「中澤佑二 不屈」

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ドイツワールドカップ、南アフリカワールドカップなど、日本代表だけでなく、横浜マリノスでの出来事など、そのサッカー人生を通じて、日本打表DF中澤佑二の知られざる一面を描く。
僕が彼について知っているのは、テスト生からヴェルディのレギュラーをつかんだということと、ドイツワールドカップ後に代表引退を決意したにもかかわらずバスケット界のパイオニアである田伏勇太と出会って代表復帰をきめたことぐらいだろう。本書はその認識を補いながらも、そのストイックで孤独な生き様を存分に見せてくれる。
本書は3つの章に別れていて、2,3章はそれぞれドイツ、南アフリカワールドカップを中心に描かれている。個人的には1章の「プロへの挑戦」が印象的である。特に高校時代のひとり「プロになる」というモチベーションのもとでサッカーに接するうちに、周囲から孤立していき、それでも目的のために信念を曲げない姿にはなんか共感できるものがある。
文中で中澤が影響を受けたとして引用されている言葉にはどれも重みを感じる。

多くの人が、僕にも「お前には無理だよ」と言った。彼らは、君に成功してほしくないんだ。なぜなら、彼らは成功できなかったから。途中で諦めてしまったから。だから、君にもその夢を諦めて欲しいんだよ。不幸な人は不幸な人を友達にしたいんだよ。
人生に成功は約束されていない。でも成長は約束されている。

本書でもドイツワールドカップを大きな衝撃と語っている。中田英寿の「鼓動」でもそうだし、数多くの日本のワールドカップを描いた書籍でも同様に選手同士の内部崩壊が招いた悲劇と語られているドイツワールドカップは、本書でも中澤だけでなく、宮本恒靖の目線からも語られており、興味深いものとなっている。
そして最後は記憶に新しい南アフリカワールドカップ。その内容からは決してそれが外から観ているほど輝かしいものではなかったことが伝わってくるだろう。チーム崩壊寸前の状態にありながら、4年前のドイツワールドカップの経験者たちがその失敗を糧に、崖っぷちの状態からチームを結束させた結果だとわかる。

言いたいことを言うのと、チームのためを思って言うのではまったく意味合いが異なる。個性は一定の規律のある組織の中にあって初めて力を発揮するものであって、ルールを無視すれば、単なる我が儘と取られても仕方がない。

それでも最終的にカメルーン戦のゴールで波に乗って、デンマーク戦ですばらしい試合をしたあのチームのなかにいて、あのチームとしての一体感を味わえた中澤がうらやましくてたまらない。

チームの一体感というものを初めて、強烈に感じた。一人のゴールをチームのみんなが祝福している。心の底から突き上げていくような喜びをだれもが共有している。四年前のドイツでは決して訪れなかった瞬間だった。このチームはいける。この勢いでいける。そう確信した。
仲間たちとの共鳴。すべてはこのためにやってきたのだと、心の底から思った。

中澤のサッカー選手としての成功を語るときに、「彼は努力だけで上り詰めた」という人が多いのかもしれないが、本書を読めばそうは思えない。人生の要所要所で彼は運命的な出会いによって救われている。見習うべきはそんな偶然が近づいてきたときに、それを掴み取る努力をいつの日も怠らなかったことだろう。
「日本代表」とか「ワールドカップ」とかそんな壮大なジャパニーズドリームだけでなく、何かを達成する上ではそれがどんな目標であれそんな意識は大事なんだと思えた。
余談だが、本書で中澤は自身のベストげーむとして、ドイツワールドカップ前のドイツ戦をあげている。中田英寿も「鼓動」のなかで、ドイツ戦での柳沢とのプレーが最高のプレーと語っている点が印象に残った。どうやらあの試合はサッカーファンにとっては見逃してはいけない試合だったらしい。
【楽天ブックス】「中澤佑二 不屈」

「やめないよ」三浦知良

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
日本サッカーの大きな進歩の中で中心的位置にいた一人と言える三浦知良。その視点から今の日本のサッカーやスポーツ界を語る
正直、僕自身も彼に対して「もう、いいんじゃないの?」と思っている一人である。オフトジャパンのころはその勝負強さに何度も期待にこたえてもらったりしたけど、日本代表からはずされてからはプレーを見る機会も少なく、ときどき目にしては、「まだやってるのか」とか「サッカーだけが人生じゃないだろうに」とか思っているのである。
世の中に同じように思っている人は決して少なくないだろう。本書のタイトル「やめないよ」がそのままこうした疑問を抱いている人に対する答えのように響くから興味をもったのかもしれない。そして、実際読んでみてそんな彼に対する考え方も少しは変わることだろう。
読んでみると、結果を重視するフォワードで日本代表にいたにもかかわらず、その生き方からは、彼が「結果」ではなく「過程」を楽しむことができる人間だということがひしひしと伝わってくる。
本書のなかでの彼の思いは、2006年から2010年にまでわたっているため、ドイツワールドカップやその後の中田の引退から、南アフリカワールドカップにまで及ぶ。そして、その内容の多くはもちろん、ブラジルと日本のサッカーの違いや、横浜FCの残留争いなどのサッカー中心だが、、必ずしもそこにとどまらず、斉藤祐樹の甲子園での熱闘や、イチローの大リーグ記録にも触れている。
やはり、信念を持って生きている人の言葉には、何か伝わってくるものがある。

ふつう、会社員であれば、40歳を過ぎるとそれなりの地位に就いているのかもしれない。けれども、僕は一選手だから、あるときは監督からの指示に従い、あるときは18歳の選手と同じジャージを着て、同じメシを食堂で食べる。そんな環境にサッカー選手として浸っていられることが本当に幸せで、楽しい。自分はサッカー選手なんだ、と思える瞬間が、楽しくてしかたがない。

