「ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる」梅田望夫

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
シリコンバレーで生活する著者がインターネットでおこっている大きな動きについて語る。
GoogleやWikipediaに代表されるインターネット上で起きている動きは一体どのようなものなのか。それは物や対面のサービスのなかで育ってきた人々にとってはなかなか理解しにくいものなのかもしれない。僕自身はむしろインターネットが十分に生活に根付いているのでそんなことは考えた事もなかったが、著者の意見から年配者が感じる困惑も少し理解できた気がする。
著者が持つ様々な人脈から得た意見などから現在のネット上の動きを説明してくれるため、もともと知識として持っていたことに対しても新たな視点を持つ事ができる。例えば、著者は「恐竜の首」と「ロングテール」という言葉を使ってamazonの強みを説明する。今まで、基本的に店舗は、多くの人に人気のある商品、つまり「恐竜の首」だけを扱ってきて利益を出してきたが、実際の店舗を持たないamazonは「ロングテール」から利益を出すことができる点が新しいというのだ。
また、同じようにGoogleについても触れている。Googleは世の中の本をすべてスキャンして無料で提供しようとしており、それが著作権の侵害とか出版社の利益を損ねるとか、多くの議論を呼んでいる。しかし、反対意見はいずれも「恐竜の首」部分の本を扱う人々の考えであって、「ロングテール」つまり非常にニッチな本の作者にとっては、無料とはいえ、まず人の目に触れてもらう機会があることこそ重要なのである。
本書自体が2006年に発売されたものであるがめ、例えばFacebookやTwitterに関する記述がないなど、現在のインターネットの流れからやや遅れている点は残念だが、それでもいくつか印象的な考え方を知る事ができた。同じ著者の続編、「ウェブ時代をゆく いかに働き、いかに学ぶか」と内容的にかぶる部分も多いので、そちらだけ読んでもいいのかもしれない。
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「ザ・チーム 日本の一番大きな問題を解く」斉藤ウィリアム浩幸

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
日系人としてアメリカで成功した著者が、日本にはチームがないことに驚いた。チームの重要性について語る。
チームとグループは違うのだという。チームとはただの人の寄せ集めではなく異なる種類の人が同じ目的を持って集まった物を言う。それは1たす1が2となるのではなく3にも4にもなるようなものなのだと。
本書では著者の成功体験をもとにチームの重要性を訴えるが、どちらかというと著者の過去のエピソードの方が、ザッカーバーグやジョブスの物語のような面白さがあり、チームの話はあまり印象に残らなかった。
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「Webライティング実践講座」

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
Webに特化したライティングについて語る。
Webライティングの書籍はいくつか出回っているが、本書はいろいろな文章を実際に修正して見せてくれる点が新しい。文書を圧縮する手順として、「客観的事実でない行を削除」や「冗長な表現を削除」などいくつかの方法をあげている。この部分を実践するだけでも世の中の多くのWebは見違えるようなものになるだろう。
全体的には、添削部分で多くのページを費やしており、内容が深いとは残念ながら言えない。
ひょっとしたら鉛筆と実際の文章を校正しながら読み進めるともっと本書は違った印象を与えてくれたかもしれない。
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「Web文章上達ハンドブック」森屋義男

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
Webコンテンツの文章をよりよくしていくための方法を語る。
「てにをは」や「である調」「ですます調」など基本的なライティングの考え方は特に新しくもなかったが、むしろライティングという全体の作業を、ディレクター、ライター、エディターという3つの視点から捉えている点が新しい。つまり、通常では少なくとも3人の人間が文章を作成するうえで必要で、世の中の人が思っているほどライティングも簡単な作業ではないという事なのだ。
全体として視点としては悪くないものの、ページ数が少ないため浅い内容で終わってしまっている。値段を考慮するとあまり満足できるものではないだろう。
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「だから御社のWebは二度と読む気がしない」戸田覚

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
インターネットというものが人々の生活に入り込んですでに10年以上が経過している。印刷物と異なるのは企業が頻繁にサイト上の情報を更新できるというものだ。いつでも変更できるという意識があるからだろうか、多くの企業はウェブサイト上に書かれる文言には、印刷物に書かれる文言ほどコストも時間もかけていないのである。
本書は企業がサイト上の文言を考える上で注意するべきことを、大手企業サイトの悪例を参考にしながら語る。

