「マツダがBMWを超える日 クールジャパンからプレミアムジャパン・ブランド戦略へ」山崎明

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
品質はいいのに「安くていいもの」しか作れない日本の企業を嘆き、BMWやロレックスなどを例に、ブランドの育て方を語っている。

高級なブランドを作ろうと思ったら何をすればいいだろう。高品質なものを高く売ることから始めたらいいだろうか。おそらく高級なブランドを作るために考えなければならないのは、品質と値段だけではないのだ。ブランドが確立されれば、品質によらず商品が高く売れる。本書は自動車ブランドを中心い多くの例を交えながら、ブランドを語っている。

序盤では、海外のブランドに焦点をあて、それらがどのようにブランドを確立していったかを説明している。例えば、BMWは50年ほど前までは高級と呼ばれるレベルではなかったが、「運転を楽しむ」という個性を追求した結果、今ではメルセデスと並ぶブランドに成長している。そのほかにもロレックスやポルシェ、フォルクスワーゲンのブランド戦略を説明している。

中盤以降は、日本のメーカーに目を向けて、なぜブランド価値が上がらないかを説明している。トヨタがレクサスブランドを別に作りながら、やっていることが変わらないため、結局レクサスはトヨタと同じ大衆車という認識を持たれてしまっている。ブランドの価値を理解して、買収してもブランドの名を残すフォルクスワーゲンなどの海外ブランドと比較して、買収するとともに自社名に変更してしまうソニーなど(コニカミノルタ買収の件)日本企業をブランドの理解が乏しいと嘆いているのである。

そんななか、最後にマツダについて、唯一日本で海外ブランドと渡り合えるポテンシャルを持っていると推している。最近多方面でマツダへの注目の高さを耳にするので、今後にぜひ期待したい。

本書を読んで、海外の有名な自動車ブランドの多くが、実はフォルクスワーゲンの傘下に入っていることに驚かされた。ベントレーもブガッティもランボルギーニも現在はフォルクスワーゲンなんだという。この驚きがまさに、フォルクスワーゲンのブランド戦略がうまくいっている証拠と言えるだろう。ブランドを作るために大切なことがたくさん詰まっている一冊。

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「今すぐ本を出しなさい ビジネスを成長させる出版入門」水野俊哉

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
本を出版することをマーケティングと位置付けて、その方法を語る。

自分の考えを多くの人に届けるにはどのような方法があるだろうか。ブログやYouTubeなど選択肢がある中、出版という方法にも興味を持って、その進め方が知りたくて本書にたどり着いた。

本を出しても、それほど利益にならないことは多くの人がなんとなく感じていることではないだろうか。しかし、本を出すことにはマーケティングとして大きな意味がある。本書では、これまでのマーケティング手法が少しずつ通用しなくなった中、本を出すことのマーケティングとしての意味を語り、その手法を語っているのだ。

まず必要なことは、本を出す目的を明確にすることである。

テレビ・政界進出型
情報商材を売る・セミナーをする
副業から独立への道
趣味のブログ→夢の書籍化→人生の思い出作り
企画持ち込み→仕事の依頼→大ベストセラーを書くぞ
どうしても書きたいこと、伝えたいことがある

また、出版の3つのタイプを説明している。

商業出版
自費出版
カスタム出版

である。それぞれメリットもあればデメリットもあるので、出版の際はぜひ適切な選択をするのがいいだろう。

そして、最大の難関として出版社への企画の通し方について、多くのページを割いて説明している。大事なのは、テーマ選びと出版社の傾向の把握だという。人気のあるテーマとして本書では次のカテゴリを推している。

お金儲け
モテ・恋愛
結婚
自己実現
勉強法・読書術
時間術
開運方法

だれでも一つか二つ、語れることがあるのではないだろうか。

後半は、優れた目次の書き方や、作った本のプロモーションの手法について書いている。自分で買い占めてランキング上位に食い込む方法などは、倫理的にきになる人もいるかもしれないが、(個人的には許容範囲)出版した際は参考にしたいと思った。

全体的に、本書を読んで出版というものへのイメージがかなり見えてきた気がする。

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「雑談の一流、二流、三流」桐生稔

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
雑談の一流になるための方法をまとめている。オリラジの中田敦彦がYouTube大学で勧めていたのでたどり着いた。

