2015年5月アーカイブ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
著者はあるテレビ番組を見てブータンに魅せられた。それから必死で勉強し、青年海外協力隊としてブータンで3年間体育を教えることになった。そんな著者がブータンでの出来事を彼自身が撮った写真を交えて語る。

体育の授業の重要性が認識されていないブータンで、体育の楽しさを教えようとするのだが、多くの困難にぶつかる。例えば、体育着はもちろんないし、生徒によっては運動用の服を買うお金もない。また、低学年はそもそも英語を話せない。そして時間に対する感覚も日本人とは大きく異なるのだ。それでも時間をかけて著者は少しずつ、現地の言葉を学び、体育の楽しさを生徒達に伝えていく。

授業や学校の話だけでなく、著者がブータンで体験した驚きのエピソードもたくさん語っている。しかし、そんなエピソードだけでなく本書の半分ほどを占める写真も素敵である。きっと写真を見ただけでも何か感じ入るものがあるのではないだろうか。

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オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
統計が世の中に役立てられる箇所が溢れているかを語る。

情報をしっかりと正確に把握するためには、その情報の裏に潜む意図を見抜く能力も磨かなければならない。本書では多くの例をあげているが、なかでも印象的だったのがとある2つの携帯電話会社AT&TとVerisonの広告である。AT&Tが「アメリカ人口の97%をカバーしている」とそのネットワークの広さをアピールしたのに対して、VersionはAT&Tの地域カバー率の低さを示して対抗したのである。確かに数字だけ見ると97%というのは高い数字に見えるが、携帯電話という商品を考えると、人が集中している大都市だけで使えても便利とは言えないだろう。数字以外のものを見る目を養う事が大切なのだ。

著者は多くの例を交えながら、統計の基本的なことから語っていく。例えば標準偏差やばらつきなど、言葉だけは知っていた言葉についても、それらの言葉の実際に示す意味が理解できるようにだろう。インターネットを経由して多くの情報にアクセスできる今、標準偏差やばらつきな、平均値や中央値などは、すぐに計算できるようにしておきたい。

本書を読んで感じるのは、物事の真偽を統計的に判断することは本当に難しいということだ。素人がその辺の数値から出してきたグラフにはまず疑いを持ってみるようにしたほうがいいかもしれない。素人どころか専門家が過去何度もそのような大きな統計的誤解を招いている例を本書ではいくつも紹介している。

サンプリング一つとっても、偏りのないサンプリング手法がどれほど大切で、それがどれほど難しいかがわかるだろう。例えば、無作為な電話によるアンケートを行うとしても、何も考えずに行えば回答者は電話に出やすい人間や家にいる時間の長い人間に偏ってしまう。著者が言うには、携帯電話の出現がさらにそれを難しくしたのだそうだ。

また、警官の人数と犯罪数の因果関係を証明しようとしても、犯罪が多いから警官を増やした、という事実もあるため、僕らが思っているほど数値だけで簡単に証明できるわけではないのである。

冗長に感じる部分もいくつかあったが統計に関しては間違いなく理解を深められる。本書を読めば、世の中のデータの裏側や、落とし穴が見えてくるだろう。

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
5歳のときにダライ・ラマとして即位しその後中国の侵略によってインドに亡命しながらも祖国チベットの平和のために尽くすダライ・ラマ14世がこれまでの生涯を語る。

インドに亡命してから、多くの国の著名人達と出会って、祖国の平和のために尽くすダライ・ラマの姿からは、僕ら日本人が普段意識しない何か大切なものの存在を感じられるのではないだろうか。本書を読もうと思ったきっかけは、チベットを扱った映画「セブン・イヤーズ・イン・チベット」のなかの、神の化身ように人々から扱われているダライ・ラマと、最近メディアで見かける人のいいおじさんのようなダライ・ラマの間の隔たりに興味を持ったからである。本書を読んでその隔たりがすべて埋まったわけではないが、ダライ・ラマが仏教やチベットの伝統を変えてまでそこくに尽くそうとした結果なのだろう。僕らは、仏教に限らず、宗教における地位の高い人の人柄を想像するとき、考え方の偏った人間を想像してしまうが、少なくともダライ・ラマ14世に関しては、新しい考え方を偏見なく受け入れようという姿勢を持っているように見える。

また本書では繰り返し、中国のチベットに対する行いの非道な行いについて触れられている。近隣の国で起こったことにも関わらず、あまり自分が知らなかった事にも驚かされた。

そして、ダライ・ラマのこんな言葉に未来への希望を感じた。

わたしは、消費そのものを目的とする消費者優先主義が、われわれ人間は地球の資源を保護しなくてはならないという正しい判断に道を譲りつつあることに勇気づけられるのだ。これは非常に大切なことである。

あまりページを先へ先へとめくりたくなるような文章ではなく、多少読み進めるのに根気がいるが、ダライ・ラマという人間を知るのには大いに役立つだろう。

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オススメ度 ★★★★☆ 4/5
世界銀行副総裁として途上国の貧困と闘う著者が、これまでの経験を語る。

