オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
日本らしいこれからのデザインについて著者が見解を語っている。

「繊細」「丁寧」「緻密」「簡潔」という日本独自の価値観と、ミニマリズムという世の中の流れを重ね合わせて考えている点が興味深い。

そして、持論を語るだけでなく、多くのデザイン事例を引き合いにだしており、どれもすぐれたデザイナーのものの見方を知ることができるだろう。デザイナーとして長く生きた著者だからこそ、かっこいいデザインではなく、世の中をよくするデザインに目を向けている点が、自分の考えと重なる部分があり興味深く読むことができた。

印象的だったのは、いいデザインは万国共通ではなく、その場所や文化を生かしたものであるという点である。言って見ればあたりまえなのかもしれないが、日本にいながらアメリカやヨーロッパのデザインを何も考えずに真似してしまうのは、ついやってしまうことである。

【楽天ブックス】「日本のデザイン 美意識がつくる未来」」

オススメ度 ★★☆☆☆ 3/5
短い19の短編を集めた作品。

どれも日常のなかにふと起こりそうな出来事を扱っている点が面白いかもしれない。また、もう一つ特長的なのはどの短編も最後の1行で読者に衝撃を与えるように意図されているという点。

正直、物語としての深さはあまり感じられず、どちらかというと小説を書き始めたばかりの人が趣味として書いたような内容ばかりな印象を受けた。展開としても「実はこのひとがあの人だった」というような同じパターンの話もあり、短編だけど深みが感じられるというようなものでもなかった。

「永遠の0」や「海賊と呼ばれた男」などのような深さを求めて本書を取るなら後悔するだろう。

【楽天ブックス】「幸福な生活」」

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
長く続けられる新しい趣味をと思って合気道を始めることにした。本書は入会の際にいただいたものである。

「氣」とは、本当に存在するものなのだろうか。漫画などではよく出てくる言葉ではありながらも、それを実感することなく今まで生きてきた。ということは「氣」とは誰かの作り出した幻想なのか。それにしても誰かの作り出した幻想であれば、今も昔も「氣」という言葉で語られているのは出来過ぎな氣がする。そんな「氣」についてまさに本書は語ってくれる。

前半は、そんな「氣」についての説明と、「氣」をうまく使うことで成功した人や、「氣」にまつわるエピソードを紹介している。王貞治や、西武ライオンズの黄金時代も登場するから面白い。

そして、後半は著者自身が、病気がちな幼少期から強い人間へと変わっていく様子を語っている。ただ単に一人の物語とみても、戦時中に生きた著者のさまざまなエピソードは面白い。

残念ながら、本書を読んでも結局「氣」の使い方はわからないだろうが、「氣」というのもの存在を信じ、それをうまく使うことが人生にどれほど役立つかは伝わってくるだろう。

毎日の歩き方や姿勢や気持ちの持ち方を変えてくれる一冊。

【楽天ブックス】「氣の威力」」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第150回芥川賞受賞作品。

結婚して仕事をやめた「私」は、姑の隣の家に住むことになった。「私」の新しい生活を描く。

ほのぼのとした作品。タイトルの穴とは、「私」の引っ越した先である動物が掘る穴のことであるが、そこにどんな意味があるのかは最後までわからなかった。田舎町ののんびりとした生活が描かれている。都会の喧騒のなかで生きている人にとっては懐かしい雰囲気かもしれない。

「穴」を含めた三作品が含まれており、後半の2編にはいたちが出てきたので、ひょっとしたら最初の物語の穴を掘った動物の正体はいたちなのかもしれない。

純文学というものにもっと触れようとして本作品を選んだのだが、やはりなかなかよくわからない。

【楽天ブックス】「穴」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
「キャリア磨きの達人」である秋山ゆかり氏が自身のキャリアについて語る。

正直、もっと順風満帆ななかでキャリアを築いてきたキャリアウーマンを思い描いていたが、新入社員の時はどちらかというと受身な働き方で、また途中かなり太っていた時期もあったようで、本書を読むと、見た目はどこにでもいそうな女性社員のであることがわかる。そういう意味では、決して能力的にまねできない人の話ではない点は希望が持てるかもしれない。

著者がそのキャリア形成のなかで学んだことなどを書いているので、新たに気づく部分もあれば、すでに取り入れている部分もあるだろう。ただ、読み終わってからタイトルを見直して、結局タイトルの「五つの力」とはなんだったのだろうというぐらい、書籍としてはまとまりのない本になってしまっているように思う。

また、著者の経歴だけ見ると誰もが認める「すごい人」なのだろうが、僕自身本書を読んで改めて考えてしまったのが、人は本当にここまで「社会で生き残ること」「年収を上げること」を望んでいるのだろうか、ということ。

また、著者自身「私は常に事業開発からブレていない」といっているが、世の中から求める人物を目指すあまり、自分自身が世の中をどうしたいか、自分自身がどうなりたいか、という視点があまり明確じゃないような印象も受けた。

一つの生き方を考えるきっかけにはなるかもしれない。

【楽天ブックス】「考えながら走る グローバル・キャリアを磨く「五つの力」」

オススメ度 ★★☆☆☆ 3/5

2011年芥川賞受賞作品。

同じ別荘で過ごした小学校三年生の貴子(きこ)と高校三年生の永遠子(とわこ)が25年後に同じ別荘で再会する。

今まで、芥川賞受賞作品や純文学と呼ばれる世界があまり理解できずにいた。それでもこれだけ本を読みながら広く評価される分野の本を理解できないのはもったいないと、今年漫画大賞を受賞した「響」という小説家を扱った漫画を読んで思い、本書を手にとった。

物語が何かを教えてくれるのだろうと期待して読むというよりも、文体や空気を感じ取ろうとして読むと違った理解ができるかもしれない。本書は、貴子(たかこ)と永遠子(とわこ)という成人した女性同士の再会を描いているが、そんななかで25年前の出来事の回想シーンも多く含まれており、そんななかにいくつか不思議で印象に残る表現があった。

ひとしく流れつづけているはずの時間が、この家には流れそびれていたのか...