雑談力の本もいくつか読んでいるので似たような話ばかりではあるが、それでも改めて意識したいと思えることに出会えた。

一流は、挨拶にツープラスする
一流は、踏襲話法で話をつなげる
一流は、ほめポイント+ワンポイントで話を膨らませる
一流は、Before → Afterをほめる
一流は、相手に腹を向ける
一流は、教えを乞う
一流は、見えなくなるまで感謝を伝える

こうやって、印象に残った内容を整理してみると、コミュニケーションの達人と崇める妻が、よくやっていることだと気づいた。僕自身も、普段からこころがけてみたいと思った。

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「最後の秘境 東京藝大 天才たちのカオスな日常」二宮敦人

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
妻の奇妙な行動によって藝大に興味を持った著者が、藝大生のインタビューをしながらその実態を描く。

もっとも興味深かったのは、音校と美校の文化の違いである。美術は、作った作品はそのまま自分の作品として存在し続けるのに対して、音楽はその音の流れている一瞬一瞬が作品である。また、美術では、作ったもの自体が評価されるのに対して、音楽では演奏するその人自身も舞台に上がる作品の一部だという認識の違いがあるのだそうだ。そのため、美校の生徒は時間にルーズだが音校の生徒は非常に時間に厳格で、美校の生徒は制作の為の作業着なのに対して、音校の生徒は常にハイヒールを履くなど、見た目に非常に気を使うのだそうだ。そんな、まったく異なる人種が共存する場所が藝大なのだという。

また、インタビューに答えた藝大生のこだわりも面白かった。口笛を極める学生や、からくり人形を歯車から作る学生など、どれも「なんのためにそんなことのために時間を費やすのだろう」と思ってしまうよう内容だが、その考え自体が、頭が凝り固まっている証拠なのだろう。そして、世の中の人がそうやって常識の範囲で物事を考えるからこそ、藝術という枠にはまらない分野が必要なのだろう。

どうやってそれまでの枠を壊すか。藝術とはそんな分野なのかもしれない。僕自身デザイナーという仕事をしており、どちらかというと頭が柔らかいほうのつもりではいるが、それでも多くの刺激をくれる一冊であった。

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「どこへ行く!?介護難民」稲葉敬子

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
フィリピン人の日本の介護事情について語る。
知り合いにフィリピン人の介護師がいるので、その仕事の状況や日本におけるフィリピン人介護師の立場を知りたくて本書にたどり着いた。
序盤は、フィリピン人を介護してとして受け入れるまでの、日本とフィリピン外交的経緯から日本で介護士として働くまでのフィリピン人が受けなければいけない教育過程など、現在の介護の状況を説明している。フィリピン人というと風俗などのイメージが付きまとってしまうが、本書を読んでフィリピン人が介護士としては非常に優秀であることがわかった。中盤からは現在日本で介護士として働くフィリピン女性たちの生活やそれぞれの持つ悩みについて書いている。彼女たちにとって介護士として働くために問題なのは、漢字の読み書きや職場の人間関係なのだという。
人材不足の日本の介護事情を解決するための手段として期待されるフィリピン人介護士ではあるが、僕らの持つ印象とは違って、問題となるのは彼女たちの教育よりもむしろ、受け入れる側の環境の問題なのだとわかった。日本人介護士に起こりがちな職場問題が、南の国で育った彼女たちには受け入れがたいのだろう。
後半はフィリピンで老後を過ごす日本人たちを紹介している。彼らの日本を出るという決断までの経緯と、現在の状況を読むと、フィリピンで過ごすのも悪くない気がしてきた。
本書は現在のフィリピン人による介護状況の概要を知りたいとう要求にはしっかり答えてくれた。
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「さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問から始める会計学」山田真哉

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
誰も買っているところを見たことないにもかかわらず、定期的に街をまわってくるさおだけ屋や、ベッドタウンにあるフランス料理店など、身近に存在する不思議な例で好奇心を刺激して、その流れで会計を説明する。
非常に有名な本ではあるが、今まで読んだことがなく、今回妻との会話のなかから「そういえばさおだけ屋ってなんで潰れないんだっけ?」という会話の流れで読むことになった。全体的には楽しく読むことができたし、雑談に使えそうなネタがいくつか増えたきがする。
もちろん会計について理解するには本書だけでは不十分で、そこは本書で著者も述べているように、他の専門書に譲っているということだ。そんな著者の狙い通り、会計学についてもっと詳細を勉強したいと思った。そういう意味では「難しくない会計学」という、本書が目指していた目的は達成できたのではないだろうか。
【楽天ブックス】「さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問から始める会計学」