【楽天ブックス】「やめないよ」

「インパラの朝 ユーラシア・アフリカ大陸684日」中村安希

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
著者中村安希(なかむらあき)が2年かけて行った、ユーラシア大陸とアフリカ大陸の一人旅を描く。
女性の旅行記は今回が初挑戦である。旅行記というとどうしても、「自分は勇敢な挑戦者」的な自己陶酔や、「無謀」を「勇気」と勘違いしたような内容のものが少なくないのだが、(単純に僕が読んできたものがそうだっただけかもしれないが)、本書は、読み始めてすぐにその客観的表現と豊富で的確な表現力、そして綺麗な文体に好感を抱いた。旅に描写からは、著者の鋭い観察力と知性を感じる。
多くを旅行記を同様、訪れる国々で受けた異文化による衝撃や、出会った予想外の親切などのほか、その国の問題やそれを生じさせている原因やそこで起こっている矛盾、そういったものを文章を通じてしっかり読者に伝えてくるその視点と表現力に感心しっぱなしだった。
著者の心に響いたであろう言葉の一つ一つが、読者である僕の心も揺さぶった。例えば、インドのマザーズハウスで出会ったボランティアの嘆き。

僕は風邪で一日だけボランティアの活動を休んだけど、僕がいなければ他の誰かが、代わりに仕事をするだけだ。僕がいてもいなくてもあまり関係ない気がしている・・・
私は、毎日疲れて眠りたいのよ。『今日も自分は頑張った』って、そういう疲れを体に感じて夜はベッドに入りたい。ただそれだけよ。

旅の途中で出会った人たちとも、単純に表面的にいい関係を築いて「出会ってよかった」と旅を美化するのではなく、ときには「だからアフリカはいつまで経っても貧困から抜け出せないのだ」と批判たりと、奮闘する様子からは、今まで見えなかったいろんなものが見えてくる。

地域にしっかり足を下ろして何かにじっくり取り組むことなど、そもそも求められてはいない。なぜなら一番大切なのは、派遣された隊員数と、援助する予算の額を国連で競うことだから。

正直、読み終えて、何がこんなに僕のなかでヒットしたのだろう、と考えてしまった。僕自身と物事を見る視点が似ているというだけではないだろう。
旅行記を手にとる人というのは、今回の僕のように、きっとその人自身がそういう体験をしたいからなのだろう。そして、にもかかわらず時間と費用など、そのために犠牲にしなければいけないものと、その先で得られるものの不確実性を考えて踏み切れないでいるのだろう。踏み切れないながらも、その体験を間接的にでも味わいたいのだ。
そしてきっと、そんな人たちの何人かは、すでにその旅の果ての失望みたいなものを予期しているのかもしれない。海外でボランティアに従事してみたい、とかそこに住んでいる人と同じような生活をして文化を感じてみたい、という先にある「旅行で訪れただけでは結局表面的にしかわからない」というどうにもならないことに対する失望である。
本書のほかの旅行記をと異なっている点はきっとそこなのだ。よくある旅行記のように「辛いこともあったけど行ってよかった」というように著者が費やした時間を「間違いなくそれだけの価値のあったもの」と誇らしげに自慢するのではなく、むしろ「辛いこともいいこともあったけど、結局この旅は求めていたものに答えてくれたのだろうか?」なのである。「一読の価値あり」と思わせるには充分の内容だった。

彼らの声や行いが新聞の記事になることはない。テレビの画面に流れることも、世界中の誰かに向けて発信されることもない。すべては記憶に収められ、記録としては残らない。私は彼らに電話をかけて「ありがとう」とさえ伝えられない。

【楽天ブックス】「インパラの朝 ユーラシア・アフリカ大陸684日」

「サッカー日本代表システム進化論」西部謙司

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
日本代表の進化の過程をその戦術に焦点をあて、当時の中心選手やコーチなどの意見を交えながら描く。
期間でいうと1984年から南アフリカワールドカップ直前の2010年という30年弱である。僕にとっての日本代表はオフトジャパンから始まっているので、それ以前の日本代表は想像するしかないが、それでも本書で描かれている内容から、当時の日本代表のレベルや選手層の薄さが見て取れる。
内容がオフトジャパン以降に及ぶと、どの試合も選手も記憶にあるものばかりで、懐かしさとともに涙腺が緩んでしまう。ブラウン管を通して観た試合の様子やその結果だけでは伝わってこないような内容にも触れているので、すでに忘れ去られようとしている重要な一戦を(いまさらだが)さらに理解するのに役立つだろう。
そしていままで、ただ「日本代表」と単一の存在として観ていたもの(もちろんサッカーファンの多くはその戦術の違いはおおよそ理解しているだろうが)が、それぞれの監督の持つ個性や意図を本書を通じて理解することでより個性を持っていた。見えてくるとともに、サッカーを見る目も養われることだろう。

オフトは”言葉”を持っていた。コンパクト、スモールフィールド、トライアングル、アイコンタクト・・・・・いわれてみれば当たり前のことばかりで、選手たちも知らなかったわけではない。でも知ってはいても明確な言葉はなかった。
ファルカンのサッカーは、いま思えば、とてもいいサッカーだった。ただ、当時の選手のレベルには全く合っていなかった(柱谷)
ゾーンプレスはパスをつないでくる相手、プレッシングをかけてくる相手に対しては効果があった。だが、ひたすらロングボールを蹴ってくるような相手、カウンター狙いに徹した相手に対して、威力を発揮しきれなかった。
フラットスリーはやられそうで、意外とやられない。ただ、一瞬でも気を抜いたらダメ
どこかで、誰かがまとめなければならない。迷ったときに誰を見るのか、何を拠り所にするのか、そこがジーコ監督のチームでは徹底されていなかったのではないだろうか。
ピッチ上では、さまざまな問題が起こる。予め解答を用意するのではなく、解決能力をのものを上げていくのがオシム監督のやり方だった。