世の中は、読んでも内容のわからないWebページであふれ返っている。まともな感覚で読めない文章をどういう考えで公開しているのか、理解に苦しむ。

個人的に現在のインターネット事情に感じることと著者の言う事がぴったりだったので興味深く読む事ができた。また、現場での作業に活かせそうな内容にもいくつか出会うことができた。

原則的に見出しは16文字程度に収めるのがベストなのだ。

本書が発行されたのがすでに6年が経っているが、世の中にあふれるサイトは相変わらず読みにくいものばかりである。制作に関わる企業はもっとライティングの重要性を理解するべきなのだろう。
ライティングの重要性を語りながらも本書中にかなりの脱字があったことはやや気になったが特に内容に影響する物でもない。著者が行っているというライティングのセミナーも参加してみたくなった。
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「ウェブで学ぶ オープンエデュケーションと知の革命」梅田望夫/飯吉透 

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
現在アメリカを中心に教育機関がインターネット上で高品質な授業を無料で受けられる仕組みが整いつつある。その背景と現状、問題点を語る
1年ほど前にカーンアカデミーの取り組みを知ってオープンエデュケーションに非常に興味を持った。本書は手にとったのもそんな理由からだ。
面白いのはその発端となった出来事である。最初、アメリカの各大学は、利益を見込んでオンライン上で授業を公開しようとしたのだが、あまり収益があがらないと気付き各大学が撤退するなか、マサチューセッツ工科大学が「であればいっその事無料で公開しよう」となったというのだ。これはまさに日本では起こりえない発想なのだろう。そして、そんな流れは、iTunesやYoutubeなどさまざまなインターネットやIT技術の発展によって加速する事になったのだ。
CourseraやEdX、Udacityといった様々なオープンエデュケーションフォーマットについて語るとともに今後の課題についても語っている。
そんな中でも興味ひいたのは大学などの教育機関が持つ「強制力」の話。誰もが無料で勉強できるようになったかといってすべてが解決する訳ではないというのだ。つまり、宿題をやってこなければ怒る先生がいて、落ちこぼれになったら馬鹿にする嫌な生徒がいて、ある程度の点を試験でとらなければ落第するシステムがある。そういうシステムがあって初めて勉強を全う出来る人が世の中の大部分だと言うのである。オープンエデュケーションの今後の課題は、無料であるなかでどうやってその強制力をつけるか、ということなのだ。
とても勉強したくさせてくれる一冊。そして、改めて今後のオープンエデュケーションの流れを考えると、英語ができない日本人のハンデは世界との知識の格差を広げていくだろうと実感させられた。
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「それがぼくには楽しかったから 全世界を巻き込んだリナックス革命の真実」リーナス・トーバルズ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
リーナス・トーパルズはヘルシンキ大学在学中にOSを作り始めた。インターネット上でソースコードを公開し、ネット経由でたくさんのプログラマーの強力を得てLinuxを作り上げていった。その過程やリーナス・トーパルズの考え方などをまとめている。
そもそも「オープンソース」とは何なのか、単純に「ソースを公開する」とはいうけれど、それをどうやって管理するのか、そんな点の興味から本書に入った。残念ながらオープンソースの管理という面では、どうやら本書を読むと結構行き当たりばったりな部分が多かったようで、期待にそう内容とは言えない。しかし、本書で触れられているリーナスのプログラムに対する情熱にはとても刺激を受けた。何よりお金に執着しないで楽しみを求めるリーナスの行き方に感銘をうけるだろう。

多少なりとも生存が保証された世界では、お金は最大の原動力にはならない。人は情熱に駆り立てられたとき、最高の仕事をするものだ。

専門用語も多く残念ながらとてもすべてを理解できたとは言いがたいが、読み終わった後、久しぶりにプログラミングがしたくなる。寝る間も惜しんでパソコンの前にへばりつき、プラグラムに明け暮れる。そんな時間が恋しくなる一冊。

MINIX
1987年にオランダ・アムステルダム自由大学(蘭: Vrije Universiteit Amsterdam)の教授であるアンドリュー・タネンバウムが、オペレーティングシステム (OS) の教育用に執筆した著書 Operating Systems: Design and Implementation の中で例として開発したUnix系のオペレーティングシステム (OS) 。(Wikipedia「MINIX」
Shell
ユーザの操作を受け付けて、与えられた指示をOSの中核部分に伝えるソフトウェア。キーボードから入力された文字や、マウスのクリックなどを解釈して、対応した機能を実行するようにOSに指示を伝える。(e-words「shell」

