川&萌絵シリーズの第五作。50年前、日本画家、香山風采(かやまふうさい)は息子の香山林水(かやまりんすい)に「無我の匣(はこ)」という鍵のかかった箱と、その箱を開けるための鍵が入っているとされる壺である「天地の瓢(こひょう)」を託して謎の死を遂げた。そんな不思議な話を聞きつけた西野園萌絵は例によって香山家へ訪れるが、そんな折、林水(りんすい)がまたしても謎の死を遂げる。そんな流れである。
壺の入り口より大きな鍵が入っているという不思議な物の存在だけですぐにでもストーリーの謎に引き込まれてしまう。毎度のことながら犀川創平(さいかわそうへい)のドライなものの考え方は非常に共感できる。そして、僕らの日々の生活の中では、おかしなことでも慣れていくうちにそれが常識になっていることが意外に多く存在することに気づかされた。

「親父がそういった。お前、電池がなくなったんだ、ってね。それで、すぐ中を開けて、見てみたんだ。そうしたら・・・電池はやっぱりちゃんとあるんだ、これが・・・」

そしてこの物語にあって他のこのシリーズにないのは、西野園萌絵(にしのそのもえ)が取り乱すシーンである。普段は知性的で猫舌以外につけいるすきのなさそうな彼女が犀川の前で取り乱す人間臭さがたまらなく可愛い。

「私だってよく人を待たせることありますけどね、でも、この私を待たせるなんて人は、先生だけなんですから・・・。ああっと、だめだめ、何言ってるのかしら・・・」

さらに今回は犀川と萌絵の仲も少し進展があってそれもまたうれしいことだ。

法隆寺金堂壁画
1949年、模写作業をしていた画家が消し忘れた電気座布団が原因で焼失したと言われている。

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