「ゾーンプレス」や「フラットスリー」という言葉を聞いただけでサッカーファンには過去の日本代表の試合が頭のなかに蘇るのかもしれない。日本代表の戦術の軌跡を通じて、ここ20年の間にどれほど日本のサッカーが人も戦術も進化したのかわかるだろう。そして、日本に限らずサッカーが戦術はいまなお進化しつづけているのだ。
サッカーファンには間違いなくオススメの一冊。この一冊で間違いなくさらに一枚も二枚も上手なサッカーにうるさい人になれるだろう。
【楽天ブックス】「サッカー日本代表システム進化論」

「怖い絵」中島京子

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
タイトルのとおり、西洋絵画を「怖い絵」という視点で見つめなおす。「怖い絵」と言っても「怖い」の種類にはいくつかあり、単純に絵自体がグロテスクだったり残虐なシーンを描いたものを語ることもあれば、その時代の背景を知って初めてその絵が怖くなる場合や、その絵の描かれた前後に起こったことを含めて恐ろしかったりと、読者を飽きさせない。
確かに僕らはどうしても今の時代の常識をもって絵を鑑賞してしまう。たとえばドガはバレリーナを数多く描いたことで有名だが、現代のバレリーナと当時のバレリーナの持つ地位はまったく異なるもので、それを理解することで初めてこの絵の持つ意味が理解できる、と著者は書いている。
そうやって著者は多くの絵画のその背景に潜む意味を解説していくのだが、好感がもてるのは、いずれも断定せずに「?をあらわしているのではないだろうか」「?はなぜだろう」という表現を使用している点だろう。結局その絵が何を示そうとして描かれたのかは画家本人にしかわからない。鑑賞者はあくまでもそれを推測することで楽しむ、それが絵画の楽しみ方なのだろう。
本書を読んでまた少し絵画の見かたが変わった気がする。またいくつかの歴史的事実や神話のエピソードを知るきっかけになった。

ティントレット
師匠のティツィアーノとともにルネサンス期のヴェネツィア派を代表する画家。ティツィアーノの色彩とミケランジェロの形体を結びつけ、情熱的な宗教画を描いた。(Wikipedia「ティントレット」
サトゥルヌス
ローマ神話に登場する農耕神。英語ではサターン。ギリシア神話のクロノスと同一視され、土星の守護神ともされる。(Wikipedia「サートゥルヌス」
アルテミジア・ジェンティレスキ
17世紀イタリア、カラヴァッジオ派の女性画家。(Wikipedia「アルテミジア・ジェンティレスキ」
ガニュメデス
ギリシア神話の登場人物である。イーリオス(トロイア)の王子で、美しい少年だったとされる。オリュンポス十二神に不死の酒ネクタルを給仕するとも、ゼウスの杯を奉げ持つともいわれる。(Wikipedia「ガニュメーデース」
メデゥース号
フランス海軍のパラス級40門帆走フリゲート。1810年進水、就役。ナポレオン戦争後期、1809年から1811年にかけてのモーリシャス侵攻に参加し、またカリブ海でも活動した。メデュース号、メデューサ号などと表記されることもある。(Wikipedia「メデューズ (帆走フリゲート)」

【楽天ブックス】「怖い絵」

「モウリーニョの流儀 勝利をもたらす知将の哲学と戦略」片野道郎

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
今やサッカー界でもっとも有名な人間の一人と言っていいだろう。ポルトガルのポルトとイングランドのチェルシーで国内タイトルを獲得しただけでなく、チャンピオンズリーグでもポルトでは優勝、チェルシーでも常に優勝を狙えるチームを作り上げた監督。ジョゼ・モウリーニョ。
本書は、すでに監督としての手腕を認められ国内タイトルだけでなくヨーロッパナンバー1を勝ち取ることを目標として、イタリアのインテルの監督に就任したモウリーニョが、1年目のシーズンでスクデット(イタリア国内タイトルをタイトルの通称)を獲得するまでを描いている。
モウリーニョはもちろんサッカーの監督だが、本書の内容はフォーメーションなどの戦術よりもむしろ、どちらかといえば保守的で外から入ってくる文化を嫌うイタリアサッカー界のなかでの、モウリーニョの適応の過程を示してくれる。僕自身の持っている印象では、彼の考え方は、常に筋が通っていて、すべてが物事の目的とその手段を冷静に分析した結果の決断というような印象があるが、就任当初の記述からは、新しい環境と文化ゆえに肩に力が入っている様子が伝わってくる。
そんな中でも印象的なのは、シーズン途中で、スクデットを獲得するためにこだわっていた3トップから2トップにフォーメーションを変えたところだろうか。どんな環境でも信念を貫き通す強い心とともに、環境に適応してスタイルを変える重要性。その2つのバランスの重要性が見て取れる。
個人的には本書のなかでモウリーニョの考え方にはかなり共感できる部分があり、また、もともと持っている考えを改めて考えるきっかけにもなったように思う。なにもサッカーファンには限らず、仕事やスポーツなどのリーダー的立場にいる人や、常に発展、進歩を求めて生きている人にとっては、なにか刺激を受ける要素が見出せるのではないだろうか。
本書は1年目のスクデットを獲得した時点で終了しているが、サッカーファンならご存知のとおり、モウリーニョはその翌年にはインテルでチャンピオンズリーグを制覇し、見事任務を果たしたこととなる。同じ著者がその過程までも書いてくれるならぜひまた読みたいところだ。
【楽天ブックス】「モウリーニョの流儀 勝利をもたらす知将の哲学と戦略」