「理科系の作文技術」木下是雄

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
読む人に伝わる作文技術についてわかりやすく解説している。
ブログなどで世の中に発信する機会は今後増えていくだろう。それによって今まで以上に伝わりやすい文章を書く必要があると考え本書を手に取った。
物語は、新入社員である新田文(にったあや)に先輩である梶山聡(かじやまさとし)が仕事のなかで文章の書き方を指導していく。どれも仕事でもブログでも文章を書くときに活かすために覚えておきたいことばかりである。
まずは

必要なことはもれなく記述し
必要でないことは一切書かない

当たり前ではあるが、どうしても不必要なことを書き込んでしまう。

目標規定文をまとめる

文章を書き始める前に、その文章を何を目標として書くのかをはっきりさせるということ。目標があることによって「必要なこと」と「必要でないこと」の判断がしやすくなる。

重点先行主義
概念から細部へ

どちらも文章を書く際によく言われることであるが常に意識していないと難しい。すべての人間が書いた文章をすべて読むとは限らないということを意識すべきなのだ。

逆茂木型を避ける

逆茂木型とは修飾句や修飾節の長い文章をのことである。日本語で何かを説明しようとするとどうしても修飾節が長くなりがちだが、意識して文章を分けたりすることで解決できる。
また、意見と言っても6つに分けられるというのはこれまで考えたこともなかった。

推論
判断
意見
確信
仮説
理論

書こうとしていることが、6つのうちのどれに当てはまるのか、これから意識して文章を書きたいと思った。
知識として持っていただけでいい文章が書けるわけではないが、今後意識していきたい。この本は「理科系の作文技術」という新書をベースとして書かれたということなので、そちらの本も近いうちに読もうと思った。
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「スペースシャトルの落日 失われた24年間の真実」松浦晋也

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
人を宇宙に運ぶという輝かしい使命よりも、むしろコロンビア空中分解事故、チャレンジャー爆発事故で印象的なスペースシャトル。そもそもスペースシャトルという計画はどのような目的でどのようにして始まったのか知りたくて本書を手に取った。
面白いのはスペースシャトルを思い描く時誰もが最初に思い描くであろうあの大きな翼は、実はほとんど意味がないということ。言われてみれば確かに、宇宙は無重力空間だからもちろん翼による揚力は発生するはずもない。地球に帰還するときに少しだけ役に立つのだという。むしろその翼がスペースシャトルを設計する上で一つの大きな足かせになっているのだという。人を運ぶのに必要な設備と、物を運ぶのに必要な設備は大きく異なり、その2つを同時に詰め込もうとしたために困難になってしまったのだ。
ちなみに、報道でスペースシャトルのことを聞いていると、チャレンジャーやコロンビアなどいろんな名前があるけど見た目的な区別がつかないと思っていたが、どうやら機体は同じで名前だけが異なるということ。
本書を読んでスペースシャトルは、そもそもの設計として大きく間違っていたことや、政府や地方経済に大きく影響を与えるほどの巨大プロジェクトは、大きな政治的圧力がかかるゆえになかなかうまく進まないことがわかった。しかし、月面着陸を果たしたアポロ11号や奇跡の生還で知られるアポロ13号に代表されるアポロ計画はどのようにすすめられたのだろう。次はアポロ計画について知りたいと思った。
【楽天ブックス】「スペースシャトルの落日 失われた24年間の真実」