貴子(きこ)と永遠子(とわこ)の2人の長い髪が描写される場面も多く、「髪」というタイトルにもできそうだと思った。どこか優しさを感じさせる物語。

【楽天ブックス】「きことわ」

オススメ度 ★★★☆☆ 4/5
ゴッホもピカソもどちらも現在では有名な画家でありながら、ゴッホが評価され絵が売れ始めたのは亡くなった後のこと。それに対してピカソはお金の作り方を心得ていた故にお金持ちだったという。そんな話から本書はお金だけでなく「価値の作り方」を語る。

本書によれば、これまで僕らは政府の発行する「お金」ばかりに価値を置いて生きてきたが、その形は崩れ始めているという。大企業の持つ仮想通貨の方が国の信用によって成り立つお金よりも安定していて価値がある場合もあるし、また信用のある個人の発言がお金以上の価値がある場合もあるというのだ。

ここで「価値」という言葉を使うと全体の意味がわかりにくくなるかもしれない。結局「お金」もどれほど社会や世の中に影響を与えるかを表したものである。例えば多くの読者を持つブログの著者は、その発言によって世の中に大きな影響を与えることがわかるだろう。さらに、お金がなくても信用力、発言力のある人が困っていれば、寄付などは簡単に集まるというのである。

つまり、本書では現代において、政府のお金を蓄えること、企業のお金を蓄えること、自分の価値を高めること、の3つの軸で自らの生活を考えることが必要だと語っているのである。本書は「お金」を貯めるよりも「信用」を貯めることの方がはるかに重要だというのだ。

それでは信用を貯めるにはどんな方法が有効なのだろう。本書ではこんな表現を用いている。

信用度=(専門性 + 確実度 + 親密度)/ 利己心

「専門性」は、ミッションや才能を価値に変換する能力
「確実度」は、約束を守るということ
「親密度」は、相手との精神的な距離の近さ
「利己心」は、自分の利益を重視すること

生き方に軌道修正をしなければならない気にさせてくれる一冊。
かなり納得する部分があり本書を読み終わって、いくつかのTwitterアカウントの解説と、LinkedInのプロフィールを見直した。忘れないようにこの考え方を繰り替えし見直したいと思った。

【楽天ブックス】「なぜゴッホは貧乏で、ピカソは金持ちだったのか?」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
37歳のワタナベが1969年の19歳のときに起こった出来事を思い出す。

言わずと知れた有名作品。周囲のハルキストから村上春樹作品について熱い話を聞かされるたびに挑戦して、相変わらずその世界観の魅力を理解せずに終わるということを繰り返しているが、今回もそんな挑戦の1つである。

本書はワタナベがノルウェイの森という曲によって、過去を思い出す、という形式で描かれている。19歳だった当時のワタナベの日常には、自殺した友人のキズキ、その恋人の直子、直子と一緒に療養所で過ごしてるピアノ教師のレイコ、ワタナベと同じ寮の部屋で過ごす長沢など、どこか奇妙な人々が関わっていた。それぞれがそれぞれの不思議な視点から物事を語る言葉がワタナベ自身の生き方に影響を与えたのだろう。そんな言葉の数々は、読者自身にもなんらかの影響を与えるのではないだろうか。

個人的に印象的だったのは、ワタナベが同じ部屋の友人長沢について、その彼女に別れを勧めながら語るシーン。

もちろん僕だって僕なりにあの人のこと好きだし、面白い人だし、立派なところも沢山あると思いますよ。僕なんかの及びもつかないような能力と強さを持ってるし。でもね、あの人の物の考え方とか生き方はまともじゃないです。

なんか自分のことを言われているような気がした。きっと誰もが、心のなかに、決して他の人には理解してもらえないと思える一面を持っており、それゆえに表に出さずに心のなかに封印したまま生きているのではないか、と思った。そんな封印を解いて生きる長沢と、それを言葉で語ってしまったワタナベに少しどきっしたのである。

相変わらず春樹ワールドを楽しめたとは言えない気がするが、これまで読んだ春樹作品の中では一番楽しめた気がする。

【楽天ブックス】「ノルウェイの森(上)」「ノルウェイの森(下)」

「In The Clearing」Robert Dugoni
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
友人であり警察官でもあるJennyが、同じく警察官であるJennyの父が保管していた未解決事件をTracyに依頼する。それは40年前に自殺した女子高生の事件である。Jennyの父が集めたたくさんの証拠と当時の写真を、現在の技術によって分析することで、Tracyは真実に近づいていくのである。

第1作がTracyの妹の死を扱ったということで、第二作目以降への期待度はあまり高くなかったのだが、本作品は非常に面白かった。やはりその要因は40年前に起こった事件が、残された証拠写真や証拠物質から真実に近づいていくという聞きなれない手法によるものなのだろう。

物語の中心となるのは、40年前に陸上の成績で将来を期待された高校生の女性Kimi Kanasketに起こった真実を解明することである。ただ単に事件の解決だけでなく、事件から40年後の今もなお彼女が自殺などするはずがないと信じて苦しみ続ける父と兄の姿が痛ましく、また自らも妹の死の謎に20年以上にわたって苦しめられたからこそそんな遺族を救おうとするTracyの姿が印象的である。

結末は予想外の展開だった。誰もが若さゆえにハメを外した経験はあるのではないだろうか。
一歩間違えればそんな若い頃の楽しい一日であるはずだった日の行動が、人生をすべて変えてしまうこともあるのである。そう考えると、決して他人事とは思えなくなってくる。

事件解決の刑事物語にすでに読み飽きた人にもオススメできる一冊である。

オススメ度 ★★★★☆ 4/5

「トイストーリー」等のアニメで有名なピクサーが成功するまでの様子をピクサーの創設者の一人である著者が語る。

ピクサーの歴史とはCGの歴史でもある。本書の冒頭で語られる1970年代のCGは、今見ると信じられないような品質のもので、この数十年間のCGの発展に改めて驚かされるだろう。そして、CGという新しい技術が広まる中で、古い手法に固執しようとするアニメーターたちがいる一方で、著者のように新しい技術を広めようとする人たちがいるのである。

ピクサーと言って僕らがすぐに思いつくのは、アップルの創設者でもあるスティーブジョブスではないだろうか。そして、スティーブ・ジョブスの果たした役割の大きさはすでにみんなも知っていることと思う。しかしピクサーにおいては、僕がアップルの印象として持っていたジョブスの自分の信じたものだけを、誰の意見にも耳を傾けずに追い求める、というような関わり方とは異なる関わり方をしたようだ。ジョブスは、自分のアニメーションに対する知識が足りてないことを早い段階で悟り、制作者たちの意見を尊重するのである。本書での描かれ方で、著者自身がどれほどスティーブジョブスを信頼しているのかがわかる。

本書はピクサーの成功を描いた作品でもあるが、その一方で、ディズニーという一時代を築いたアニメーション制作の会社が落ちてゆく様子も見えて来る気がする。また、ピクサー自体も順風満帆に成功の道を歩んできたわけではなく、数々の失敗を経て常にヒットを生み出す企業へと成長してきたのである。創造力を組織として維持することがどれがけ難しいかがわかるだろう。

