「葉桜の季節に君を想うということ」歌野晶午

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
2004年このミステリーがすごい!大賞

元探偵の成瀬将虎(なるせまさとら)は、愛子(あいこ)からある悪徳商法の調査を依頼される。そして、同時期に、線路に飛び込んで自殺を図ろうとしていた麻宮さくらと出会う。
物語は蓬莱倶楽部(ほうらいくらぶ)という、老人へ高価なものを売りつけている悪質な業者を中心として展開している。その業者の悪事を暴くために奔走する成瀬将虎(なるせまさとら)と、借金のために悪事に加担するしかなくなった女性、節子(せつこ)の姿が、双方の視点から描かれ、途中、成瀬(なるせ)の過去の探偵時代など回想シーンも交えながら進む。
全体的にはコミカルなノリだが、ところどころ心に響く言葉がある。

われわれは子供の頃、決して嘘をついてはいけませんと、家庭や学校で耳に胼胝(たこ)ができるほど聞かされるわけだが、その教えを大人になっても律儀に守っている人間がいたとしたら、そいつは正直者とは呼ばれない。ただのバカである。
人生は皮肉だね。焼き鳥屋での何気ない一言が、人生の最後の部分を大きく書き換えてしまった。

歌野晶午作品は本作品でまだ2作目であるが、その作品の大部分で、どこかに読者の想像の上をいく展開があるようなイメージを持っている。本作品でもそんな期待を裏切ることは内。多くの読者は、読み進めるうちにすこしずつ頭の中に広がっていく違和感を感じることだろう。そして、その違和感が僕らの先入観から生じることに気付けば、僕ら自信の未来に対しても明るい展望が開けるに違いない。
いつまでも楽しんで生きていこう、と思わせてくれる作品である。
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