「美術館で働くということ」オノユウリ

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
東京都現代美術館の仕事の様子を描いた漫画である。
先日読んだ原田マハの「弾幕のゲルニカ」が以前か気になっていた学芸員という仕事に再び
目を向けた。
本書を読み始めて知ったのだが、どうやら展覧会などで美術館に訪れたときに、部屋の隅に座っている黒い服を着た女性は学芸員ではないらしい。学芸員という職業の名前を最初に知ったのが、美術館で座っている人を指してのことだっただけにこれには驚かされた。実際には、美術館にのんびり座っている暇もないほど、毎日忙しく、好きな画家や好きな美術に本当に深く関われる仕事だとわかった。
前半は展覧会などを企画する学芸員の仕事の様子が描かれており、美術館に所属する学芸員たちは自分のすすめる作家の展覧会を提案し、企画し、作家と一緒になって展覧会を開催するのだという。だから、ときには学芸員の意見が作家の作品に影響を与えることもあるのだという。そう考えると、決してただ美術を展示するだけの受け身な仕事でないことがわかる。人生で経験できる仕事はわずかだけど、こんな生き方もしてみたかったと思わせてくれるだろう。
後半のコレクション担当もとても面白かった。コレクション担当とは美術館の所蔵する作品を決定、管理する仕事で美術館が所蔵する作品を決める際には、何を後世に伝えるべきかを職員の間で議論して決めていくのだそうだ。そうやって議論のすでに決定された所蔵された作品が貸し出されたりする際には我が子を送り出す親のような気持ちになるのだという。
学芸員という仕事について知りたくて手に取った本ではあるが、むしろ美術の奥深さ、展覧会、美術館など、美術に対する考え方もさらに深めてくれた気がする。
【楽天ブックス】「美術館で働くということ」

「幸せを届けるボランティア 不幸を招くボランティア」田中優

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
さまざまなNGO活動に長年関わってきた著者がボランティアについて語る。
「ボランティア」=「善い行い」とすぐに結論づけてはいないだろうか。実際僕自身もいくつかのボランティアを経験するまで、ボランティア活動に参加する人が多ければ多いほど世の中はよくなると信じていた。しかし最近では、本当に世の中の役に立つことであれば、その「善い行い」に従事する人にお金が支払われる仕組みができるはずだし、それができてこそその「善い行い」は継続できる、と信じるようになった。それでは実際ボランティアの現状とは、そこに長年関わってきた人から見るとどのように見えるのだろうか。そんな思いが本書に導いた。
ボランティアのいろんな側面について触れられているが、印象的だったのは「生活できない人を増やす仕組み」という考え方である。

「図書館ボランティア」で図書館を運営するようになると、その分だけ司書の人が正規の職員として雇われなくなることが多い。

無料で何かに従事することは、そのことに有料で従事していた人の生活の手段を奪ってしまうというのである。その他にも、ボランティアによって依存心の強い人を生み出す可能性があることも覚えておくべきだろう。災害ボランティアなどでは、被災者が、あとは自分でなんとかできる程度まで手伝ったら、適度なタイミングで撤収することこそ必要なの。つまり、ボランティアをすることを目的にするのではなく、本当に相手の未来まで考えて行動すべきなのである。
また、末尾にはいくつかのボランティア活動が「取り組みやすい活動ガイド」としてまとめられているので、今後の参考にしたい。これからいろんな活動に関わりたいと考えるなかで、役立つ視点を提供してくれた一冊。
【楽天ブックス】「幸せを届けるボランティア 不幸を招くボランティア」

「嫌われる勇気」岸見一郎/古賀史健

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
人生に悩む青年が「人は変われる、世界はシンプルである、誰もが幸福になれる」と言う哲人のもとを訪ね、その内容を問いただす。自分の人生を嘆きそれと比較しながら、哲人の話す内容はただの理想論と言う青年だったが次第にその考え方に心を奪われていくのである。

昨今アドラー心理学という言葉をよく聞くようになったので、比較的新しい考え方だと思っていた。しかし実際にはアドラーはフロイト、ユングと並ぶ心理学の三大巨頭なのだそうだ。

まず、興味をひいたのは原因論と目的論という考え方。例えば、とある引きこもりの男性がいて、ある人がその原因を幼少期の虐待にあるとする。これが原因論による考え方である。一方で目的論をベースにするアドラー心理学は次のように捉える。その男性は社会に出たくない故に幼少期の虐待を理由に引きこもることを選んでいる、と。アドラー心理学では常に「今」の「目的」に目を向けており、「過去に人はとらわれない」という考え方をしている点が興味深い。

他人の評価などのように、自分ではどうしようもないことに干渉するためにエネルギーをかけない、という点は、選択理論などでも語られ、最近では一般的な考え方になってきたが、それでも改めてアドラー心理学の中でそれを考え直すのも悪くない。

やはりもっとも印象的だったのは「貢献感で幸せを感じる」という考え方である。人はどうしても人や社会に貢献すると、金銭や感謝の言葉などのような見返りを求めてしまうが、そこから解き放たれて自ら満足することこそが幸せになる方法なのだ。
実はこの考え方、僕自身がこの1,2年至った考え方だったので、もう少し本書を早く読んでいればもっと早くここにたどり着いたのかもしれない、と思った。