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「ファミコンの驚くべき発想力」 松浦健一郎

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
僕はファミコン世代。小学生時代はまさにそのブームのど真ん中。それからゲームは進化して、今ファミコンのゲームの画面を見ると、長い年月が経った事を実感するが、当時は、その限られたメモリや様々な制限のなかで面白いゲームを作ろうという、制作者たちの試行錯誤があったのだという。本書はそんな制作サイドの裏話に触れられることを期待して手に取った。
いくつかの有名なゲームを例にあげてその裏話を披露している。面白かったのはドラクエの呪文の話。メモリ使用量を減らすためには使用できるカタカナはわずか20文字にしていた。つまりホイミやラリホーなどドラクエIからある呪文はそんな制約のなかから生まれたのである。その他にもドルアーガの塔やスーパーマリオブラザーズなど懐かしのゲームの裏話を見せてくれる。
その制限がたくさんあったなかでゲームを作り出そうとしたファミコンソフト開発者の心を今の制作者たちも見習うべきだと著者はいう。現代のゲームはほとんどファミコン時代に比べるとほとんど制限がないといってもいいくらい何でもできる。しかし、だからといっていたずらにデータを増やして、ユーザを待たせたりするべきではないというのだ。
上にあげたドラクエやドルアーガの話は非常に面白かったが、残念ながらそんな話ばかりでなく、メモリや演算など、プログラムに普段触れている人にしかわからなそうな話も混在して、本書自体がターゲットを絞り込めていない印象を受けた。いろいろ語りたい事はあるのだろうが、もう少し読みやすさを優先して本を書いて欲しかった。
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「いちばんやさしいオブジェクト指向の本」井上樹

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
現代のプログラミングで頻繁に聞く「オブジェクト指向」という言葉。その意味はあらゆるところで解説されており、その名のとおり「オブジェクトを中心とした考え」なのだが、ではそれで実際その意味を理解できたかというとおそらく違うのだろう。
そんな考えで本書を手にとったのだが、まさに痒いところに手が届く内容だった。過去のプログラム言語を例に挙げてその不都合な部分を明確にし、その不都合さゆえに次第に「オブジェクト指向」という考えが根付いていく過程を示してくれる。プログラム言語の進化の過程を含めて理解することで、より説得力のある形で「オブジェクト指向」という考えを受け入れることが出来る。
おそらくプログラムを仕事にしている人にとっては当たり前の話ばかりなのだろうが、BASICやCなど昔プログラムをちょっとかじったけど最近のプログラムはなんだかよくわからない。という人にはぴったりかもしれない。

Smalltalk
Simulaのオブジェクト(およびクラス)、Lispの機能、LOGOのエッセンスを組み合わせて作られたクラスベースの純粋オブジェクト指向プログラミング言語、および、それによって記述構築された統合化プログラミング環境の呼称。(Wikipedia「Smalltalk」
Simula
最初期のオブジェクト指向言語の一つである。(Wikipedia「Simula」)

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「クラウド化する世界 ビジネスモデル構築の大転換」ニコラス・G・カー

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
Googleのサービスに見られるように、世の中はクラウドというスタイルへと移行しつつある。本書の序盤はそんな「クラウド」について、過去にクラウド化された物を例にとって初心者にもわかりやすく説明している。
その例に使用されているのが、「電力」である。発電機が発明されて、電気にガスよりも多くの利点があると世の中が認識すると、すぐにお金のある企業は発電機を買って電気を利用し始めるが、やがて「電力」はおのおのの企業や家庭がその敷地内で発電するものではなく、現在の「発電所」と呼ばれるような、ひとつの場所で多くの電力を発電し必要とされる場所に送られることが一般的になっていった。
この電力の進化の流れは、現在の「クラウド」と呼ばれるものと同じ流れであり、そう考えると「クラウド」という言葉こそインターネット向けに使われ始めたものではあるが、その進化の流れは決して特別新しいものではないことがわかる。遠距離に送ることができて、その送るインフラが整備されていれば、それはひとつの場所で大量に生産するほうが効率的で、利用者にとっても余計な知識や維持費が不要になるのである。
そんなクラウドの流れを説明するとともに、中盤以降ではセールスフォースなど現在あるクラウドサービスについて解説し、終盤にかけてはクラウド化が人に及ぼす影響に対して疑問を投げかけている。