「アメリカの子供はどう英語を覚えるか」シグリッド・H・塩谷

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
そもそも英語圏のこどもはどのようにして英語を覚えて行くのだろう。僕らが英語の勉強を始めるのは中学生から(今は小学生かららしいが)なので、すでに論理的思考ができており、その利点を生かした覚え方をする。一方でネイティブスピーカーはそもそも第一言語が英語であるため、経験をもってしかその言葉を学ぶことができない。
この2つの英語の習得方法は大きく異なるが、その違いを知ることは決して無駄ではないだろう、本書はそんな視点に経って、著者が娘で、日本人とアメリカ人のハーフであるジーナの言葉の習得過程をと、それを観察する過程できづいたことなどをまとめている。
僕らの日本人が勉強しながらよく間違えがちなことのうちいくつかは、アメリカのこどもにとっても間違えやすく、また一方で、アメリカの子供にとってさえも間違えるわけないものとあるてんが面白い。
例えばアメリカのこどもはよく「a apple」のように本来「an」となるべきところを「a」といったりするらしいが、規則を最初に学んだ日本人はめったにこういう間違えをすることがない。
そんな興味深い話がいくつも語られている。なんか勉強に役立つというよりか、英語学習者間の面白いトピックとしてのほうが役立つかもしれない。
【楽天ブックス】「アメリカの子供はどう英語を覚えるか」

「日本人が誤解する英語」マーク・ピーターセン

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
日本人が間違えやすいポイントに絞って英語を解説している。
日本の英語教育の家庭ではその意味的な違いにまで踏み込んで勉強することのなかった部分を、わかりやすい例文を用いて解説している。
たとえば「will」と「be going to」の意味的な違いなどは、何度かきいたことがあるのかもしれないが、あまり意識して使っていなかったことに気づいた。著者が例文をもって、そのニュアンスの違いを示すのを見て初めて、その違いをしっかりと意識して使い分けなければならないということを知った。
たとえば、上司と部下の会話を想定して、

We have to inform the Chicago office be the day after tomorrow.
「明日の朝までにシカゴオフィスに連絡しなければならない」」

という問いに対して「will」と「be going to」の意味的な違いを考えると、

I’m going to do that tomorrow morning.「明日の朝やるつもりでした(言われなくてもわかっているよ)」
I will do that tomorrow morning.「わかりました、明日の朝やります」

となるのである。こうしてその英文が使用される状況を想像して考えると、その違いが日常会話においては無視できないものであることがわかるだろう。同様に、過去形と過去完了のニュアンスの違いなども解説している。
また、個人的に印象的だったのは「make」「have」「get」「let」という4つの使役動詞の使い分けである。日本語にするといずれも「?させる」という意味になるため混乱しやすいのだが、いずれも微妙にニュアンスが違うということがよくわかるだろう。
後半では英文において日本人が「therefore」「so」「because」を多用する傾向があることについて書いていて、その使い方を解説している。実際僕もどうしても日記を英語で書くと「because」を使いたくなってしまうので、この部分の考え方はしっかりと身につけたいものだ。
同様に「したがって」と日本語で訳される、「Consequently」「Accordingly」「Therefore」もしっかりと使い分けをしなければいけないことがわかるだろう。
そして、終盤は制限用法と非制限用法の意味の違いである。話し言葉ではあまり意識する必要がないが、英語でしっかりとした文章を書く技術を身につけるためにはおさえておきたいポイントである。
【楽天ブックス】「日本人が誤解する英語」

「誰も知らない「名画の見方」」高階秀爾

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
「絵の見方」と称して、さまざまな西洋絵画を時代背景や画家の気持ちの変化などとともに解説している。
どうやら世の中には、「絵画の見方がわからない」と言って、それを避けてしまう人がいるようだ。考えて見れば僕の友人にもそんなようなことを言っていた人がいる。個人的には、絵画などというのは、何度も見ていれば、それなりにその画家の個性が見えてくるものだと思うし、その画家の絵のタッチや絵のテーマに興味を持てば、自然と宗教や神話や歴史にも興味が広がっていき理解が深まるもの。絵を見る前に「絵の見方」を学ばなければならないなんてものでは決してないと思っている。
本書の「はじめに」で著者が言っているものまさに僕の考えと一致している。著者のそんなスタンスがなによりも気に入った。
さて、本書はそうやって今まで気にしてなかった絵画の見えなかった部分を教えてくれる。たとえばモナリザについての興味深い説明はこうである。

モナ・リザが座っているのは、腰壁に囲まれたテラスである。つまり室内から外部へと続いていく空間のはざまであると同時に、自然と人工物ののはざまでもある。つぎに時間はどうだろう。どうやら夕暮れ時の光のなかのようだ。つまり、昼から夜へと変化していく時間のはざまだ。さらに季節は秋だ。これも暑い夏から寒い冬への変わり目であり、やはり、はざまといえる。

あれほど見慣れているモナ・リザにもこんな見方があったということに驚かされる。
さて、本書はまた、僕自身のお気に入りの画家について書かれている部分が思いのほか多かったのもうれしい。たとえば、ジョン・エヴァレット・ミレイ、ジャン=フランソワ・ミレー、ギュスターヴ・モロー、ヒエロニムス・ボス、ビーテル・ブリューゲルなどがそれである。
絵画好きだけでなく、興味はあるけどいまいちわからない、などと思っている人にもオススメである。

ファン・エイク
兄のフーベルト(ヒューベルト)・ファン・エイクとともに油彩技法の大成者として知られる。フィリップ2世(豪胆公)の宮廷で活躍した。フーベルトの事績は不詳で、確実な作品もないが、現存のヤンの作例は兄との合作も含まれている。(Wikipedia「ヤン・ファン・エイク」