【楽天ブックス】「嫌われる勇気」

「0ベース思考 どんな難問もシンプルに解決できる」スティーヴン・レヴィッド/スティーヴン・ダブナー

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
物事を解決するためには多くの知識や経験を必要とすることもあるが、一方で先入観を持たずに望めば他の人が見えない解決方法が見えることもある。しかし、先入観を持たずに物事を見つめるのは言うほど簡単な事ではない。本書はそのためのヒントを多くの事例を交えながら紹介している。
面白かったのはフードファイター小林尊(こばやしたける)がホットドッグ大食い大会を制覇するために行ったことを書いた章である。小林尊(こばやしたける)は前年25本だった優勝記録を一気に50本に伸ばして圧勝したのである。しかし、小林は元々大食いだったわけではなかったというのである。小林が行ったのは単純に優勝するための試行錯誤とそれを実現するために特化した練習なのだという。

たとえばホットドッグを端から食べろだなんて、ルールのどこにも書いていない。そこで単純な実験から始めた。食べる前にソーセージとパンを半分に割ってみたらどうだろう?こうすると、噛んだり呑み込んだりする方法に幅が出たし、口でやっていた仕事の一部を手に任せられてラクになった。

また、「コブラ効果」や「ナイジェリアの詐欺」の話も面白かった。これから行う事の結果を予想したり、多くの人の行動を少しでも自分の望む方向へコントロールしようとするときのヒントとなるだろう。
実は本書は「ヤバい経済学」と同じ著者によるもので、実はこの2冊の間には「超ヤバい経済学」という本もあるそうなのでそちらも後で読んでみたい。
【楽天ブックス】「0ベース思考 どんな難問もシンプルに解決できる」

「スピーチライター 言葉で世界を変える仕事」蔭山洋介

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
スピーチライターについてその仕事の内容と進め方について書いている。
スピーチライターという言葉が有名になったのは、やはりオバマ大統領の「Yes, we can.」に代表される魅力的なスピーチの数々による功績が大きいだろう。序盤はスピーチが歴史の重要な局面で重要な役割を果たしたいくつかの例を語り、スピーチライターが世の中に認められるまでの過程や、日本とアメリカのスピーチライターに関する意識の違い等を語っている。
中盤以降は実際のその仕事の流れを語っているが、その内容は必ずしも大それたスピーチやプレゼンの場だけでなく、日常の会話で役に立ちそうなものも含まれている。特に「共感を積み上げる」「反感は共感に変えることができる」というのは非常に興味深く、すぐにでも実行したいと思った。
終盤は実際に著者がプロジェクトでスピーチしている様子を詳細に描いている。もちろん、実際の企業などがわからないように多少言葉等は変えられているが、クライアントの気持ちや話し方にあわせて言葉を決めて行く過程や、実際に話す人と、スピーチ決定の担当者との意見の違いによって、内容を変えなければ行けないその過程は興味深い。言葉が持つ華やかさよりもずっと地味で根気を求められる仕事なのだとわかるだろう。
【楽天ブックス】「スピーチライター 言葉で世界を変える仕事」

「なぜ一流の人はみな「眠り」にこだわるのか?」岩田アリチカ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
なぜか日本では今でも、企業によっては眠らないで働いていることを自慢する人間がいる。その一方で新しい文化を取り入れ常に効率よく働くことを目指す企業や人たちは、眠りの質を高めることを重視し始めている。本書はそんな眠りに対する意識の変化と、眠りの質を向上させる方法について語っている。
僕自身5年ほど前に朝6時までに起きて勉強するという生活を続けている。本書を読む以前から眠りの重要性を理解しているので、眠りの重要性を説いた前半部分で特に参考になるような内容はなかったが、後半に描かれていた眠りの質を高める方法。例えばコーヒーを飲む時間や、腹式呼吸、寝る前の入浴の仕方などは、なかなか取り入れるのは難しいが参考になった。
朝型になると年収が上がる、とか、社長は朝型が多い、とか、キャリアにひもづけて眠りの質野向上の有用性を語っているところが少し残念である。年収やキャリアにそれほどこだわりのないひとにとっても、充実をした人生を送るためには眠りの質を上げることは重要なはずである。。
むしろ、相変わらず寝ないで働く事が偉いと思っている人こそ読むべき本だと思った。
【楽天ブックス】「なぜ一流の人はみな「眠り」にこだわるのか?」