本書の最後に書かれている「「創造する文化」の管理について思うところ」はそんなピクサーの考え方が詰まった4ページである。永久保存版にして何度でも読み返したくなる。なかでも印象的な言葉を挙げておく。

リスクを回避することはマネジャーの仕事ではない。リスクを冒しても大丈夫なようにすることがマネジャーの仕事である。
規則をつくりすぎないこと。規則はマネジャーの仕事を楽にするかもしれないが、問題を起こさない95%の社員にとっては屈辱的だ。
「卓越性」「品質」「優秀」は、自らが言う言葉ではなく、他者から言われるべき言葉である。
信頼とは、相手が失敗しないことを信じるのではなく、相手が失敗しても信じることである。

本書を読み終えた後、またピクサー映画が見たくなる。見ていないピクサー作品は片っ端から見ようと思ったし、すでに見た作品でさえも、そのできるまでのピクサー社員たちの奮闘の様子を知ると再度見たくなった。

【楽天ブックス】「ピクサー流創造するちから 小さな可能性から、大きな価値を生み出す方法」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
高校生の僕は偶然のできごとからクラスメイトの女子の余命僅かであることを知ってしまう。余命僅かな女子高生桜良(さくら)とクラスで唯一真実を知る目立たない生徒「僕」との交流が始まる。

桜良(さくら)の余命がわずかであることを知りながらもお互いに普段通りの会話を続ける点が、なぜか現実味があふれて感じる。実際、同じような状況に置かれたらきっと僕自身もこんな反応をするのだろう。それはきっと、事実を受け入れていないとか、信じられていないとかではなく、身近な人がこの世からいなくなるということが体験として理解できていないからなのだろう。高校生という年代にとってはなおさらそんな気がする。

桜良(さくら)自身も、自らの死を決して深刻に語ることなく、それでいて唯一真実をしる「僕」を心の拠り所としているようだ。桜良(さくら)に振り回される「僕」を描きながら物語は進んで行く。終盤に近づくにつれ、少しずつ態度の変わってくる桜良(さくら)の様子に、戸惑いを表わにする「僕」の様子が痛ましい。

結末はぜひ予備知識なしに味わってほしい。単純で使い古された物語ではあるが涙なしには読めないだろう。

「世界の中心で愛を叫ぶ」を思い起こさせる高校生の純愛物語ではあるが、現代風に描かれている気がする。今の高校生は泣いたり叫んだり驚いたりすることを恥ずかしがる、という僕の持っている印象もただの偏見かもしれないが。

【楽天ブックス】「君の膵臓を食べたい」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
社会で企業の一員となって生きる中で有効とも思える考え方をまとめてある。

僕自身の警官からも、多くの企業で非常に偏りのある考え方をする人々を多く見てきたので、このような実践的な考えかがを流布する有用性は感じるが、一方で常に合理的に考えて社会で生きてきた人間にとっては、どれも驚くような内容ではないように感じた。読者自身が毎日「問題解決」という状況にどのように向き合っているかによって、本書の受け取り方は大きく異なるだろう。

【楽天ブックス】「新人コンサルタントが入社時に叩き込まれる「問題解決」基礎講座」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
長男をイェール大と東大に、次男を国立大学医学部に合格させた母親が、その教育方法について語る。

僕自身の関心が向いているせいか、最近この手の教育方法を語った書籍が多いように感じる。このような本を読む時、気をつけなければならないのは、結果が良かったからと言って、その過程で行ったことのすべてがその成功に結びついているとは限らないということだ。

そんななかで、本書を読んでぜひ真似したいと思ったことは、「謝罪と感謝の際に理由をつけさせる」というものと「机ではなくリビングで勉強させる」というものである。ただただ「ありがとうと言いなさい」では考える力や表現力は育まれずただ機会的に「ありがとう」を繰り返すだけになってしまうだろう。またリビングで勉強することで、小学生の頃には子供にとってすぐに質問しフィードバックを受けることのできる環境となるし、中学生や高校生になればそれが適度な親子のコミュニケーションの機会になるのだろう。

また、家族会議を開いて、旅行先をみんなで決めながら歴史を学ぶという点も非常に面白いと思った。

その一方で、漫画やゲームやテレビを見せないという方針は、本当に正しい選択なのか疑問である。難関大学への合格というのが人生のゴールであれば問題ないかもしれないが、変化の激しい世の中に対応しどのような状況においても優れた能力を発揮できる人間を育てるのであれば、様々なものに早いうちから触れておく方がいいように個人的には感じた。

どの方法も大学合格のための方法としては納得感のあるものばかりだが、両親ともに多くの時間と情熱を注ぐ覚悟があってこそできることだと感じた。

【楽天ブックス】「イエール+東大、国立医学部に2人息子を合格させた母が考える究極の育て方」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
小説家である妻と、その作品に惚れ込んだ夫の物語。

特別印象的な内容というわけではなかったが、女性の小説家を主人公に据えているということで、著者自身の体験が反映されておりかなりの部分が現実に近い形でえがいているんだろうと感じられた。

物語全体がSideAとSideBの大きく2編に分かれており「イニシエーション・ラブ」を連想させる。ひょっとしたら僕が読み取ることができなかった裏の意図が込められているのかもしれない。

【楽天ブックス】「ストーリー・セラー」

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
タイトルはずいぶん前から知っていたが、知り合いから勧められたことで、読んだことはなかったことに気づき、今回手にとった。

正直、わからない。もう少し共感できるような詩があるのではないかと期待したのだが、どこか表面的に感じられてしまった。それぞれの詩になにかもっと深い真意のようなものがあるなら僕には理解できなかったようだ。

印象的なのはこの「日日」という詩の最初の4行。

ある日僕は思った
僕に持ち上げられないものなんてあるだろうか
次の日僕は思った
僕に持ち上げられるものなんてあるだろうか

誰しも、辛い日もあれば調子のいい日もある。そんな思いを綴ったのだろう。

ひょっとしたらもっと若いときに読むべき詩集だったのかもしれない、と感じた。

【楽天ブックス】「二十億光年の孤独」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ある高層マンションで4人の人間が殺害された。やがてその4人が本来その部屋に住んでいるはずの人々ではなかったことがわかる。

15年ぶり2度めの読了。直木賞受賞作品でありながらも、最初に読んだ当時はこの作品の訴えようとしていることがつかめずにいた。15年経ち、僕自身にとっても人生は15年前とは違うように見えているはずで、今回こそこの作品の本質が理解できるのではないかと思って読み直した。

事件自体は、高級マンションのローンを支払えずに手放さざるをえなくなった元の持ち主と、格安でその物件を手に入れようとする人、そして不当にマンションに居座って利益を出そうという占有屋の間で起こったことである。占有屋という聞きなれない職業についても非常に興味深いが、事件に関わることになったそれぞれの人々の人生が興味深い。