【楽天ブックス】「誰も知らない「名画の見方」」

「アップル、グーグル、マイクロソフト クラウド、携帯端末戦争のゆくえ」岡嶋裕史

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
「クラウド」とはなんなのか。人々が漠然と受け入れているその言葉の意味とその有効性を、アップル、グーグル、マイクロソフトというIT界の巨人たちの動向をふまえて説明していく。
本書によると「クラウド」という言葉のブームは2006年に続いて2度目なのだそうだ。しかし一体、世の中のどれほどの人が「クラウド」という言葉の意味を言葉にすることができるのだろうか。実際僕も「Saas」と「クラウド」を同じものとして今まで受け止めてきた。本書ではまずはそんな言葉の意味から説明していく。
決してわかりやすいとは言いがたく、どこか教科書的になってしまう1章、2章は正直やや退屈だったが、「クラウド」「Saas」「Paas」「Iaas」という鍵となる言葉を理解するうえではおおいに役立つだろう。そして各社がどのような戦略をとっているのか、という視点にたってクラウド解説している後半は世の中に対する新しい見方を提供してくれる。
現在3社がそれぞれクラウドに向かって進んでいるが、それぞれの歩んできた道は異なる。印象的だったのが、マイクロソフトのとってきた戦略とグーグルのとってきた戦略が真逆だという考え方である。

マイクロソフトは既存のパソコンに多くの資産を持ち、クラウドを取り込もうとしているが、グーグルはクラウドに莫大な資産を抱え、次は人とクラウドの接点たるパソコンに入り込もうとしている。

そんなふうに中ほどまではマイクロソフトとグーグルの比較に多くのページが割かれるが、その後は、アップルやアマゾンの手法にも触れられる。この手の多くの著者同様、本書もアップルびいきが感じられるが、世の中の状況を見ると、今のアップルの手法を賞賛せずにはいられないのだろう。アップルの賢さ、(したたかさ?)ばかりが印象に残ってしまった。
スマートフォンや電子書籍など、今後のIT界の動向を見つめるのを少し楽しくさせてくれる一冊となるだろう。
【楽天ブックス】「アップル、グーグル、マイクロソフト クラウド、携帯端末戦争のゆくえ」

「「英語公用語」は何が問題か」鳥飼玖美子

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
楽天やユニクロが社内の公用語を英語にするなかで、いったいそれにどれほどの意味があるのか、そもそも僕ら日本人はなんのために英語を勉強し、その問題点はどこにあるのか、そんな視点からプロの同時通訳者の著者が語る。
最近の迫りくる英語熱に「待った」をかけるような内容で、実際に多くの人が感じているであろうことを代弁している。何も考えずに「世の中の流れだから」と英語を勉強している人には耳の痛い内容も多々含まれているだろう。

三木谷氏は「英語はストレートに表現するが、日本語だとあいまいになる」から、「仕事の効率が上がる」と、よくわからない私見を開陳したようである(英語はストレートに表現するだけの言語ではなく、婉曲な表現もふんだんにあることは、言語コミュニケーションを少しでも勉強すれば分かる)。

著者が語っているのは、グローバル化=英語ではなく、グローバル化というのは文化や言語の多様性を最大限に利用してこそ成り立つもので、英語というひとつの言語を押し付ければ成り立つものではないということ。
そして英語をネイティブ波に使いこなせるようになるのは不可能であり、英語をなんのために勉強するのか、という目的を常に意識して勉強する必要があるということ、などである。
そんな中、なによりおおいに著者に同意したいのは次のこと。

大事なのは英語ができるかどうかの前に、話す内容があるかどうかである。

僕も英語を勉強していてたくさんの人と英語で会話を重ねるが、ときどきどんな質問をしても、熱心に語ってくれない人がいる。「この人にはどんな話題をふればいいのだろう」「そもそもこの人に話したいことなんてあるのだろうか」と。
そういう人は、自分がなにをどのように考え、なにを求めているか、そういうことをもう一度考え直す必要があるのだろう。そういう人が話せるか話せないかというのはもはや英語以前の、人間としての問題なのである。
また、著者は日本の英語教育や、多くの企業がその英語力を計る尺度として利用しているTOEICの信用性についても語っている。英語を学んでいる人、学ぼうとしている人はぜひ目を通すべき内容だろう。

外国語青年招致事業
地方公共団体が総務省、外務省、文部科学省及び財団法人自治体国際化協会 (CLAIR)の協力の下に実施する事業。英語の略称である『JETプログラム(ジェット・プログラム)』という名称も頻繁に用いられ、事業参加者は総じてJETと呼ばれることになる。(Wikipedia「外国語青年招致事業」
参考サイト
JETプログラム公式ホームページ