「何を話せばいいのかわからない人のための雑談のルール」松橋良紀

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
雑談が苦手な人というのは意外にも多いようで、本書はそんな人のために雑談を巧くこなすための方法を語っている。
僕自身もどちらかというと合理的な生き方をしている人間なので、「会話は「情報交換」」という意識が強い。そのせいか、共通の趣味を持っている人には聞きたい事が山ほど溢れてくるのだが、初対面の相手には「あまりプライバシーに踏み込んでは失礼」という思いも手伝って、すぐに話す事が尽きる。そんな僕みたいな人間にとって、本書は耳の痛くなるような内容のオンパレードである。

雑談を好まないという方は、人との関わりを避けているとも言えます。というのも、雑談をしないということには、あるメッセージを相手に与えている可能性があります。
「あなたとは深く付き合いたくない。損得だけの関係にしたいんです。」
目的や目標など、雑談には必要ありません。あるとすれば、相手と親密さを深めるということだけなのです。

後半は、よく言われるオープンクエスチョンや、話し相手を4つのタイプ(視覚タイプ、聴覚タイプ、体感覚タイプ、理論タイプ)に分類して会話を組み立てる方法など、実践してみたいと思う内容がいくつか含まれていた。話を掘り下げるチャンクダウンや漠然とした方向へ展開するチャンクアップなども、意識して会話に臨んでみると面白いかもしれない。
【楽天ブックス】「何を話せばいいのかわからない人のための雑談のルール」

「ワールド・カフェをやろう! 会話がつながり、世界がつながる」香取一昭、大川恒

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ワールド・カフェの効用とその方法について説明する。
ワールド・カフェという言葉を知ったのは本当に最近のことである。会社で毎日繰り返されるミーティングのように、人々が協力して物事の解決策や新しいアイデアを生み出すというのは多くの場所で行われていることではあるが、残念ながらそれはなかなか旨く機能しない。多くの場合、上司や部下がいて、立場を気にしたり、同じ職場やコミュニティの人間が集まっていて最初から考え方に偏りがあったりするからである。ワールド・カフェというシステムはそれにたいする一つの解決策とも言える。
本書はそんなワールド・カフェの手法とそれぞれの参加者が意識すべき考え方が説明されている。ワールドカフェで行うべきなのは「ディスカッション」ではなく「ダイアログ」である、とする点が印象的である。この考え方は、世の中の多くの企業で行われているミーティングなどでも取り入れられるべきだと感じた。「ディスカッション」と「ダイアログ」の違いのいくつかを挙げると次のようなものだ。

ディスカッション
正しい答えがあるはずだ。それは自分の答えだ
目的は議論に勝つこと
相手の立場を批判する
相手の欠点と弱点を探す

ダイアログ
誰もが良いアイデアを持っているはずだ。それらをもちよれば、良い解決案が見いだせるだろう
目的は共通の基盤を探すこと
すべての立場の再評価
相手の強さと価値を探す

ワールド・カフェそのもの運営に興味がなくても、本書は話し合いに対する考え方に新たな視点をもたらせてくれるだろう。
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「古本屋開業入門 古本商売ウラオモテ」喜田村拓

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
長年古本屋を営む著者が古本屋の開業について語る。
別に古本屋になろうとしているわけではないが最近流行の「ビブリア古書堂の事件手帖」のシリーズを繰り返し読むうちに、古本屋の内情について知りたくなって本書に出会った。
もちろん本書の主な内容は、古本屋を営む上での心構えや店の構造やインターネットの利用方法などであって、単純に古本業への興味を持って読む人にとっては必要ない内容ばかりではあるが、それでもいろいろ今まで知らなかった事が見えてくる。
例えば、古本屋というのは、普通の本屋とは違って、扱っている本と出て行く本が巧くまわって初めてうまく機能するのだそうだ。そのためには、売る事よりも買い取りなど、本を巧く手に入れる事の方がはるかに重要だと言う。そして、人気のあった本ほど世の中に溢れてしまって古本としては価値が下がるのも当たり前のことではあるが面白い。
本書からはっきりと伝わってくるのは、本当に古本屋というのは本が好きでなければ勤まらない職業だと言う事である。
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