少し背伸びしてローンを組んでマンションを購入した夫婦、息子たちに自分の能力を誇示するために抵当物件を購入することを選んだ人、占有屋に雇われてそのマンンションに居座ることになった人々などである。

いずれも、人生のなかでどこにでも転がっていそうなきっかけから、人生が少しずつおかしな方向に転がってしまった結果、この事件の関係者になってしまったのである。4人の殺人事件というと、僕らは極悪非道な犯人や事件関係者を想像してしまうが、
実際には普通の人生が絡み合った結果起こったことなのである。誰であろうが、被害者にもなりうるし、加害者にもなりうる、そんな現実を突きつけてくれる。

物語が訴えようとしているテーマとしては同じく宮部みゆきの「火車」に似ている気がする。ただ、本書は「火車」と違って、描かれ方が誰かの視点を中心にしているわけではないので、少し共感しづらい点が残念である。


【楽天ブックス】「理由」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
革新的なデジタルプロダクトの先駆者として25年以上にわたって活躍している著者が本当に求められているユーザー体験を構築するための方法を語る。

非常に実践的で具体的な方法が書かれている点が予想とことなる部分だった。もう少し概念的な部分を知りたい人にとっては、具体的にすぎて自分たちのケースへの適用が難しいと感じるかもしれない。

僕自身最近何度かユーザーインタビューをする機会があったので、ユーザーインタビューの方法を細かく解説している部分を面白く読むことができた。カフェでやるときには店員に見えない席で行う、とか、インタビューを受ける人が気が散らないように壁に向かうようにする、とか、チップを弾む、など、笑い事ではないけどなんだか妙に現実的な方法が溢れている。

もっとも印象的だったのが、昨今Design Sprintという手法のなかで推奨されているユーザージャーニーマップを否定している点である。

ジャーニーマップは作るのに時間がかかりすぎる上に、あまり頼りにならない、なぜなら製品が市場に出た後の現実に即していないことが多いからだ・・・。 もし、あなたがその戦略過程において、より経験に基づいた進め方をしたいなら、この方法をもっと発展させ、制作物を検証可能な開発の流れを作り、そのアイデア出しや発展のサイクルのなかで常に改善していく必要がある。

スタートアップにおいて、どのように新しい考えを生み出し、どのように無駄なコストをかけるリスクを最小限に抑えて製品を大きくしていくかは、重要な問題である。だからこそ本書で推奨されているFunnel Matrixという手法もしっかり理解したいと思った。

最後の章では、UX戦略の舞台で活躍する人々に著者自身が10の質問をぶつけた内容が含まれている。それによって著者の考えだけでなく、多くのUXの最先端で働く人たちの考え方が見えてくるだろう。

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
パブで踊る女性ダンサーたちが同じような手口で殺害される。妹の死の謎を解明したばかりのTracy Crosswhiteが犯人を追う。

第1作の焦点が、20年前の妹の失踪の謎を解明する、というシリーズ物では1度しか使えない内容であるだけに、このシリーズが第1作品単体としてではなくシリーズとしても面白いものであるかはこの第2作目が握っているのではないだろうか。

まず、第1作からほとんど時間的な経過がないことことに驚かされる、実際このダンサー殺害の記述は第1弾の「My Sister's Grave」でもされており、どちらかというと日々起こっている殺人事件の1つどいう描かれ方をしていたので、本作品でその事件が本筋になるとは思っていなかった。

多くの警察物語と同様に、連続殺人を繰り返す犯人を、同僚達と協力して追いつめていくのであるが、本シリーズには他のシリーズにないいくつかの面白い点がある。まずはリポーターであるMaria Vanpeltの存在がある。警察の失態を報道するために常に目をひからせて、秘密の情報を報道して捜査を妨害しかねないVanpelにどう対処するかというのは、Tracy達が常に気にかけないこととなる。またTracyを嫌う上司Nolascoも本シリーズを面白くしている要素の一つで、2人の確執も本作品ではより顕著に描かれる。

この2作目も期待に応えてくれたとは感じるのだが、なかなかその理由をうまく説明できない。本シリーズの魅力は主人公であるTracy Crosswhiteが20代の若くて容姿端麗な女性ではなくアラフォーの女性だということだろう。20年前の妹のSarahの失踪をようやく乗り越えて自分の人生をようやく前向きに歩み始めたTracyは、恋人のDanと故郷に戻って子供を持つという選択肢も考えている点が興味深く、シリーズとしてどのように進展していくのかが楽しみである。

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
高知県で活躍するデザイナーの著者が仕事の取り組み方、考え方について語る。

「デザイナー」という名前でその肩書きを語っているが、その仕事の内容を見るとむしろ「プロデューサー」に近い。それでも著者が自らを「デザイナー」と呼び続ける気持ちは理解出来る。僕自身「デザイナー」とも呼べる職業で何年も生活していると、その言葉の持つ範囲が少しずつ広くなっていくのを感じるのだ。実際には「デザイン」という言葉は、視覚的な何かをつくることをさすだけではなく、新しく何かを作ることすべてに、例えばそれが、仕組みや人間関係やルールを作り出すことだったとしても、使えるのである。

本書では、高知県を中心にそのコミュニティをその企画力とセンスで活性化させていく著者の仕事の様子が描かれている。誰もがこんな生き方してみたいって思うのではないだろうか。

ただ「ありえないデザイン」というタイトルにはやはり違和感が残る。このタイトルが指しているような内容は含まれていなかったし、むしろ著者のすばらしい仕事の様子が描かれていたにもかかわらずデザインを学びたい人が間違って手に取ることを期待したようなタイトルのつけ方が非常に残念である。

本書でもっとも印象的だったのは、「ありのままの良さを伝えるデザインをする」という著者のポリシーである。世の中のいろんな商品をみれば、中身はたいしたものではなくても、美しくデザインされたパッケージに惹かれて買ってしまう、というのはよくあること。そしてそんな仕事を実際デザイナーは求められていたりもいるのだが、著者はそんな人を騙すようなデザインを否定しているのである。だからこそ、本書のタイトルは残念である。

【楽天ブックス】「ありえないデザイン」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
人口1400人の小島で漁師として働く18歳の新治(しんじ)はある日見知らぬ少女と出会い、恋に落ちる。

三島由紀夫というとその作品よりもその壮絶な人生の印象が強く、今まで作品自体を読む機会はなかった。そんななか、本作品は三島由紀夫作品のなかでも異色で読みやすいという評判を聞いて手に取った。

