「リストラされた100人の貧困の証言」門倉貴史+雇用クライシス取材班

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
2008年のリーマン・ショック以降、世界同時不況の波が押し寄せ、日本の経済・社会が混乱に陥った。その結果、非正規雇用者の人員カットだけでなく正社員のリストラ、そして新卒社会人の内定取り消しなどが起こっている。本書はそんな不況の流れの中の犠牲となった低所得者層の証言をまとめている。
派遣切りにあった人々。内定取り消しになった学生、リストラにあった正社員の証言を複数まとめて掲載している。最終的にそのような過程を経て、ワーキングプアと呼ばれる生活に陥った人々は、多くの人が言うように、貯金できない、ギャンブルが好き、同じ仕事が長続きしない、などの負の条件を備えてはいたりもするが、必ずしもそれだけが原因ではないのがわかるだろう。証言の合間に筆者が語るその問題点の一つとして、国のセーフティネットの整備不足をあげている。(もちろんそれも簡単なものではないが)。おそらくすでに会社や国が生活を守ってくれる時代は終わったことを知るべきなのだろう。そしてそれは、解雇されたらどうなるか、会社が倒産したらどうするか、などを常に念頭に置いておかなければいけないということだ。
終盤では、そんなワーキングプアの人々を狙った悪質なビジネスについても触れている。組織的な犯罪だけでなく、低所得者層が生きるためにする万引き、置き引きなどの小さな犯罪が世間で増えていることが伝わってくる。例えば、そんな人々が出入りするネットカフェの席にパソコンをおいたまま席を立つなどというのは論外なのだろう。決して読むことで楽しくなるような内容ではない、むしろ引用されている人々の生活は、読んでて不快な思いさえさせる。しかし、電車で隣に座った人が、図書館ですれ違った人が、本書で登場する人間である可能性は決して低くないのである。
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