【楽天ブックス】「「英語公用語」は何が問題か」

「北海道警察の冷たい夏」曽我部司

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
2002年7月。渡辺司(わたなべつかさ)は覚せい剤をもって札幌北警察署へ向かった。それは北海道警察の冷たい夏の始まりだった。
映画化された佐々木譲の小説「笑う警官」とその続編「警視庁から来た男」「警官の紋章」の中で、常に過去の出来事として描かれている北海道警察の汚職事件。そのリアルな描写が、実は現実に起こっていた事件をベースに描かれていることを知ったのは恥ずかしながら最近のことである。本書はその現実にあった北海道警察の不祥事を克明にまとめたものである。
一人の男の出頭によって、稲葉(いなば)という一人の幹部警察官が、覚せい剤や拳銃の応手実績を挙げるために、暴力団やロシアンマフィアたちと共謀して事件を捏造していたことが明らかになり、さらに北海道警察がその事実を隠蔽しようとした、と筆者は本書で主張している。
興味深いのは、稲葉(いなば)が決してただ私欲に目がくらんで自らの立場を利用した犯罪者ではなく、彼は、その人を思う気持ちゆえに、自らのために危険を冒してくれた捜査協力者を守り、多くの人と同じように実績を挙げて認めてもらうために犯罪に走ったということだろう。
著者の目線ゆえにだろうか、稲葉(いなば)という人間がむしろ北海道警察という大きな組織によって仕立てられて被害者に見えて来る。そして、悲しいことに、その隠蔽体質は事件後も一切改善されていないということだ。むしろ、それは日韓ワールドカップや朝鮮拉致被害者など、同じ時期に起きたわかりやすい出来事のなかで、しっかりと目を向けるべきものに目を向けて、批判すべきものを批判することをしなかったメディアや国民にも責任があるのかもしれない。
また、本書を読みながらこんなことを考えてしまった。世の中には多くの警察小説やドラマが溢れていて、その多くに日常的に接していながら、一体僕自身がどれだけそれらを現実のものとして受け入れているのだろう…、と。そんな架空の物語の中で、覚せい剤や拳銃の密売、警察の腐敗などを描いているものにも多々出会ってきたが、実際その多くを、どこか物語の演出として過剰に描いたもののように受け入れてきた自分に気づかされたのである。しかし、本書を読むと、現実の世界でも警察は、暴力団の中に暴力団を装って捜査員を潜入させたり、Sと呼ばれる捜査協力者を利用して情報を集めたりするのである。そして、社会の秩序を守るべき警察が大規模な犯罪に手を染めたりする。
先日、ロシアの秘密警察の話を読んで、こんな国に生まれなくて本当に良かった、と思ったが、本書を読むと、日本も根本的にはあまり変わらなく、大きくなりすぎた組織が自らの失態を隠蔽する土壌は日本という国にも確かに存在するのである。
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「日本サッカー現場検証 あの0トップを読み解く」杉山茂樹

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ワールドカップの日本の闘いぶりを著者の視点から解説している。
実は本書を買って読み進めるまで気づかなかったのだが、この著者は、僕に「サッカーの布陣を考えるとこうもサッカーが面白くなるのか」と思わせた本「4-2-3-1」の著者はと同じである。本書でもワールドカップの日本の布陣とその結果をその独特の視点で語っていて、サッカーファンにははずせない作品となっている。
著者はカメルーン戦で突如日本が採用した本田の1トップは(著者はそれは「0トップ」と呼んでいるが)、まさに著者がずっと推奨してきたものだと語り、その利点と、過去にその布陣が見られたチームや試合をあわせて解説している。
そしてワールドカップでの日本の4試合をその布陣と関連して原因と結果をわかりやすく解説している。例えば、なぜあの瞬間カメルーンのディフェンスは本田を見失ったのか、そして、本田のトラップがやや浮いてしまったからこそキーパーはコースを読みにくかったはず、など、長年サッカーをやっている僕でさえも見てないような細かい部分を解説しており、もう一度そのシーンをインターネットを探さずにはいられないだろう。
そして、著者は、日本の監督軽視の考え方にも警鐘を鳴らしている。
布陣の試合への影響を見る目は、テレビでサッカーをみていても養えない、会場をいってスタンドから常に全体をみてこそ養われるという。そして、だからこそ、日本のサッカーに身をおいて、スペインやイングランドの最先端のサッカーをスタジアムで観戦することが物理的に不可能な日本人監督が最先端の戦術を理解できるはずがない、と語っている。

僕がこれまでの日本代表のどこに問題を感じていたかと言えば、選手ではない。監督になる。「監督負け」を繰り返してきた思いの方が断然勝る。

また、日本が最先端の布陣に馴染めない一つの理由として、Jリーグの各チームが新しい布陣を取り入れていないためにそういう人材が育たないということのほかに、古くから伝わる日本のサイドバックの職人気質にあるという。
そこで日本の選手ができないサイドバックの動きとしてあげられているオランダのファンブロンクホルストの動きでなのだが、図だけではなかなかイメージしずらく、ぜひCD付属本ならぬDVD付属本にしてもらえないかとさえ思ってしまう。
嬉しいのが、そんな辛口かつ客観的視点に立って日本のサッカーを観ている著者も、デンマーク戦を「日本サッカー史上最高のエンターテイメント」と絶賛している点だろう。とはいえデンマーク戦以外はほとんどダメだしばかりである。

PK戦はともかく、パラグアイ対日本は、エンターテイメントとしてはまったく成立してなかった。噛み合いの悪いサッカーを意図的にした日本の責任は重い。ワールドカップは日本人だけのものではない。ワールドカップは世界最大のエンターテイメントだ。

また、終盤では優勝したスペインのサッカーについても語っている。スペインですら理想の形ができているとは言えずに、EUROで優勝したときのスペインのほうが優れていたと語る。
この著者の作品を読むといつも、テレビで観戦で比較的満足している自分が恥ずかしくなってくる。なんにせよ、ワールドカップの日本の試合を見たサッカーファンには間違いなく楽しめるに違いない。
【楽天ブックス】「日本サッカー現場検証 あの0トップを読み解く」

