「武士道エイティーン」誉田哲也

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
前作「武士道セブンティーン」で福岡南高校で剣道を続けることを決意した早苗(さなえ)は香織(かおり)と全国大会で対戦することを約束する。本作はその後を描いた物語。
前2作は、早苗(さなえ)と香織(かおり)の物語で、その2人の視点を交互に物語が展開していったが、本作では、早苗(さなえ)の姉でモデルの緑子(みどりこ)の仕事や恋の話。香織(かおり)の通う道場の師範、桐谷玄明(きりたによしあき)の物語など、今までとはやや異なり、いくつかのサブストーリーが含まれている。
こういう風に言うと、今までの物語がぼやけてしまうように聞こえるかもしれないが、メインの早苗(さなえ)と香織(かおり)の物語ももちろん今まで以上の密度で展開されていく。香織(かおり)の東松高校と早苗(さなえ)の福岡南はともに全国への出場を決め、二人の剣道へかけた高校生活は集大成を迎えようとするのである。
そこからは見所泣き所満載である。実現した早苗(さなえ)と香織(かおり)の対戦。待ち望んだ対戦でその緊張感を楽しむ二人の気持ちが手に取るようにわかる。

今、ようやくあたしは、分かった気がする。
「もしかしたら…あたしはもう一度、お前に、負けたかったのかもしれない…」

そして、因縁の黒岩レナと香織(かおり)の死闘。剣道に関する知識がほとんどゼロなため、書かれていることを100パーセント理解できないのが悲しいが、それでもそこからほとばしる緊張感や竹刀のこすれる音が聞こえてきそうなのは、その描写力のすごさなのか、僕自身が物語に入り込みすぎなのか…。正直僕はこういうのに涙腺がかなりゆるいらしい。

誰をさて置いても、あたしが真っ先に礼をすべきは、お前なのだ。
ここで再び戦えたことを、心から感謝する。
本当に、ありがとう。
今までの非礼を、どうか許してほしい。

メインの物語だけでなく、福岡南のチンピラ教師吉野先生の話す過去や、香織(かおり)に憧れつづけた田原美緒(たわらみお)の物語も読み応え十分である。

恐怖はいつのまにか、狂気にすり替わっていた。
復讐は、単なる暴力へと変容していた。

三部作の最期にふさわしいシリーズ中最高の傑作。放課後の汗と砂埃のなかで明日のことなど考えずにひたすらなにかに力をぶつける、そんな時間が恋しくなってしまうだろう。

逮捕術
警察官、皇宮護衛官、海上保安官、麻薬取締官、麻薬取締員、自衛隊警務官等の司法警察職員、または入国警備官等の法律上は司法警察職員ではないが司法警察職員に準じた職務を行う者が被疑者や現行犯人等を制圧・逮捕・拘束・連行するための術技のこと。(Wikipedia「逮捕術」

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