インターネットで入手できる豊富な情報は、過激主義を抑えるのではなく、むしろ拡大するかもしれない。人間は自分の見解を裏付ける情報を得ると、自分の考えこそが正しく、自分とはことなる考えを持つ人は間違っているのだと、確信してしまう。
我々が技術を作り上げるのと同じくらい確実に、技術も我々を形成する。

翻訳のせいか若干読みにくく、また全体的に著者が言いたいことや本全体としての焦点が「Google」なのか「インターネット」なのか「クラウド」なのか、はっきりしないと感じる部分もあるが今のインターネットの流れを把握するには非常にわかりやすい内容である。
【楽天ブックス】「クラウド化する世界 ビジネスモデル構築の大転換」

「グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた」辻野晃一郎

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ソニーでVAIO、スゴ録などを生み出し、その後グーグル日本代表取締役を務めた著者がソニーと、グーグルについて語る。
タイトルにグーグルの名前があるが、内容の大部分は著者のソニー時代のエピソードで占められている。入社当時、すでに立派な企業であったソニーはすでに大企業病に陥っており、過去の人々が築き上げた栄光にすがって努力をしない人々がいた。本書のなかで語られるエピソードからは、そんな組織のなかで著者が悪戦苦闘する様子が伝わってくる。

「まあ、ソニーだからなぁ。出せば売れるんだよ」
こういう連中が偉そうな顔をしてふんぞり返り、過去の栄光にすがって何もしないからソニーはどんどん駄目になっていくんだ。

第七章では「ウォークマンがiPodに負けた日」としてAppleのiPodとiTunesについても語っている。著者が言うにはインターネットで最初に音楽配信をやったのはソニーだったということ。にもかかわらず、人々の音楽の楽しみ方の変化についていけなかったゆえにアップルとの差は開く一方。すでにいろんなメディアで語られたアップルの成功物語であるが、それをソニーの内部という違った目線から語られるので新鮮である。

当時の旧ウォークマン部隊の人達は、iPod対抗を議論するときに、依然として「音質の良さ」とか「バッテリーの持ち時間」、果ては「ウォータープルーフ(防水加工)」などの話を主題として持ち出してくるので唖然とした。
新商品発表会でスピーチをする直前、スタッフが入手してきたiPod nanoが手元に届いた。彼等の新製品を一目見た瞬間に、私は敗北を悟った。

最後に、自らの体験を振り返って、これから日本の企業がどうあるべきかを語る部分が非常に印象的である。異なるタイプの世界的な企業に勤めた経験がある著者が語るからこそ非常に重みを持って響いてくる。

まず日本でうまくいったら次はアジア、そして欧米、といったような順次拡大の発想をするのではなく、最初からいきなりグローバルマーケットに打って出る、といった大胆なアプローチを考えて欲しいものだ。それが世界に貢献する日本を取り戻す未来に繋がる唯一の道であると思う。

今のこの変化の激しい時代を生きることを大変と思う人もいるだろうが、むしろ、様々な生活を楽しむことのできる貴重な時代に生きている、と前向きに受け取ることもできる。著者が締めくくったそんな内容のエピローグにはなんか元気をもらえた気がした。
【楽天ブックス】「グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた」

「デザインセンスを身につける」ウジトモコ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
デザインの重要性と、優れたデザインをするための考え方を著者の経験から示している。
どちらかというとデザイナー向けではなく、デザインの重要性を軽視しがちな人向けである。どこかで聞いたような話も多い中、個人的に印象的だったのは冒頭のアイコンデザインの話である。
アイコンデザインというと、つい数年前までデザイナーの仕事でしかなかったのだが、ここ数年は、Twitter、Facebookとオンラインでのコミュニケーションが一般の人にまで普及してきたため、すべての人が「アイコンデザイン」を考えなければいけない時代になっているという。しかし、多くの人がただ漠然と自分の写真をアイコンとして設定したり、顔を出すのを嫌がって、ペットなどの動物をアイコンに設定するケースも多い。
ところがアイコンによってその人が相手に与える印象は大きく異なってしまう。たとえば、同じ日常的な会話、「おやすみ」でも、その隣に表示されるアイコンの顔がアップなら押し付けがましい印象を受けるだろうし、小さく顔の映ったアイコンならまた違った印象を受けるだろう。こうやって考えると、オンラインだけのコミュニケーションが日常的になっている昨今、決してアイコンデザインを疎かにしてはいけない、と著者は言うのだ。多くの読者は読み終わったあとにアイコンを変えたくなるのではないだろうか。
また、AppleやGoogle、スターバックスなど誰もが知っている企業を例に挙げながらデザインの重要性を説いていく、冒頭でも書いたとおり、どちらかというとデザインへの関心の低い人向けであるが、そういう人は「デザインセンスを身につける」という本はなかなか手に取らないと思うが実際どうなんだろう。
【楽天ブックス】「デザインセンスを身につける」

