「荒神」宮部みゆき

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
東北の山村に怪物が現れ、村を一夜にして壊滅状態する。命からがら逃げ延びた蓑吉(みのきち)は敵対する永津野藩の人々によって助けられる。永津野(ながつの)藩、香山(こうやま)藩という過去の因縁によって敵対しながらも、それぞれが怪物退治に動き始める。
過去には何度も超能力者を扱った物語を書いている宮部みゆきだが、本書の怪物ほど非現実的な描写をしたものは記憶にない。だからこそ、そんな非現実的な存在を取り入れてまで訴えたい何かがあるのだろう、と思いながら読んだ。
物語は永津野(ながつの)藩、香山(こうやま)藩という2つの憎しみあう藩の間で起こる。永津野(ながつの)の曽谷弾正(そやだんじょう)は技術を盗むためにさまざまな口実を設けて香山(こうやま)の人をさらうために、香山(こうやま)の人々から憎まれ、恐れられていたのだ。
曽谷弾正(そやだんじょう)の妹である朱音(あかね)によって、怪物から逃げ延びた蓑吉(みのきち)が救われることから始まる。兄のやり方を嫌って朱音(あかね)は蓑吉(みのきち)を秘密裏に保護し、怪物の存在を知るのである。
また一方で、小日向直弥(こびなたなおや)は香山(こうやま)の政治に巻き込まれ、化け物の正体を見極めるために山を登るのである。永津野(ながつの)藩、香山(こうやま)藩のそれぞれの方向から、怪物に迫るうちに、2つの藩の過去の歴史が明らかになって行く。
物語はもちろんフィクションであるが、関ヶ原の戦いによって憎み合うようになった2つの藩の歴史を読むと、実際の日本にも、歴史の表にはほとんど出てこないような土地に生きた人々は、多くの葛藤や細かいいざこざのなかを生きてきたのだと理解できるかもしれない。教科書からはわからない、過去の日本の一部が見えるような気がする。全体的には最後まで飽きる事なく楽しむ事ができたが、宮部みゆきというだけで最近は期待値が非常に高いので、その期待に応えてくれたとは言い難い。
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