物語全体としては十代の新治(しんじ)と初江(はつえ)の純愛物語とまとめることができるが、もっとも印象的なのはその舞台となった小島の風景の描写である。実際に伊勢湾に存在する神島を舞台としており、島の名前以外の多くは実際に存在する地名で、伊良湖水道や伊勢湾の記述もある。そして、物語中で描かれているその島の人々は、島ゆえに非常に閉鎖的だが、普段つながりの希薄な都会で過ごしているであろう多くの読者にとっては、魅力的な暖かさを感じさせてくれるのではないだろうか。

新治(しんじ)と初江(はつえ)の恋愛からは、地位もお金も気にせずに恋に落ちることのできる若さが感じられる。また新治(しんじ)の母や初江(はつえ)の父など、多くの人間がその恋愛をより強固なものにするために一役買う点が面白い。昨今はコミュニティのなかで恋愛することを嫌う傾向があると聞くが、必ずしもデメリットばかりではないとも感じた。

残念ながら本書について文学的な評価をするほどの知識はないが、他の三島作品にも触れてみたいと思った。

【楽天ブックス】「潮騒」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
数々の有名広告を手がけた実績を持つ著者がアートディレクションの心がけを語る。

本書では「つくる」「かたる」「すすめる」と、大きく3つに分けてアートディレクションの「型」を語っているのが、印象的だったのは「つくる」の章。そんななかでも今後意識したいと重っったのは。

「?」と「!」をつくる

というもの。単純に綺麗なものをつくるだけでなく、見た人がまず「ん?」となり、そして、「あ、そういうことか!」となるような広告はいい広告だというのである。言われてみればそれほど驚くことではないかもしれないが、これを常に頭においてデザインができているかというと疑問である。

もうひとつが

捨てる

である。これもそこらじゅうで語られることであって、シンプルなものがもっともわかりやすく使いやすく、理解しやすい、と誰もが分かっていながらも、世の中には複雑なものが増えていってしまう。ある程度の経験を積んだデザイナーなら誰しもこの意識はもっているだろうが、本書で取り上げる実例を見るとその「捨て方」のバッサリ具合が徹底していて驚かされる。こちらもぜひ改めて意識したい。

残念ながら実例が20年以上前のものばかりで、リアルタイムに見た記憶のある広告が少なかった。本書のターゲット層はきっともっと下の世代であろうことを考えると、その違和感は他の読者にはもっと激しいのではないだろうか。

上でも語っているが、とりたてて新しいことを語っているわけではないので、多くのデザイン関連書籍の一冊として読むべきなのだろう。

【楽天ブックス】「アートディレクションの「型」」

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
イギリスのEU離脱の背景や今後の課題などについて語る。

2006年6月のイギリスの国民投票によるEU離脱は大きなニュースとなった。あるイギリス人の友人はFacebook上で友人に謝っていた。「これは僕らが望んだことではない」と。起きたことはニュースで知ることができるが、その裏にある理由についてもっと知りたいと思って本書を手に取った。

今回の国民投票によって、北部と南部、年配者と若者の考え方が大きく分かれた理由だけでなく、EUという組織の歴史的系などについても今まで知らなかったことを知ることができた。考えてみれば当たり前なことなのかもしれないが、国民投票で離脱という結果になったからといってすぐに離脱と決まるわけではなく、その後イギリスがEUに離脱の意思を伝えて初めて手続きが始まる、という事実も本書を読むまで知らなかった。また、イギリスが島国ゆえに他のEU諸国とは少し異なるスタンスを持ってEUに接していたという事実も印象的だった。

離脱推進派の政治家たちが自らの責任を取ることもない状態で、EU離脱という事実に向き合わなければならないテリーザ・メイ首相の苦悩は想像に難くない。本書でも今後の課題として語られている部分ではあるが、イギリスが今後どのようにEUと向き合っていくのか注目したい。

実際以前にもEUについて詳しく知りたくて本を買ったことがあったのだが、その本はデータなどの数字が多くて、あまり読みやすいとはいえなかった。それに比べて本書はとても読みやすく、内容も細かすぎず、まさに「イギリスのEU離脱について知りたい」という人にぴったりの内容である。

【楽天ブックス】「英EU離脱の衝撃」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
アールデコの代表的なグラフィックデザイナーであるカッサンドルの展覧会を訪れる機会があり、その今見ても斬新と思えるデザインに惹かれ、グラフィックデザインの歴史を改めて知りたくなり本書を手に取った。

アールヌーボーやアールデコなど19世紀後半から現代までのグラフィックデザインの流れを、代表的な作品とともに紹介している。グラフィックデザインは芸術ではない。それゆえに、ただ単に美しいだけではなく、どうやって人々の注目を集めるか、試行錯誤してきた歴史が見えてくる。

ミュシャやカッサンドルなど、すでに知っているデザイナーの歴史的な位置を知ることができただけでなく、今まで知らなかったデザイナーの作品をたくさん見ることができた。経済と商業とともに発展してきたグラフィックデザインの流れに触れることで、ただ単に美しいものだけを作って満足していないか、自分自身のデザインのスタンスを改めて考え直すきっかけになった。

【楽天ブックス】「グラフィック・デザインの歴史」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
「プラダを着た悪魔」のモデルになったと言われる実在する女性編集者アナ・ウィンターを描いた作品。

映画の印象だと、部下を育てようという、厳しさの裏にある優しさのようなものを感じた。しかし、本書を読むと、ただひたすら能力のある人間だけで周囲を固めて、自らがのし上がっていくのに手段を選ばず必死な印象を受けた。どちらかというとこのような人間がどうして周囲から認められて世界的なファッション誌のトップにまで上りつめたのか不思議な気がしたが、それは実力主義のアメリカと礼儀を重んじる日本の文化の違いからくる違和感かもしれない。

ファッション誌というと、流行を記事にするという印書を持っていたが、本書で描かれているヴォーグなどの雑誌はむしろ「流行を作り出す」という感じである。アナによって認められたデザイナーたちは、それによって流行となり成功するのであるから、大きな権力となるのも納得できる話である。

本書でもっとも印象的だったのは、アナのファッションに対するこだわりの強さである。もちろん立場的にはアナは世界で最もファッションに精通している人間なので当たり前かもしれないが、それでもそのファッションに対する姿勢には驚かされる。人間、誰しも外見も大事だということはわかっていながらもなかなか毎日細かい身だしなみにこだわりつづけることはできないもの。本書を通じて改めて自分の普段の身だしなみも見つめ直してしまった。

普段接することのない世界で、情熱を注いで生きている人間の考え方は、視野を広げてくれる気がする。

【楽天ブックス】「Front Rowアナ・ウィンター ファッション界に君臨する女王の記録」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
同時通訳者が英語の勉強方法を語る。

