「The Broken Window」Jeffery Deaver

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
Rhymeのもとへ長い間連絡を取っていなかった叔母から電話があった。従弟のArthurが殺人の罪で逮捕されたと言う。しかし、Arthurは人を殺せるような人間ではない、調べていくうちに、無実の人間を容疑者に仕立て上げ、自分はのうのうと生きている人間がいることがわかる。
犯罪学者Lincoln Rhymeシリーズの第8弾。今回の相手は「すべてを知る男」。情報化された個人情報を利用し他人になりすまし、その人間の前科、習慣、趣味、商品の購入履歴などを基に、もっとも犯人にしやすい人間に狙いを定めて、その家や車に犯罪の起きた場所とつながる証拠をおく。
捜査の過程で浮かんできたデータマイニングという業界。その業務は人々のすべての情報をたくわえ、整理しそれを企業に提供するというもの。むしろそれは近い未来への僕らの生活に対する警鐘のようだ。犯人によってクレジットカードを勝手に使用され、犯罪にりようされて生活を破壊された元医師の言葉など、ただフィクションという言葉で済ませられないものを感じる。

人々はコンピューターを信じるんだ。コンピューターが、あなたはお金を借りていると言えば、あなたは金を借りているということになるし。あなたは信用に値しないと言えば、たとえ億万長者だろうが、信用されない。人はデータを信じて、事実なんて気にしないのさ。

それでもいつものように次第に犯人を追い詰めていく。
さて、今回もAmelia Sachsはもちろん、ルーキーから少しずつRhymeに鍛えられて成長しているRon Pulaskiも非常にいい味を出している。無実の罪で捕らえられたArthurがRhymeの従兄弟ということで、シリーズ内であまり語られなかったRhymeの学生時代に触れられている。個人的には犯人との対決よりも、その学生時代の物語により引き込まれた気がする。

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