著者の人生を変えた瞬間を語った冒頭の章がもっとも印象的である。パキスタンの離村にホームステイに行った時の経験だそうだ。

「くる日もくる日も、同じことの繰り返し。気が狂ってしまうかと思う時さえある。
これは人間が営む生活ではない。動物のように、ただ体を動かしているだけ......
夢はただひとつ。
子供達が教育を受けて、こんな生活を繰り返さないように。けれど、それさえかなわない。
自分が病気になったら皆飢え死にする。
それが恐ろしい......」

あのとき、本気にスイッチが入ったのだと思う。自分という洋服を、それまで裏返しに着ていたようなあの感触は、今でも体に残っている。

人の人生を変えるきっかけはいろんな世界を見る努力を続けなていないと訪れないのだと改めて思った。その他にも、日本という枠にとらわれることなく活動する著者の視点からの新鮮な言葉や経験で溢れている。また、本書では何度もブータンについて触れられており、著者自身ブータンという国に非常に魅力を感じているのが伝わってくる。

何をすべきかではなく、すべきことをどう捉えるか。この違いが、組織を動かし、社会を変え、人の命さえをも救う......

自分の使命をしっかり意識してそれに向かって生きる姿が羨ましい。引き続き著者西水美恵子氏の他の本も読んでみたいと思った。

読みたくなった本
・「日本でいちばん大切にしたい会社」

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オススメ度 ★★★★☆ 4/5
インターネット上に様々なツールが出そろった今、僕らが働いているオフィスは本当に必要だろうか。確かに、実際に顔を合わせた方がインターネットを利用してチャットやビデオ会議をするよりもいいことはあるだろう、しかしそのメリットは、毎日満員電車に揺られて同じ場所に来るという労力に見合うものだろうか。また、僕らは同じ場所で働くことのデメリットをしっかり認識しているだろうか。リモートワークを実現するアメリカの企業、37シグナルズがその働き方を語る。

リモートワークの良さを語るだけではなく、現状のオフィスで働くことのデメリットを多く挙げている点が面白い。確かに、僕らは集中して仕事をしたいとき、平日のオフィスで仕事をしたりなんかしない。わざと人のいなくなった残業時間や休日を選んだりしているのが実情だ。なぜならオフィスではいろんな人が重要だろうと重要でなかろうと話しかけてくるため、長い間集中して作業する事ができないのだ。

オフィスワークの支持者達は、きっと見ていないと社員が働かなくなることを恐れているのだろう。そしてそれは、リモートワークが普及しない大きな理由の一つなのだ。しかし、本書ではそれを、「そもそも監視していなければ働かない社員を雇うな」と一蹴する。オフィスでもFacebookやYoutubeを見ている人はたくさんいるのだ。本書で書かれていることは誰もが経験からうなずける事ばかり、考えれば考えるほどいまのオフィスワークがばからしく見えてくる。

リモートワークを利用して、国境をまたいだオフィスを必要としない企業を作りたいと思わせてくれる。また、本書で紹介されているインターネットツールも参考になる。今後の働き方を考えるうえで抑えておきたい。

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オススメ度 ★★★★★ 5/5
社員の誰もが学習し、組織全体としても学習して発展していくというのは企業としての理想の姿であるが、多くの企業がそれを目ざしながらもできないでいる。本書はそんな学習する組織を作るために必要な考え方や、陥りがちな問題を丁寧に解説する。

印象的に残った話はいくつかあるが、そのうちの一つが「探求と主張のバランス」である。

最も生産的な学習は、通常、主張と探求のスキルが融合された場合に起こる。別の言い方をすれば「相互探求」である。つまり、全員が自分の考えを明らかにし、公の検証の場にさらすのだ。それによって、防御的な行動に走ることなく、弱みをさらけ出せる雰囲気が生まれる。誰も自分の意見の裏にある証拠や推論を隠しだてしない、つまり誰もが綿密な検証を受けるのを避けようとせずに意見を言う状態だ。

企業はどうしても大きくなるにつれ、生産性のない会議の数が増えていく。不要な会議を減らし、必要な会議はより充実したものにするためにあるべき姿はまさに「探求と主張のバランス」なのだろう。

また、「意識の変容」という章のなかで説明されている内容も面白い。多くの人は物事を線形に捉えようとするが、実際には環状であり、世の中にある多くの問題が、物事を環状に捉えられないゆえに解決されていないのだという。本書ではその例を「コップに水を満たす」という行為で説明している。

私たちが日常的な会話で「コップに水を満たしている」と言うとき、一方の因果関係「蛇口に載せた手が、コップに入る水の流量を調節している」を意味している。しかし「コップの推移が私の手を調節している」という説明も同じように真実であろう。

その他にも組織に関わる人に知って欲しいおおくの内容で溢れている。

企業にとって利益を上げることは、人間にとっての酸素のようなものである。十分な利益がなければ脱落する」。利益を目的とする企業は、「人生の目的は息をすること」と考える人のようなものだ。こうした企業は、大切な何かを失いつつある。

