「炎と怒り トランプ政権の内幕」マイケル・ウォルフ

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5

黒人初のアメリカ大統領の後を引き継いだトランプではあるが、正直あまり賢そうには見えない彼がどうしてヒラリー・クリントンに勝って大統領に選ばれるに至ったかが知りたくて本書を手に取った。
過去にもジョージ・W・ブッシュの在任期間を描いた「決断のとき」など、大序棟梁を扱った書籍をいくつか読んでいたので、今回もそのようにトランプの悩みや決断の過程に触れられることを期待していた。しかし、残念ながら本書では、トランプの周囲の人々の権力争いに焦点をあてており、トランプ大統領は知性の低い人という扱いを崩さず、トランプ自身の考えなどはほとんど触れられていなかった。
国家の重要事項に対して、ホワイトハウスの人々がトランプの注意をひいたり、思い通りにトランプをあやつるために右往左往する様子は滑稽で、アメリカ合衆国という大国がこのような状態で正常に機能していることに脅かされた。また、一方で、自らの地位を向上させるために、恥も外面も関係なく行動する政治家たちの執念には少し刺激を受けた。
正直、読みやすくも、面白くもないが、少なからず本書から学ぶ点はあった気がする。本書のなかで触れられているオバマケア等、アメリカの医療制度はもっと詳しく知りたいと思った。
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「鉄腕アトムのような医師 AIとスマホが変える日本の医療」高尾洋之

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ICTにより進歩しつつある医療の現状を慈恵医科大学の准教授である著者が説明する。
教育と同じように医療も、政治的な問題のせいか変化の遅い分野。逆にいえばまだまだ伸び代のある分野と言えるだろう。そんな医療現場の現状を知りたくて本書を手に取った。
個人の医療記録を病院が保持するのではなく、共有すればいいというのは、誰でも思いつく医療の未来ではないだろうか。本書によると、その考え方はPHR(パーソナルヘルスレコード)と呼ばれ、考え方としてはすでに一般的ではあるものの、その普及のためにはまだまだ課題が多いのだという。それでもアルムという会社の提供するMySOSおよびJOINというスマホアプリがそれを実現する方向に動いているのだろうだ。
PHRの話以外はそれほど印象的な話はなかったが、大雑把にではあるが現状の医療の状況を把握することができた。今後もしっかり医療業界へのICTの浸透具合にはアンテナをはっておきたい。
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「OKR シリコンバレー式で大胆な目標を達成する方法」クリスティーナ・ウォドキー

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
目標を達成する方法として最近よく聞くようになったOKRという手法が、どんなものでどのように取り入れるかを語る。
序盤は、上質なお茶を届けることをミッションとした架空のスタートアップを題材として、スタートアップ企業が陥りやすい状況を説明し、中盤以降ではOKRをその解決策として物語と絡めながら紹介している。
OKRの個人的な印象としては、もっと複雑なシステムなのかと思っていたが、むしろ拍子抜けするほど単純なものだということだ。特に「目標を50%の確率で達成できそうなものにする」というところは、なぜこの考えが今まで広まっていなかったのだろう、というぐらい単純で誰でも思いつきそうな内容である。とはいえOKRの手法自体を軽んじているわけではない。単純なものほど機能するというのはよくあることだ。また、単純な手法であるからこそ、組織や状況に応じてカスタマイズする必要があり、多くの試行錯誤が必要なんだと感じた。
OKRのもっとも注目すべき点は、本書でも書いているように

ゴールを、「パフォーマンスを評価するしくみ」から、「人を鼓舞し、能力を高めるしくみ」に切り替えよう。

という点だろう。今まで世の中にあった多くの評価システムが、結果的に会社の目的と結びつかなかったのは、その社員の評価につながっていたからである。評価と目標を分離することではじめて目標らしい目標を立てることが現実的になるのである。
一方で本書は一切評価方法については触れていない。OKRを採用するにあたって、企業は社員の評価方法は別に考え出さなければならないのである。
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「沈まぬ太陽」山崎豊子

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
日本の航空会社に務める恩地元(おんちはじめ)は入社後、労働組合の委員長として賃上げ交渉やストライキを指導したことから、パキスタン、エジプト、ケニアへと左遷されていく。
日本航空をモデルにして描かれた作品。10年にも及び海外に左遷された主人公恩地元(おんちはじめ)も実在の人物をモデルにしており、企業名、人物名こそフィクションであるが、1970年代、80年代の日本航空を描いている。
物語のクライマックスはやはり、日航機墜落事故を扱った「御巣鷹山編」だろう。経費削減、利益優先の追求や、社内政治の横行によって、安全管理を怠った結果がついに、500人以上の犠牲者へとつながるのである。日航機墜落事故を扱った物語としては横山秀夫の「クライマーズハイ」も名作ではあるが、本作品では物語全体5章のうちの1章を墜落事故と犠牲者の遺体回収等に割いており、当時の報道からは知ることのできなかった事実を知ることができる。
そして、後半は新たに会長として送り込まれた人物によって、少しずつ会社が改善していく様子が描かれている。汚職や脱税、社内政治の様子はなかなか複雑で理解するのも難しいが、余裕がある人は勉強して知識とするのもいいのではないだろうか。
30年という月日が経っているために現代とのギャップも楽しめるかもしれない。全体的に非常に読み応えがあり、今まで読んでいなかったのが不思議なほどである。著者の魂が感じられる貴重な物語と言えよう。
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「Fifty Quick Ideas To Improve Your User Stories」Gojko Adzic, David Evans

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
アジャイルにおける開発の速度は、ユーザーストーリーをどのように作り出すかによって大きく変わってくる。本書はそんなユーザーストーリーを効果的に作り出す50の方法を解説している。
それぞれの手法に対して「採用することによる主なメリット」と「どのように採用するか」を箇条書きにわかりやすくまとめていて非常に読みやすい。それぞれの手法は、組織の大きさや形態によって、適応できそうなものや難しそうなものもあるが、開発を効果的かつ効率的に発展させるための重要な考え方で溢れており、プロダクトオーナーやスクラムマスターだけでなく、開発にかかわる全ての人に役立つだろう。
個人的に印象的だったのがユーザーの行動を変えるフェーズとして頭文字をとったCREATEである。

Cue
Reaction
Evaluation
Ability
Timing

僕らがユーザーの行動を変えようとした時、上記のどの行動に変化をもたらそうとしてのかを明確にすると、より具体的な施策へとつながるだろう。
また、Storyの優先順位を決める上で指標となる考え方で、書籍「Stand Back And Deliver」のなかでNiel Nickolaisenが語っている考え方である。その考え方で重要なのは目の前のStoryに対して次の2つの問いかけをすることである。

それはミッションにとって不可欠か
(ビジネスはそれなしに進められるか?)
それはマーケットで差別化するものか
(ユーザーに大きな利益をもたらすか?)

そのあとの決断の仕方等は詳しくはぜひ本書を読んでいただきたい。
なかなか一度読んだだけで、実際の開発に適用することは難しいだろう。繰り返し読んで実践することで組織に浸透していく内容だと感じた。

「お金の神様に可愛がられる方法」藤本さきこ

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
月収1400万を稼ぐ実業家の著者がお金を呼び込むための考え方を語る。
呼び込むための方法というよりも、考え方である。したがって実用的な話を求めている人には本書はあまり役に立たないだろう。ネガティブにものを考えがちで、お金が欲しいという希望を口にしながらも特に行動をしない、そんな人をターゲットにしている。
もともとポジティブなものの考え方をしている人にとってはあまり得るものはないだろう。
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