「ツイッターノミクス」タラ・ハント

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
本書で一貫して主張しているのは「ウッフィーを増やす」ということである。「ウッフィー」とは何か。明確に本書でそれが定義されているわけではないが、「信頼」とか「安心」とか「尊敬」といった言葉で置き換えられそうなもの。
著者が言うのは、現在ほど、SNSが浸透している今、利益をあげようとするなら、「ユーザー数を増やす」「利益をあげる」「価格をあげる」とか、過去の慣習に従うのではなく、ウッフィーを増やすことこそその近道だと説くのである。
この考え方には僕自身非常に納得できるものがある。例えば映画を例にとってみても、映画館に足を運ぶ人の多くはCMで観た映像だけを頼りに決断して、実際に面白かったかどうかを知る手段はほとんどなかったが、インターネットが浸透した今では、映画を観終わった人がすぐにその感想を情報を発信してしまうのである。「クチコミ」の広まるスピードがインターネット以前と以後では何倍にもあがってしまったのである。
つまりそれは、言い換えるならインターネット以前の時代では「印象」だけで顧客を得ることのできていたものが、今は「内容」を伴わなければ不可能になったおいうことなのだ。
著者の体験をもとに、あらゆるウッフィーの増やし方と、自らの成功例、そして、いくつかのアメリカの企業を例にとってウッフィーを増やすことに成功した例や失敗した例を挙げている。どの例もとても興味深い。

多くの企業がマーケティングで犯す過ちは、顧客獲得にエネルギーとリソースをすべて投じてしまうことだ。だがほんとうは、解約率の縮小に使うべきである。カスタマー・サービスの改善に努力すれば、満足した顧客はオンラインでクチコミを起こしてくれる。
大切なのは、「ターゲット顧客」を設定して売り込みの対象にするのではなく、本物の顧客とつながりを持つことだ。

またアメリカの企業のSNSに関する認知上は日本のそれよりはるかに進んでいることがわかる。日本にも速く追随して欲しいものだ。
さて、この「ウッフィーを増やす」という感覚。企業であれ個人であれ、その重要性を知っている人はすでにその何年も実践しているのだろう。そして、きっとその重要性を知らない人はいつまで経っても理解できないのだろう。結局それは人を信じるということに繋がってくるのだから。
なんにせよ、多くの企業がウッフィーの重要性を理解し、それを獲得することを第一に考え始めたら、すべてに人にとって過ごしやすい世界になるだろうと感じた。

クルートレイン宣言
米国のマーケティング・コンサルタントのクリストファー・ロックが新しい時代のマーケティングのための「95のテーゼ」を発表し、1999年に書籍として出版されたもの。インターネットによって組織と消費者の間に今までないレベルのコミュニケーションが生まれるようになり、組織は市場への反応して変化することが求められる。と言うもの。(Wikipedia「The Cluetrain Manifesto」
モレスキン
のモレスキン社(Moleskine, 旧社名:Modo & Modo)が販売する手帳のブランド。撥水加工の黒く硬い表紙と手帳を閉じるためのゴムバンドが特徴である。(Wikipedia「モレスキン」
TED(Technology Entertainment Design)
アメリカのカリフォルニア州モントレーで年一回、講演会を主催しているグループのこと。
TEDが主催している講演会の名称をTED Conference(テド・カンファレンス)と言い、学術・エンターテイメント・デザインなど様々な分野の人物が講演を行なう。講演会は1984年に極々身内のサロン的集まりとして始まったが、2006年から講演会の内容をインターネット上で無料で動画配信するようになり、それを契機にその名が広く知られるようになった。(Wikipedia「TED (カンファレンス)」