著者自身、主に日本でその英語力を身につけたゆえに、その勉強方法はとても参考になる。著者が特に強調するのは「イメージ力」と「レスポンス力」である。そして、その能力の向上のための方法として、パラフレージング、シャドーイングを挙げており、その理由とその方法を解説している。

シャドーイングについてはすでに多くの本で触れられていて、実際やっているひとも多いのでその効果は疑う理由もないが、パラフレージングについては今まであまり取り組んでこなかった。本書を読んで改めてその効果を実感したのでぜひ自分の勉強のなかに取り入れたいと思った。

もっとも印象的だったのが、著者がお気に入りの映画「ビフォア・サンライズ」を見ていたときの話。そのなかで、著者は、主人公のセリーヌのフランス訛りの英語を素敵だと思ったと書いているのである。僕らはいつも、英語らしい英語を話そうとし、日本語っぽいカタカナ英語を恥ずかしいと思う傾向がある。しかし、見方を変えれば日本語訛りの英語を誇らしく思う、という方向もあるのではないかと思った。

全体的には、ページ増しのための内容のように思える部分や、まとまりや内容の流れに違和感を感じる部分もあった。そこらじゅうの英語教材に書いてあるような学習方法や学習教材、言葉の意味にページを割かずに、著者自身の考え方や勉強方法に絞ったらさらに濃い内容になったのではないだろうか。それでも、英語学習者にとっては参考になる内容が多く書かれていると感じた。

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オススメ度 ★★★☆☆ 3/5

「赤穂浪士」や「忠臣蔵」というタイトルは聞き慣れており、47人の武士が復讐を果たす物語は知っていながらも、ここまで語り継がれている物語に一度も触れたことがないことに疑問を感じて本書を手に取った。そもそもどうして、ただそれだけの単純な物語が上下巻含めて1200ページを超える物語になり得るのかという点も興味深かった。

実際には単純に復讐しようとしてすぐにそれを成し遂げるのではなく、発端となる出来事から実際にその復讐を成就するまで思っていた以上に長い月日が流れていることに驚いた。また、そんななかで、大将である内蔵助(くらのすけ)が行った根回しや、ともに行動する同志、単純なその場の怒りや苛立ちから立ち上がったものを含まぬように、言葉を変え、行動を変えて、本当に強い意思を持った者だけに絞っていく様子が印象的である。また、命を狙われる吉良上野介(きらこうずのすけ)の周囲の人間の思惑もおもしろく、どれも歴史上の事実だからこそある現実味にあふれている。

残念なのは、歴史上の事実だからこそなのか、登場人物が多く、またすでに100年近くも前に書かれた本ということで、理解しづらい部分も多かったということ。全体の内容を考えると、もう少し短くまとめられそうな気もする。

【楽天ブックス】「赤穂浪士」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
プロの写真家を目指す相羽慎吾(あいばしんご)は恋人の夏美とともに年老いた母と離婚してその息子の暮らす店を見つけ、そこを拠点に写真を撮ることになる。

序盤は、慎吾と夏美、そのお店のヤスばあちゃんと、息子の地蔵さん(笑顔からそう呼ばれる)によるほのぼのとした田舎生活が描かれている。ホタルやオイカワなど、慎吾と夏美が田舎町で遊ぶシーンは懐かしい子供時代を思い起こしてくれるだろう。

物語のなかでやや異質な存在なのが同じ村に住んでいる仏師雲月(うんげつ)の存在である。雲月(うんげつ)の彫る仏像は、まるで生きているかのような躍動感があるのだという。天才と呼ばれる雲月(うんげつ)であるが、妻と別れて村に移り住み、慎吾や夏美と出会うことになる。職業柄ぶっきらぼうな態度をとりながらも、少しずつ打ち解けていく様子が微笑ましい。

やがて、地蔵さんの過去が少しずつ明らかになっていく。時間をともにすることで2人に家族のような親しみを感じる慎吾と夏美はできるかぎり力になろうとするのである。

夏の匂いが漂ってくる物語。

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オススメ度 ★★★★☆ 4/5
7年前夫に先立たれたテツコは亡くなった夫の父ギフと今も暮らし続けている。微妙なバランスで保たれている2人の関係に、テツコに結婚を申し込んだ岩井さんが入り込んでいく。

不思議でなんか暖かい物語。夫の父親と2人で暮らし続けているテツコも不思議だが、その夫の父親、ギフ(「義父」がそのまま呼び名になったらしい)も、テツコに結婚を申し込んだ岩井さんも不思議な性格だけどとてもやさしくて、そんな3人のやりとりが、読者の心を和ませてくれるだろう。

何かを学べるわけではないが、今まで読んだ事がないような不思議な作品。人間関係のあり方に正解はなく、それぞれが心地よい関係がその人にとっての正解なんだと感じた。

【楽天ブックス】「昨夜のカレー、明日のパン」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
語り手「私」は、古い友人から指を失ったはずの天才ピアニストの長嶺修人(ながみねまさと)が復活したことを聞く。信じられない思いから、長嶺修人(ながみねまさと)が指を失うまでの出来事を振り返る。

物語は、音楽に青春をかけた3人の男子高校生、語り手である「私」、長嶺修人(ながみねまさと)と鹿内堅一郎(しかうちけんいちろう)を中心に進む。圧倒的に音楽的能力の高い長嶺修人(ながみねまさと)が2人に持論を語るなかで、音楽には僕ら一般の人間が理解できないような、音楽家だけがわかる世界があることが伝わって来る。シューマンを中心に作曲家のことを語るシーンが多く、音楽の知識が少ないことを残念に思う一方で、実際に作曲家やその音楽について知識を持っている人ならどの程度本書で長嶺修人(ながみねまさと)が語っていることに共感するのだろうかと興味を持った。

そして、ある春休みの夜、3人が目撃した殺人事件を機に物語は動き出すこととなる。

音楽という要素を多く含む点は新しく、いろんなクラシック音楽を聴いてみたいと思わせてくれたが、結末はありがちな展開に感じてしまった。

【楽天ブックス】「シューマンの指」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
高校を出たばかりの平野勇気(ひらのゆうき)は、母の半強制的な勧めによって、林業の盛んな山奥の神去村(かむさりむら)で働くこととなる。平野勇気(ひらのゆうき)が少しずつその村のしきたりや山の魅力に惹かれていく様子を描く。

林業に対して僕らが持っているイメージは、木を切って、植えて、とそのぐらいだろう。しかし実際には、木を運ぶことも必要だし、木が成長するように適度な間隔をあけることも必要だったりと、その一連の流れには、長年の知恵と英知が結集されているのである。本書は18歳の平野勇気(ひらのゆうき)の戸惑いとともに、そのような林業の奥深さを教えてくれる。

