2013年5月アーカイブ

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
落ちこぼれ男子校の通称ゾンビーズの男たちの自由奔放な生活を描く。

爽快さはあるかもしれないが、残念ながらそれ以上ではない。大人社会の矛盾やストレスや矛盾を、若さと無鉄砲な若者の目線から描く。むしろ高校生や中学生に受けるないようなのかもしれないが、すでに社会に出た人間から見ると、現実感が薄くうつってしまう。

著者の作品は直木賞を受賞した「GO」以来であるが、「GO」のような内容の深みは感じられない。

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オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
アルゼンチン人の革命家チェ・ゲバラの生涯を描く。

医者を目指した旅行が好きな青年が、キューバ革命に関わっていき、その革命が成し遂げられたあとも革命を求めて生きていく様子が詳細に描かれている。著者の調べた事実が書かれているだけなので残念ながらチェ・ゲバラの心の内などはわからないが、すでに名前だけ一人歩きしている感のあるチェ・ゲバラのことを知るのには申し分のない一冊である。

見えてくるのは、陽気で時間や約束を守らないのが当然のように文化に染み付いているラテンアメリカにおいて、チェ・ゲバラがどれほど異質な存在だったかという事だ。引き続き彼に関する書籍を読んでいきたい。

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オススメ度 ★★★★☆ 4/5
元将棋マガジン編集者の著者が何人かの棋士を目指す男たちを描いたノンフィクション。将棋界の厳しさを描く。

冒頭で一人の棋士の劇的な昇段の瞬間を描いている。奨励会というプロを目指す棋士たちのその厳しい現実に、一気にひきこまれてしまう。

将棋一筋に生きようとした彼らは、何をきっかけにこの道を進んだのか、そしてその道を進み続ける人はどうやってその後を生き、その道を諦めざるをえなかった人は今どうしているのか、何人かの奨励会にいた人たちに焦点をあてて、その子供時代、奨励会時代、そして今を描いている。どの人生も印象的で、そしてどの人生からも将棋界という世界の厳しさが感じられる。

同時に驚かされたのが、著者が本書のなかでなんども繰り返しているように、昭和57年組と呼ばれる、羽生善治のいる世代が将棋界にとってどれほど革命的だったかということである。また、コンピューターの発展によって、アマチュアからも強い人が育つようになり、将棋界は大きな変革期にあることも伺わせる。将棋界の現状を理解し、そこにさらに関心を持たせてくれる一冊である。

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短期記憶しかもつことのできないChristineは一晩眠ると前の日の記憶を失ってしまう。だから毎日日記をつけることで前の日に起こった事がわかるようにした。彼女の毎日は、隣で眠る知らない男を夫と認識する事から始まる。

ここ数年短気記憶を扱った物語をたびたび目にする。「博士の愛した数学」「50回目のファーストキス」など、どちらかといえば、短期記憶しか持たないということを、毎日毎日を大切に生きる、ということにつなげる内容が多いように思うのだが、本書はもっとそれをミステリアスに使っている。

医者が言う事と、夫が言う事、そして自分が日記に書いている事に矛盾があるためにChrristineは悩む。そして同時に、今知った事を明日には忘れてしまうという恐怖も味わうのである。息子がいるのかいないのか、息子は生きているのか死んでいるのか、そもそも自分が記憶を失ったのは、交通事故なのか暴行をうけたからなのか。ときどき脳裏に浮かぶ記憶の断片が、少しずつChristineの過去を明らかにしていく。

もはや展開としてはどんな結末にもできる流れだったので驚きはなかったが、一つの物語の試みとしては面白い。

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
池袋で暴力団などを狙った殺人事件が連続して起きる。やがてその殺人者は「ブルーマーダー」と呼ばれるようになる。

姫川玲子シリーズの第6弾にあたり長編となっている。シリーズ第4弾「インビジブルレイン」の出来事によって所轄書に移動になり、それまでの姫川班とも離れる事になった玲子(れいこ)。そこで発生した殺人事件、「ブルーマーダー」を追う事になる。

シリーズすべてに共通する事であるが、事件を解決しようとする玲子(れいこ)だけでなく、犯罪者の側からも物語が描かれている点が面白い。犯罪者には犯罪者の、そういう行動に走らなければならなかった理由があるのだ。