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「グーグル秘録 完全なる破壊」ケン・オーレッタ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ラリー・ペイジとサーゲイ・ブリン。スタンフォードの大学院で出会った2人がGoogleを起こしてから、これまでの進化の過程を描く。
アップルのスティーブ・ジョブスや、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグに比べるとはるかにメディアに顔を出すことの少ないGoogle創業者の2人。そんな2人の生い立ちや出会いなどから時系列に、Googleの成長の過程と、周囲の反応などを描いている。
僕の印象では、ラリー・ページもサーゲイ・ブリンも非常に知的でストイックなイメージだったのだが本書を読むと、実はずいぶんその印象と異なることがわかる。2人はむしろ何かに夢中になって周囲が眼に入らない少年のようである。2人が繰り返し口にしたというこんな言葉が印象的である。

「不可能という言葉に、健全な疑いを持とう」

さてそんな子供のような2人でも、そのアイデアとエンジニアとしての発想に未来を感じた人々が集まることによって、Googleという企業は大きくなっていくのだ。実際には僕らが思っているほど、世界を変えるのに必ずしもリーダーシップは必要ないし、幅広い知識も必要ないということなのだろうか。Googleの成長の過程では、知識や技術が必要であればそれを持った人が加わってくるように見える。
さて、面白いのはGoogleの成長だけでなく、Googleの成長とその無料でサービスを提供してしまう手法によって、慌てふためく既存メディアの対応である。訴訟を起こす企業、新しい波に乗ろうとする企業などさまざまであり、そこには今ある利益を守ろうとするためにイノベーションを起こせない大企業の弱点がはっきり浮かび上がる。
向かうところ敵なしに見えるGoogleだが、本書ではGoogleの弱点として、たびたび人々の感情に鈍感な点を挙げている。例えば大容量のGmailにはメールを永遠に蓄えられる余裕があるため、削除機能は必要ないと主張し、人には消したいメールがあるという感情に気づかないし、YouTubeの広告枠を売りながら、動画によっては広告主はそのこに広告を表示したくないという感情に気づかないのだ。
多くの企業がGoogleによって苦しめられるなか、一般ユーザーはその恩恵に享受している。しかし、僕らもその行く末を楽観視していいのだろうか。本書を読み進めるなかで僕はそんな著者からの問いかけを何度も感じた。

これから見極めるべきは、ネットという新たな流通システムが、コンテンツ・プロバイダーに十分な対価をもたらすほどの収入を生むかどうかだ。

流通が簡略化され仲介業者がいなくなればコストは抑えられる。しかしそれによって、そのコンテンツの製作者はそれに見合う利益を得られるだろうか。長期的に見れば、今の流れは将来的にコンテンツの品質の低下を招く恐れがあるのである。今からそんな事態を回避する動きをするべきなのかもしれない。
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「フェイスブック 若き天才の野望 5億人をつなぐソーシャルネットワークはこう生まれた」デビッド・カークパトリック

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
Facebookの始まりから現在に至るまで(といっても2009年まで)を時系列に、マークザッカーバーグやその他買収に名乗りを上げた企業たち、よきアドバイザーたちとのエピソードを交えながら描く。
多くの人名や、資金調達のためのベンチャーキャピタルやGooggleやMicrosoftとの駆け引きなど、経済面に関する知識がお世辞にも豊富ではない僕にとっては、なかなかすべてを理解するのは難しく、多くの人にとっても、きっと読みやすいとはいえないだろう。しかし、それでも今までフェイスブックが辿ってきた成長の経緯と、フェイスブックのCEOであるマークザッカーバーグのフェイスブックに対する姿勢、そして、そのフェイスブックという巨大なSNSが持つ可能性はしっかり伝わってくる。
その進化の過程は必ずしも順風満帆なものではなく、フェイスブックが人とのつながりをより容易にしたがゆえに、自ら作った機能によって結束したユーザーたちが、フェイスブックの機能変更やポリシーに対して反対運動を始めるということもあったし、多くの企業が買収に乗り出したりもした。そして、もちろん問題は外部からだけでなく内部からも生じたりもした。莫大な人口に影響を与える会社を運営していくことに伴う障害やその困難、圧力を多少なりとも感じることができるだろう。
そして、本書中盤で触れている、フェイスブックの基本となる考え方が特に印象的である。