そのような考え抜かれた毎日の繰り返しの作業の一方で、神去村(かむさりむら)の人々の心神深さも印象的である。移り変わりの激しい山の天気や、気温の変化など、どうしようもないものに人生を左右されるからこそ、神に祈らずにはいられないのだろう。神去村(かむさりむら)の人々が時には理由もわからないまま何年も続けている行動を知ると、都会で生きているとわからない自然の偉大さが感じられる。

そんななかで山の魅力にとりつかれていく平野勇気(ひらのゆうき)だが、もちろん若い男なので色恋沙汰も描かれている。神去村(かむさりむら)の個性的な登場人物と合わせて楽しめるのではないだろうか。

続編も出ているようなので楽しみにしたい。

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オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
企業が破壊的イノベーションへ対抗するための方法を語る。

まず、持続的イノベーションと破壊的イノベーションという言葉を用い、ソニーやアップルが行ってきたイノベーションを説明し、相互依存型アーキテクチャとモジュール型アーキテクチャという言葉で、企業が作る商品を説明している。世の中の多くの企業の栄枯盛衰が、この考え方で説明できる点が面白いが、実際にはこのあたりの内容は「イノベーションのジレンマ」に含まれる部分なのだろう。

中盤以降は、そんな今までわかってても避け方のわからなかった、破壊的イノベーションを避けるために、持続的イノベーションの状態にある企業はどのような取り組みをすべきなのかを語っている。

とてもすべてが理解できたとは言い難いが、世の中の流れについて新たな視点をもたらしてくれる。

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オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
破壊的イノベーションの説明を用いて、教育がいつまでたっても進歩しない理由と、教育の今後の進化すべき方向性を語る。

印象的だったのは教育のモジュール化という考え方である。現在の教育はすべて、それ以前の学んだことが理解できていないと、その次の内容を理解できない仕組みになっており、それが問題だというのである。例えば、足し算、掛け算を理解していないとその先にある、分数の計算が理解できないために、すべての生徒が同じ順番で学んでいかなければならないために教育を非効率にしているのだという。つまり、教育のプログラムは相互依存性が強いのだ。

そんななか解決策として本書が主張しているのは、教育をモジュール化し、1人1人が独立したコースを自由に履修し、必要な時間をかけて理解するという方法である。それによって全員が同じ授業を受ける必要もなく、全員が同じ内容に同じだけ時間をかける必要もないというのである。確かに、以前であればそもそも「先生の数が足りなくて実現できない。」で終わっていしまったであろう話が、現在であればインターネットを使うことで実現できそうな気がする。

教育の発展だけでなく、経済的なイノベーションの考え方を用いて教育界を語っている点が面白い。

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オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
霧子(きりこ)がある日出会った死神のような男性、椿林太郎(つばきりんたろう)は教育に情熱を注ぐ男だった。やがて2人は結婚しともに生きることとなる。

白石一文は人生を描くのが非常にうまい。本作もそんな作品を期待して手に取った。実は霧子(きりこ)が出会った椿林太郎(つばきりんたろう)は人の人生の長さがわかるという。そんな彼が結婚相手として霧子を選んだ理由はなんだったのだろう。彼の能力が霧子との結婚にどのような結末をもたらすのかが、物語の焦点となる。

貶すほどの内容ではないが、期待に応えてくれるような印象的な内容ではなかった。人の残りの人生の長さが見えるというのは、最近読んだ百田尚輝の「フォルトゥナの瞳」と重なる部分が多いからなのかもしれない。

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オススメ度 ★★★★☆ 4/5
Tracyの妹のSarahは行方不明になり、自供と証拠をもとに同じ町に住む男が有罪となった。その裁判に疑問を持つTracyは一度は教師を志すも、真実を知るために刑事になる。20年後、妹の遺体の発見をきっかけに自ら集めた証拠を元にTracy再び裁判を起こして真実を暴きだそうとする。

前半の多くは、妹の失踪という出来事に苦しむTracyと、TracyとSarahの当時の様子が交互に展開していく。過去を描いたシーンでは、自由奔放に行動するSarahと、その面倒を見なければいけない姉のTracyと見えていたが、物語が進むにつれて、Sarahは町の誰からも好かれるような存在で、Sarahの失踪が町の空気さえも変えてしまったことがわかる。姉のTracyだけでなく、町に住む多くの人がその事件による苦い記憶を抱えて生きているのである。

現在を描くシーンでは、Sarahの発見をきっかけとして、裁判のやり直しへ動くTracyとその友人の弁護士Dan。20年間Sarahを殺害したとされて刑務所で過ごしていたEdmund Houseに会うなどして、当時偽の証拠を捏造したとされる警察のRoy Callowayらを追い詰めていくのだ。

衝動買いだったが、Tracyやその周囲の人々の心情描写が深く、予想以上に楽しむことができた。続編も出ているので読み続けてみたい。

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
インドから家庭教師としてイギリスに移住してきた女性が狙撃された。誰もが羨むような美しい女性だったのも関わらず、なぜ殺されなければならなかったのか。Maisieはその女性の兄の依頼によってその真実を調査する。

調査の過程でMaisieはその女性Ushaが誰からも好かれるような女性だったことを知る。誰からも好かれるような女性なら、殺人の動機は一体どんなものだろう。と思うところだが、本書では「誰もが羨むような眩しい女性は、いるだけで妬みを買う」という視点にも触れている。人間の醜い部分を見せてくれるようで興味深い。

また、事件の解決へと調査をすすめるなかで、Maisieの大きな決断をする。結婚を求めている交際相手Jamesとの関係に区切りをつけるため、またメンターであり亡くなったMauriceの教えに習って、Maisie1人で旅に出ることを決意するのである。事件の解決と同じぐらい、Maisieのこの決断が本書の焦点だと感じた。そして、そのために事務所を閉めて、Maisieと共に働いていたSandraとBillyもそれぞれの道を進むこととなるのである。

最終回のような一冊だが、まだ続編はあるようだ。

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
アートを作る上での心構えを著者の経験から語る。

タイトルにもあるようにアートを作りたければ「アイデアを盗め」と堂々と語っている。確かに僕自身もデザインに関わってきて思うことだが、上達の近道はいいデザインを真似ることである。「それは盗作ではないのか?」と思う人もいるだろう。そんな問いに本書はこんな風に答えてくれる。

すぐれたアーティストは何もないところからは何も生まれないことを知っている。すべてのアートは以前もあったものの上に作られるのだ。完全にオリジナルなものなど存在しない。

アートに限らず、スポーツでも音楽でも、いいものを真似ようとして努力する中で、それでもその人の体格や能力でどうしても真似できない部分に出会う。そこを自分なりに工夫した結果、オリジナルが生まれるのだという。