とてもすべてを理解したとは言えないが、組織のなかでの行動に大きく影響を与えるであろう内容がたくさん詰まっている。ぜひ、もう一度読んでみたい。やや英語の翻訳にわかりずらい点があるのでひょっとしたら英語で読んだ方が内容の理解はしやすいかもしれない。

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オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
オーストラリア人の登山家がチベットにたどり着く。そこでの生活からチベットの魅力に取り憑かれていく。

ブラッドピット主演で映画になった「セブンイヤーズ・イン・チベット」の原作である。冒頭で著者自身も「わたしには文才がない」と述べているように、映画のように面白く読者を飽きさせないような展開や描写ではなく、むしろ著者自身の体験をひたすら単調に綴った形になっている。そのため、冒険物語を期待して本書を手に取った人にとってはやや期待はずれかもしれないが、それでも著者の体験を通じてチベットという土地の魅力は伝わってくるだろう。

本書を読んで改めて興味を持ったのが、ダライ・ラマ14世の生き方である。最近ではテレビ出演までしているのダライ・ラマは、著者がチベットを訪れた1940年代には、チベットの人はダライ・ラマを直接見ることさえしなかったのである。チベットの平和や世界の平和を守るためにダライ・ラマが伝統よりも重要なこと、として決断した結果なのだろうか。

また、ダライ・ラマ14世の誕生の話を知ると、世の中には本当に「輪廻」というものはあるのかもしれない、と感じる。チベットや、ダライ・ラマについてもっと知りたいと思わせてくれる一冊である。

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オススメ度 ★★★★☆ 4/5
スマートフォンが一般普及して誰もがその場でインターネットに接続でき、調べる事ができるということになった。つまりそれは情報を記憶していることは重要ではなくなってきているということ、むしろ重要なのは情報をどのように伝えるか、効果的な情報の伝達方法である。そのような理由から、今後ますます情報の効果的な伝達手段であるインフォグラフィックは注目されていくだろう。

本書はそんな情報の視覚化をピクトグラムとインフォグラフィックで分けて説明している。前半部分は特に印象的な説明はなかったが、後半になると覚えておきたい考え方がいくつか出てきた。特に12の図解タイプ(サテライト型、ベン図、蜂の巣型、ツリー型、マトリクス型、2軸マップ型、テーブル型、チャート型、プロセス型、サイクル型、ピラミッド型、ドーナツ型)は図表を作るときには常に意識できるようにしておきたい。

また終盤では実際に著者がインフォグラフィックを制作する過程が描かれており、どのような考え方を経てすぐれたインフォグラフィックが作られるのかがよくわかるだろう。本書では良いインフォグラフィックの条件として次の5つを挙げている。

1.意味のある視覚要素を用いること
2.簡潔で、親しみやすく、わかりやすいこと
3.インパクトを与え、目を惹くこと
4.内容に価値があり、資料として保存しておきたいこと
5.見た人に考えるきっかけを与えること

こちらもぜひ覚えておきたい。さらに、グラフィックツールを使わずにインフォグラフィックを制作できるサイトなども紹介している。1つの制作手法として覚えておきたい。

参考サイトPiktocharteasel.ly

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オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ある田舎町の不動産の購入を考えているJames Comptonはその周辺で起きている不審火を懸念して、Maisieにその物件の調査を依頼する。そこは毎年都会から多くの人がHopの栽培に訪れ、ジプシー達も住む、地元民とそれ以外の人との不和を抱えた町だった。

Maisie Dobbsシリーズの第5弾である。ロンドンに拠点をすえて活動する女性探偵Maisieを描いており、毎回物語のなかで戦争の悲惨さを訴える点が本シリーズの特徴である。今回は田舎町を舞台としており、この町も多くの若者を戦争で失った悲しい町である。この町で、毎年同じ時期に発生する不審火をMaisieが調査することによって、少しずつ町の抱える秘密が明らかになっていくのである。

興味深いのは、Maisieが町のはずれに住んでいるジプシーたちと関わりを持つ点である。やがてMaisieの祖母も同じジプシーの出であることが明らかになる。ジプシー達から「救世主」とされたMaisie。1人のジプシーの奏でる美しい音色に触れて、Maisie自身も新たな方向に感覚を育んでいくのである。

また、植物人間となってしまったかつての恋人で死期が迫っていることを知り、ずっと避けていたその母親との再会を決意する事になる。5作目となる本作品だが、いまだに物語が力は健在である。本書が第1弾以外、日本語化されていないのが本当に残念である。

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
青々山学園高校に転校してきた背の低い生徒ビート。おしゃれが好きでかっこいい服を作ってクラス全体を巻き込んでいく。

高校を舞台とした青春物語、コンピューターオタクだったワンダやモデルをしていたミキなど、次々とビートの力に巻き込まれていくなか、やがて一つのブランドを立ち上げようとする。ちなみに、著者はmahaとなっているが、美術を題材とした小説でも有名な原田マハである。しかし、残念ながらほかの原田マハ作品にあるように、美術に関する深い知識のようなものを感じさせてくれる内容ではない。

一気読みしてすっきりしたい人向けの物語。

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