「空飛ぶタイヤ」池井戸潤

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
走行中のトレーラーのタイヤがはずれ、歩行者を直撃して死に至らしめた。調査の結果は整備不良。納得のできない運送会社社長の赤松(あかまつ)は、大手自動車メーカーに闘いを挑む。
すぐにピンと来た方もいるだろう。この物語はフィクションでありながら、数年前に実際起こった出来事をヒントに描いているのは明らかだろう。物語中では「ホープ自動車」という名称で登場しており、そのグループは、現実の三菱グループと同様に、ホープ重工、ホープ銀行といったグループ企業動詞の協力関係が強い。
本作品では、企業のリコール隠しに関わる出来事をその周囲の多くの視点から描いている。タイヤの外れたトレーラーの所有者である運送会社の社長の赤松(あかまつ)、隠蔽体質を知りながらもそんな社員の一員として生きることしかできない社員。グループ企業というだけで支援を断ることのできない銀行員。妻を殺されて怒りの矛先を探す夫。そんな一人一人の人間物語に何度も目頭が熱くなった。
社会抱える矛盾とそんな矛盾だらけの世の中の中で必死に信念を貫こうとする生きかたを見せてもらった。
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