ちなみに良い盗み方と悪い盗み方をこう書いている。良い盗み方は多くのものを盗むこと、悪い盗み方は一つのものを盗むこと。納得がいく部分があるのではないだろうか。

また、著者は仕事以外に趣味を持つことを推奨している。一見関係ないように見えることでも、趣味を持つことは何かしらいい影響を与えてくれるのだと。たしかに、いい仕事をする人は何かしらの趣味にも打ち込んでいるような気がする。

何か新しいものを創り出すことを考えた時、人の真似をするのはどこか後ろめたいもの。でも世の中の創造的なものはみんなそういうステップを踏んで生み出されたのだと、堂々と語ってくれる点がなんとも清々しい。

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ディープワークをするための方法について語る。

本書ではディープワークを「あなたの認識能力を限界まで高める、注意散漫のない集中した状態でなされる職業上の活動。」と定義し、その時間を多く作り出すことこそ質の高い仕事に繋がるとしている。

きっと誰もが、仕事に「没頭」してしまったことがあるのではないだろうか。本書でいう「ディープワーク」とはまさにそんな仕事への「没頭」状態のことである。しかし、誰もが経験から知っている通り、残念ながらそんな「没頭」状態は頻繁に起きることではないし、起きたとしても長く続くものではない。どのような環境が整えばそのような状態になるのかを、本書はいろいろな例を交えて説明している。

多くの人がディープワークの真逆であるシャローワークに多くの時間を奪われているのは誰もが経験的に知っていることだろう。シャローワークの代表的な例はもちろんメールのチェックである。インターネットの普及により、大量のメールが毎日送信されるのが日常的なこととなり、毎日すべてのメールをチェックするだけでもかなりの時間がかかってしまうのである。

本書が語っている興味深いことの1つは、過去に行われた実験によると、シャローワークは世間一般に人々が思っているほど重要ではないということである。シャローワークを減らすことで、労働時間を減らしながらもディープワークの時間を増やして成果を出している企業の例は非常に興味深い。

全体的には、僕自身が普段仕事の質を上げるために行っていることや、経験から感じていることを裏付ける内容であった。

読者にとって仕事の質をあげるためのヒントになるのではないだろうか。

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オススメ度 ★★★☆☆ 3/5

エッセンシャル思考とは、仕事における断捨離やミニマリズムと言えるかもしれない。依頼される仕事をすべて引き受けるから、常に忙しく、集中すべき仕事に集中できず、自分の能力も上がらない。重要なのは自分にしかできない仕事を優先し、それ以外の依頼に対して「No」と言う能力を身につけることである。

本書で印象的だったのは90点ルールというもの。仕事を選ぶときでも、服を選ぶときでも、自分で点数をつけて90点に満たないものはすべて0点と扱うというものだ。「迷ったら捨てる」「迷ったら行かない」「迷ったら買わない」「迷ったら受けない」という感覚が正しいのだろう。

「エッセンシャル思考」とは仕事に忙殺され、朝から晩まで働きながらも満足のいく人生が送れていない多くの人にとって、そんな生活から抜け出す鍵となるのではないだろうか。本書は仕事について書かれているが、実際エッセンシャル思考が役に立つのは仕事に限った話ではない。友人も、趣味も、部屋に置く家具も、エッセンシャル思考で選び取ることで豊かな人生が開けるのではないだろうか。

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オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
さまざまなNGO活動に長年関わってきた著者がボランティアについて語る。

「ボランティア」=「善い行い」とすぐに結論づけてはいないだろうか。実際僕自身もいくつかのボランティアを経験するまで、ボランティア活動に参加する人が多ければ多いほど世の中はよくなると信じていた。しかし最近では、本当に世の中の役に立つことであれば、その「善い行い」に従事する人にお金が支払われる仕組みができるはずだし、それができてこそその「善い行い」は継続できる、と信じるようになった。それでは実際ボランティアの現状とは、そこに長年関わってきた人から見るとどのように見えるのだろうか。そんな思いが本書に導いた。

ボランティアのいろんな側面について触れられているが、印象的だったのは「生活できない人を増やす仕組み」という考え方である。

「図書館ボランティア」で図書館を運営するようになると、その分だけ司書の人が正規の職員として雇われなくなることが多い。

無料で何かに従事することは、そのことに有料で従事していた人の生活の手段を奪ってしまうというのである。その他にも、ボランティアによって依存心の強い人を生み出す可能性があることも覚えておくべきだろう。災害ボランティアなどでは、被災者が、あとは自分でなんとかできる程度まで手伝ったら、適度なタイミングで撤収することこそ必要なの。つまり、ボランティアをすることを目的にするのではなく、本当に相手の未来まで考えて行動すべきなのである。

また、末尾にはいくつかのボランティア活動が「取り組みやすい活動ガイド」としてまとめられているので、今後の参考にしたい。これからいろんな活動に関わりたいと考えるなかで、役立つ視点を提供してくれた一冊。

【楽天ブックス】「幸せを届けるボランティア 不幸を招くボランティア」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
1963年フランス、「アルジェリアは永遠にフランス」をもっtーに活動する秘密軍組織OASは大統領シャルル・ド・ゴールの暗殺を企てる。すでに多くの幹部が警察に目をつけられている中、暗殺を実現するための唯一の方法が、外国人の殺し屋を雇うことだった。その殺し屋のコードネームこそジャッカルなのである。

空港の名前にもなっているシャルル・ド・ゴールだが、実際にはその在任中にどのような政策を行ったのかをほとんど知らなかった。また、アルジェリアがもともとはフランス領だったことは漠然とした知識としては持っていながらも、どのように独立したかをこれまで気にかけたこともなかった。

本書は暗殺を依頼されたジャッカルが暗殺のために入念な準備をする様子と、その暗殺を防ぐ任務を課せられたClaude Labelが、わずかな手がかりを元にすこじずつジャッカルを追い詰めていく様子が描かれている。いくつものパスポートを用意し、いくつもの変装を用意して厳重に警戒されているであろうド・ゴールに近づくための準備をするジャッカルも、もた、外見的な特徴しかわからないじょうたいで、海外の警察のつながりをもとに暗殺者を絞り込んでいくLabelも、まるで本当に起こった真実を描写しているようで、とても1971年に書かれた小説とは思えない。

概要として語ってしまうと、「暗殺者とそれを捕まえる刑事」となってしまうが、その描写の緻密さは一読の価値ありである。

アルジェリア戦争
1954年から1962年にかけて行われたフランスの支配に対するアルジェリアの独立戦争。(Wikipedia「アルジェリア戦争」

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