「蘇る教室」菊池省三/吉崎エイジーニョ

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
「学級方向立て直し請負人」という異名を持つ菊池省三の教育方針を、元生徒である著者が描く。
学級崩壊はなぜ起きるのか。序盤は現状の教育の現場と、菊池が立ち直らせた生徒達、立て直したクラスについてのエピソードとその方法について描いている。
まず印象的なのは本書のなかで「ほめ言葉のシャワー」と呼ばれる取り組みである。「ほめ言葉のシャワー」とは毎日帰りのホームルームで、その日の日直がみんなの前に立ち、生徒がそれぞれその人のいいところを褒めるのだ。いい行動を褒められる事で、引っ込み思案な生徒も、自分の存在価値を認識するのである。そして、普段素行の悪い生徒も、自分にもいいことができるということを学ぶのだそうだ。
その描写を見て思ったのは、両親に褒められることのない生徒というのが決して少なくないという点だろう。「ほめ言葉のシャワー」という取り組みによって変われる生徒がたくさんいるのは、その裏返しなのだ。
僕自身が比較的いい育てられ方をしたために、そのような状況で育てられる環境というのが想像しにくいのだが、教育というものを突き詰めるためには、多くの子供達がどのような環境で育てられているかを理解するのは大切だと思った。
菊池が生徒たちに教えようとするものの多くは、一生通じるような考え方ばかりである。

「怒る」と「叱る」の違い
怒るとは、「自分中心の感情で相手に接すること」。叱るとは、「相手の存在を認め成長を願って強く意見すること」。
「群れ」と「集団」の違い
個人が自分らしさを発揮して自立しているグループが「集団」。個人の考えよりもその場のなんとなく流れる空気、特にマイナスの空気が勝るのが「群れ」。

本書は教育に関する内容について書かれているが、大人になって誰もが一人前と認めて、自分を叱ってくれないと思う人は、菊池が生徒達に教えようとしていることに感じるものがあるだろう。

一生懸命だと知恵が出る、中途半端だと愚痴が出る、いい加減だと言い訳が出る

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