「ロシア 語られない戦争 チェチェンゲリラ従軍記」常岡浩介

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
チェチェンで実際に独立軍とともに行動した日本人ジャーナリストが、チェチェンとロシアについて語る。
「チェチェン」と聞くと、中央アジアのカスピ海と黒海の間で紛争の耐えない地域…、そして、ロシアはその対応に悩まされている、正直、僕のイメージはこんなものである。どちらかといえば、チェチェン側が無差別な殺戮を繰り返しているようなイメージさえある。しかし、本書によって語られているのは、ほとんど反対の内容であった。
また、チェチェンだけでなく、プーチンの就任後、どれほど多くの人が、暗殺されたり不審な死を遂げているかも語っている。この一冊だけで、それを事実と鵜呑みにするほど僕は子供ではないが、公になっている事実、諸外国からの報道をあわせて見比べてみると、その多くが事実に見えて来る。

2000年にプーチンが大統領になってからの4年余りの間に、殺害されたジャーナリストは15人に上る。解決された事件は一つもない。

2000年以降ロシアで起きた大きな事件。たとえば、モスクワ劇場占拠事件、北オセチア学校占拠事件など、当時の日常の忙しさのなかでは、遠い外国で起きている事件として、わずかに関心を向けた程度のものでしかなかったが、本書に書かれていることと、僕がそのニュースから理解したことがずいぶん異なることに気づかされる。
日本のメディアはどちらかというと、物事を客観的に報道できているほうだと思っているが、ロシアのニュースに関しては、かなりの部分、ロシア政府の情報操作によって捻じ曲げられたものを日本のメディアが報道し、それを僕らが目にしているということに恥ずかしながら今頃気づいた。本書を読んで改めてその事件をWikipediaで調べてみて、日本語版と英語版とで記述内容が大きく異なることを知った。
そして、巻末には著者が取材したときのアレクサンドル・リトビネンコのインタビューがそのまま掲載されている。この部分だけでも十分に読む価値ありである。彼はこの2年後に毒殺される。

われわれのすぐ近くに爆弾や戦車の下で、何の罪もない人が死んでいるのを理解しなくてはならない。すべてプーチンが悪い。日本人が聞いてくれるなら、これを日本人に言いたい。

著者が本書の冒頭で、本書と合わせて読んでほしいと挙げたいる2つの作品。アンナ・ポリトコフスカヤの「チェチェン やめられない戦争」、アレクサンドル・リトビネンコの「ロシア 闇の戦争」。どちらの著者もすでに殺されている。なんか、読まなければいけないような気がしてきた。

アレクサンドル・リトビネンコ
ソ連国家保安委員会(KGB)、ロシア連邦保安庁(FSB) の職員だったロシアの人物。当時の階級は中佐。後にイギリスに亡命しロシアに対する反体制活動家、ライターとなった。2006年、何者かに毒殺された。(Wikipedia「アレクサンドル・リトビネンコ」
アンナ・ポリトコフスカヤ
ロシア人女性のジャーナリスト。ノーヴァヤ・ガゼータ紙評論員。第二次チェチェン紛争やウラジーミル・プーチンに反対し、批判していたことで知られている。2006年、自宅アパートのエレベーター内で射殺された。(Wikipedia「アンナ・ポリトコフスカヤ」
モスクワ劇場占拠事件
2002年10月23日から10月26日にかけて、ロシア連邦内でチェチェン共和国の独立派武装勢力が起こしたテロ事件。(Wikipedia「モスクワ劇場占拠事件」)、(Wikipedia「Moscow theater hostage crisis」)
北オセチア学校占拠事件(ベスラン学校占拠事件)
Wikipedia「ベスラン学校占拠事件」)、(Wikipedia「Beslan school hostage crisis」
リャザン事件(ロシア高層アパート連続爆破事件)
1999年にモスクワなどロシア国内3都市で発生し、300人近い死者を出した爆弾テロ。チェチェン独立派武装勢力のテロとされ、同月に首相となったウラジーミル・プーチンはこれを理由にチェチェンへの侵攻を再開し、第二次チェチェン戦争の発端となった。(Wikipedia「ロシア高層アパート連続爆破事件」

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「危ない世界一周旅行」宮部高明

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
世界一周航空券で320年かけて行った世界旅行記。
ここ最近旅行記はよく本になるが、この本は旅のすばらしさよりも、そのタイトルからも推測できるように、旅の危険さに焦点があてられている。単に著者の体験のなかで危険なことの占める割合が多かったせいでそうなったのかどうかはわからないが、ある意味新鮮である。
ほかのよくある旅行記同様、自分に酔っている感があふれていて、「俺」口調も最初は気になったが、慣れれば無視できるもので、それなりに楽しませてもらった。
タイトルのとおり、著者は各地で危険な目に遭うわけだが、読んでいる側からすれば、自殺行為にしか見えない行動も多々あり、やや著者が勇気ある、というよりも無知でおろかな人間に見えてしまうが、それが旅の魔力なのだろうか。「安全な場所で冷静に本を読んでいる人にはなんとでも言える」と著者も読者に言いたくなることだろう。
各訪問地を、治安、人柄、物価の5段階で評価しており、これから世界一周を考えている人は軽く読んでみてもいいのではないだろうか。ちなみに治安の評価がもっとも低かったのは南アフリカとコロンビア。
まあ、そうだろうな。
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「アップルvs.グーグル」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
iPhoneとアンドロイドで世の騒がせるアップルとグーグル。IT業界の2大巨人の動向を説明している。
まずは、当然のように世の中のスマートフォンの話題をさらっているiPhoneとアンドロイド携帯について話から入る。世の中では出荷量や販売台数など、多くのデータによって優劣がつけられているが、では実際はどうなのか。そして、それぞれの戦略や過去の発展の経緯についても語っている。
また世の中では一般的にアップルとグーグルは敵対しているように語っているが、実際にはどうなのか、そもそもアップルとグーグルのサービスは共存し得ないものなのか、など。そして、アップルとグーグルだけでなく、明らかに後手にまわっているマイクロソフトや、日本企業は今後どうあるべきか、なども含めて語られている。
僕らが、iPodやGoogleMapなど、すでに日常の中に自然と溶け込んでいる両者のサービスを使う中で、感じ取っているアップルとグーグルのベクトル違い理解するのに大いに役立つだろう。同時に本書によって今後の動向にもさらに関心を持つことになるだろう。