2種類のアイデンティティーを持つことは、不誠実さの見本だ。現代社会の透明性は、ひとりがふたつのアイデンティティーを持つことを許さない。

たとえばmixiを例にあげるなら、mixiで会社の人間はマイミクにしたくない、と思っている人は多いだろう。これはつまり、その人がプライベートと会社で2つのアイデンティティーを使い分けているためなのだ。
しかしフェイスブックはそれを許さない。それはつまり何かどこかで悪い行動をすれば、それが最初は一人の友達が知ることだとしても、たちどころに会社の同僚や恋人に知れてしまう可能性があることを意味する。
僕らがSNSに対して持っている恐怖の根源はこういう可能性にあると思う。しかし、本書が説明するフェイスブックのこの哲学の根源にある考えは、人々の透明性がSNSを通して増すことによって、人々はどんな場所でもどんなときでも自分の行動に責任を持たなければならなくなる。つまり人々の誠実さが増す、というのである。
話が大きくなりすぎて実感がわかないし、ただの理想論のように聞こえなくもないが、SNSというもののなかにこのような可能性を見出しているということ感心してしまった。
間違えなく本書は、読む前と読んだあとで読者のフェイスブックに対する姿勢を大きく変えてくれることだろう。そして今後のフェイスブックの動向を楽しみにさせてくれるに違いない。
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「スティーブ・ジョブズ驚異のプレゼン 人々を惹きつける18の法則」カーマイン・ガロ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
アップル製品に興味のある人や、IT業界の動向に関心のある人は誰でも一度は彼のプレゼンを見たことがあるのではないだろうか。本書は、スティーブ・ジョブズのその魅力的なプレゼンテーションを分析し、聴衆を魅了するテクニックの数々を明らかにしていく。
僕自身はプレゼンなどほとんど縁のない仕事をしているが、それでも興味を持って読むことができた。魅力的なプレゼンをするための手法として印象的で僕らが陥りがちな手法は本書でたくさん触れられているが、パワーポイントの箇条書きの部分が一番耳が痛い。同じように感じる人は多いはずだ。

パワーポイントも上手に使えばプレゼンテーションをひきたてることができる。パワーポイントを捨てろというわけではない。用意されている箇条書き「だらけ」のテンプレートを捨てろと言うのだ。

そのほかにも「3点ルール」や「敵役の導入」「数字のドレスアップ」などは面白く読ませてもらった。

普通なら市場シェア5%は少ないと思うだろうが、ジョブズは別の見方を提示した。
「アップルの市場シェアは自動車業界におけるBMWやメルセデスよりも大きい。だからといって、BMWやメルセデスが消える運命にあると思う人はいないし、シェアが小さくて不利だと思う人もいない。

読めば誰もがプレゼンをしたくなるだろう。必ずしも大勢の人の前でのプレゼンだけでなく、コミュニケーションの根本にあるあり方について考えさせられる内容である。

スティーブ・バルマー
アメリカ合衆国の実業家、マイクロソフト社最高経営責任者(2000年1月 – )。(Wikipedia「スティーブ・バルマー」)
ジャック・ウェルチ
アメリカ合衆国の実業家。1981年から2001年にかけて、ゼネラル・エレクトリック社の最高経営責任者を務め、そこでの経営手腕から「伝説の経営者」と呼ばれた。(Wikipedia「ジャック・ウェルチ」)
YouTube「Steve Jobs’ 2005 Stanford Commencement Address」
YouTube「iPhone を発表するスティーブ・ジョブス(日本語字幕)」
YouTube「スティーブジョブズによるiPodプレゼン(2001)」
YouTube「MacBook Air 」
YouTube「The Lost 1984 Video: young Steve Jobs introduces the Macintosh」
YouTube「The First iMac Introduction」