お前も肝を括れ。もう、法律はお前を守っちゃくれない。自分の身は自分で守るんだ。自分の力で守るんだ。その力は、俺が授けてやる。
でもさ、この憎しみや殺意は、実は、愛情の裏返しなんだって、そういうふうには、考えられないかな。自分を大切に思っているからこそ、傷つけられると、悔しいし、悲しい。誰かを大切に思ってるからこそ、その誰かが傷つけられたら、殺したいほど憎くなる。

そして事件だけでなく、警察内の人間関係も面白く描かれている。今回は特に、かつでの部下で玲子に想いを寄せていた菊田(きくた)とのやりとりにも焦点があてられている。

このシリーズは短編集と長編が交互にしばらく展開されているが、短編集の方が深みを感じる。もちろん、長編によって積み重ねられた人物設定があってこそ短編が生きるのかもしれないが。

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オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
人の心を自在に操るカリスマ的犯罪者Daniel Pellが脱獄した。人間の所作や表情を読み解く「キネシクス」分析の天才でカリォルニア州捜査局捜査官のKathryn Danceがその行方を追う事となる。

Rincoln Rhymeシリーズで何度か登場したKathryn Danceを主人公に据えたシリーズの第一弾。会話する人のわずかな動作からその真偽を見抜く技術に長けているゆえに、聞き込みや取り調べでその技術が発揮される。目の動き、手足の動作など、人の感情は実はかなりの部分が表面に現れているのだ。

そうして次第にDanceはPellを追いつめていくのであるが、同時にDanceの夫を失って1人で2人の子供を育てる姿も描かれており、そんな人間らしさがRincoln Rhymeのシリーズとは違って共感できるかもしれない。

やや結末は予想のついた部分もあったが全体的に無難な出来である。ただ、Danceのもつ技術の特異性で読者を引きつけられるのはおそらく一作目だけで、2作目、3作目と続くなかでどのようにシリーズを魅力的なものにしていくのかというのが、個人的には気になるところである。

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
検事佐方貞人(さかたさだと)。多くの検事と違って、人の話をしっかり聞いて人を人として接しようと努める。そんな検事佐方(さかた)を描いた物語。

本書は5つの物語から構成される短編集。いずれも視点こそ違えど、佐方貞人(さかたさだと)という検事が関わる事になる。刑事の視点、佐方(さかた)の上司の視点、佐方(さかた)の学生時代の友人の視点など、多数の視点から一人の人間を見つめる事で、その人間性が見えてくる。

それは、一見ぶっきらぼうで身だしなみに気を使わない粗野な印象であるが、非常に強い正義感を持っている。物語終盤は弁護士でありながら横領をしてその資格を剥奪された佐方(さかた)の父親について明らかになっていく。佐方(さかた)のその正義感の源が見えてくるだろう。男の行き方、信念が見えてくる作品。

本書によって著者柚月裕子は一気に僕自身の要チェック作家の一人になった。その作品をすべて読んでみたいと思わせる一冊。

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数学の好きな「僕」と同じクラスの数学を得意とする才女ミルカさん。そして一学年下で数学を学ぶテトラちゃんの3人が数学に取り組む物語。

なぜかシリーズ第二弾の「数学ガール フェルマーの最終定理」を先に読んでしまったので、若干人間関係が前に戻っているが、タイトルから想像できるようにそれはあまり重要ではない。本作品でも、同様に数学の面白さを読者に教えてくれる。

面白かったのは、フィボナッチ数列の一般項の話。1,1,2,3,5・・・と誰もがフィボナッチ数列というのは学生時代に見聞きしたことがあるだろうが、本書ではその一般項を導きだす。そもそもフィボナッチ数列の一般項を求めるなどという発想自体なかったので楽しく読ませてもらった。

すべて完璧に理解したとは言いがたいが、複素平面なども含めて数学の楽しさを思い出させてもらった気がする。ノートを微分や積分などの式で一心不乱に埋めたい気持ちにさせてくれるが残念ながら今のところその時間がとれない。いつかしっかり本書のすべての問題を鉛筆とノートで書きながらもう一度読んでみたい。

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