グーグルによる革命は、それまで敷居が高く、一部の人にしか手に入らなかった情報も、グーグルの側でお金をかけて敷居を下げ、誰にでも仕えてしまうようにするインスタントなチープ化革命だ。
アップルのやり方を見て、ただハードやソフトの見てくれを気にしているだけで、大したことないと思っている人もいるかもしれない。だが、見てくれや操作のしやすさは、それを使ってものをつくり出す人に大きな違いを生み出す。

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「その英語、ネイティブは笑ってます」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
どんなに英単語を覚えても、会話のなかでは自分のなかではいいたいことを言えずにときどきストレスを感じる。わずかな言葉で、同意や感嘆を示すことは、かならずしも必要のなきことなのかもしれないが、会話を盛り上げる上では大きな意味を持つ。
そして、会話のなかでそんなタイミングを逃さずに適切な反応を示すためには、その言葉は短くなければならない。僕らはその英語学習のせいで、いいたいことを英語にするとどうしても長くなりがちだが、実際にネイティブスピーカーたちはいいたいことを実に少ない単語で表現する。
本書はそんな視点にたって、会話によく使われる短い表現を集めている。その多くがなかなか辞書から探そうと思っても見つけにくいものばかり。
おもしろいのは、そんな便利表現を
「◯◯」と2単語で表現するには?
といういふうに問題形式で展開される点だろう。例えば「そんなことにならなければいいけど」と2語で表現するには?というように。そのほかにも目からウロコの表現で溢れている。

彼は頭痛のタネだ。
He’s a headache.

また、いままで間違って使っていたのは表現もいくつか発見させてもらった。
とりあえずこれからはThey say〜とかWe have〜をもっと効果的に使いたいものだ。そのほかにも

No sweat.
I´m game.
I´m in.

などを自分お口から自然と出るようにしたいものだ。あと新しかったのは「beat」と「hurt」の使い方だろうか。

Nothing beats a cold beer in a hoy day.
暑い日は冷たいビールに勝るものはない。
Lying will hurt your reputation.
嘘はあなたの評判を落とします。

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「ネイティブはこの「5単語」で会話する」晴山陽一

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
have、take、get、give、makeの5つの動詞でどれだけ多くの表現ができるか、ということに焦点をあてて英語表現を解説している。
僕らはどうしてもその学習の過程のせいで、「have」=「持つ」や、「give」=「与える」のように覚えており、その覚え方のせいで、この5つの動詞の表現の幅をせばめている。多くの例文や会話例の中でそれぞれの動詞の意味の「捕まえ方」について解説している。
英語の表現を増やすうえで、使える単語量を増やすのはもちろん大切だが、すでに知っている単語の用法を増やすこともまた大きく会話力の向上に役立つだろう。
本書で取り上げている5つの動詞のなかでも、特に「take」と「make」には使えていない表現があることを改めて認識させてもらった。

I take it as a compliment.
私はそれをお世辞だと思います。
I take him to be a honest man.
彼は正直な男だと思います。
This made the third time he’s said it.
彼がそう言ったのはこれで3度目です。
She made the dead line.
彼女は締め切りに間に合いました。
She made the Olympic team.
彼女はオリンピックチームのメンバーになりました。

意識して使ってこそ自らの表現となるのだろう。
【楽天ブックス】「ネイティブはこの「5単語」で会話する。」

「世界を変えたアップルの発想力」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
松下電器からアップルに転職した著者目線で、アップルという会社を主要人物が語った明言を引用しながら説明していく。典型的な日本企業である松下とアップルを比較することで、アップルのその異質な社風が見えてくる。
アップルがどれだけ偉大なことを成し遂げてきたか、ということを考えると、誰もがそんなプロジェクトに関わりたいと思うだろう。しかし、偉大な商品をつくったからといって、その会社が誰にとっても魅力的な労働環境を提供しているとは限らないのだ。よくも悪くもアップルという会社がユニークな会社であることが見えてくる。また同時に、僕らが「会社はこうあるべきだ」と考えているもののいくつかが、必ずしも会社に必要でないものであることも気づくだろう。
それでも思うのだ、アップルで働いたら、きっと何時間でも働かなければならないだろうし、仕事以外のことを一切放棄しなければならないときもあるだろう。それでもここまで熱意を注いで仕事ができることは幸せなんだろう、と。

真似はマイクロソフトにやらせておけばいい

本書で挙げられている歴史をつくったアップルの偉人たちの名言の中の、いくつかが胸に刺さるのかもしれない。
【楽天ブックス】「世界を変えたアップルの発想力」

「ファーストクラスの英会話」荒井弥栄

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
元国際線のCAがその経験から、日本人が間違えやすい表現を、「ビジネスクラス」「ファーストクラス」とその丁寧さを2段階に分けて説明する。僕らは英語と日本語の違いを、「英語は直接的で日本語は遠まわし」などと漠然と思っているかもしれないが、どんな言語においても、相手に反対したりするときは、相手に不愉快な思いをさせないような遠まわしな言い方が必要なのである。
「英語で言いたいことを言う」の次のステップ、「英語で気持ちよくコミュニケーションをとる」の段階に移ろうとしている人には非常に役に立つだろう。
一般的な丁寧表現の「Could you?」「Would you mind if?」のほかにも、ビジネスシーンに使えそうな、丁寧表現が満載である。「add up」「up to scratch」「be snowed under」「under the weather」などはぜひ覚えておきたい表現である。
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