【楽天ブックス】「スティーブ・ジョブズ驚異のプレゼン 人々を惹きつける18の法則」

「アップル、グーグル、マイクロソフト クラウド、携帯端末戦争のゆくえ」岡嶋裕史

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
「クラウド」とはなんなのか。人々が漠然と受け入れているその言葉の意味とその有効性を、アップル、グーグル、マイクロソフトというIT界の巨人たちの動向をふまえて説明していく。
本書によると「クラウド」という言葉のブームは2006年に続いて2度目なのだそうだ。しかし一体、世の中のどれほどの人が「クラウド」という言葉の意味を言葉にすることができるのだろうか。実際僕も「Saas」と「クラウド」を同じものとして今まで受け止めてきた。本書ではまずはそんな言葉の意味から説明していく。
決してわかりやすいとは言いがたく、どこか教科書的になってしまう1章、2章は正直やや退屈だったが、「クラウド」「Saas」「Paas」「Iaas」という鍵となる言葉を理解するうえではおおいに役立つだろう。そして各社がどのような戦略をとっているのか、という視点にたってクラウド解説している後半は世の中に対する新しい見方を提供してくれる。
現在3社がそれぞれクラウドに向かって進んでいるが、それぞれの歩んできた道は異なる。印象的だったのが、マイクロソフトのとってきた戦略とグーグルのとってきた戦略が真逆だという考え方である。

マイクロソフトは既存のパソコンに多くの資産を持ち、クラウドを取り込もうとしているが、グーグルはクラウドに莫大な資産を抱え、次は人とクラウドの接点たるパソコンに入り込もうとしている。

そんなふうに中ほどまではマイクロソフトとグーグルの比較に多くのページが割かれるが、その後は、アップルやアマゾンの手法にも触れられる。この手の多くの著者同様、本書もアップルびいきが感じられるが、世の中の状況を見ると、今のアップルの手法を賞賛せずにはいられないのだろう。アップルの賢さ、(したたかさ?)ばかりが印象に残ってしまった。
スマートフォンや電子書籍など、今後のIT界の動向を見つめるのを少し楽しくさせてくれる一冊となるだろう。
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「アップルvs.グーグル」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
iPhoneとアンドロイドで世の騒がせるアップルとグーグル。IT業界の2大巨人の動向を説明している。
まずは、当然のように世の中のスマートフォンの話題をさらっているiPhoneとアンドロイド携帯について話から入る。世の中では出荷量や販売台数など、多くのデータによって優劣がつけられているが、では実際はどうなのか。そして、それぞれの戦略や過去の発展の経緯についても語っている。
また世の中では一般的にアップルとグーグルは敵対しているように語っているが、実際にはどうなのか、そもそもアップルとグーグルのサービスは共存し得ないものなのか、など。そして、アップルとグーグルだけでなく、明らかに後手にまわっているマイクロソフトや、日本企業は今後どうあるべきか、なども含めて語られている。
僕らが、iPodやGoogleMapなど、すでに日常の中に自然と溶け込んでいる両者のサービスを使う中で、感じ取っているアップルとグーグルのベクトル違い理解するのに大いに役立つだろう。同時に本書によって今後の動向にもさらに関心を持つことになるだろう。

グーグルによる革命は、それまで敷居が高く、一部の人にしか手に入らなかった情報も、グーグルの側でお金をかけて敷居を下げ、誰にでも仕えてしまうようにするインスタントなチープ化革命だ。
アップルのやり方を見て、ただハードやソフトの見てくれを気にしているだけで、大したことないと思っている人もいるかもしれない。だが、見てくれや操作のしやすさは、それを使ってものをつくり出す人に大きな違いを生み出す。

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「世界を変えたアップルの発想力」

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
松下電器からアップルに転職した著者目線で、アップルという会社を主要人物が語った明言を引用しながら説明していく。典型的な日本企業である松下とアップルを比較することで、アップルのその異質な社風が見えてくる。
アップルがどれだけ偉大なことを成し遂げてきたか、ということを考えると、誰もがそんなプロジェクトに関わりたいと思うだろう。しかし、偉大な商品をつくったからといって、その会社が誰にとっても魅力的な労働環境を提供しているとは限らないのだ。よくも悪くもアップルという会社がユニークな会社であることが見えてくる。また同時に、僕らが「会社はこうあるべきだ」と考えているもののいくつかが、必ずしも会社に必要でないものであることも気づくだろう。
それでも思うのだ、アップルで働いたら、きっと何時間でも働かなければならないだろうし、仕事以外のことを一切放棄しなければならないときもあるだろう。それでもここまで熱意を注いで仕事ができることは幸せなんだろう、と。

真似はマイクロソフトにやらせておけばいい

本書で挙げられている歴史をつくったアップルの偉人たちの名言の中の、いくつかが胸に刺さるのかもしれない。
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