デザイナーの探し方

今回転職をするにあたって、20社ほどのIT企業やスタートアップの採用担当者と話を聞いた。そんななか驚いたのは、多くのスタートアップがデザイナーの探し方がわからないということ。探し方がわからないだけでなく評価の仕方、そして自分たちにフィットするのがどんなデザイナーなのかがほとんどイメージできていないということ。

まず、デザイナーを探している企業の担当者に知って欲しいのは、

高いデザイナーが、優れたビジュアルデザインをするわけではない

ということ。

また、

デザイナーはいくらもらえるかよりも何ができるか

にずっと興味があるということ。

簡単にデザイナーの種類を思いつく範囲で整理すると次ようになる。

30代後半から40代前半のデザイナーは、Webの黎明期で乱立する小さな制作会社で、デザイン、コーディング、プログラミングなどすべてをこなすことを強いられたWebクリエイター出身者か、DTP等の紙媒体を専門としてきてWebに転向したDTP&Webデザイナーのとちらかだろう。

Webクリエイター出身者は全体的に広くこなせるが、ビジュアルデザインの質はそれほど高くはない。一方でDTP出身はビジュアルデザインの質は高いがプログラムなどに対する苦手意識は強い。

Web業界が大きくなってから入ってきた30代前半までのデザイナーは、ビジュアルデザインを作る「デザイン部」、HTMLのコーディングやJavaScriptを組む「マークアップ部」、PHP等のコーディングを行う「開発部」というような、分業制のなかで経験を積むことが多いのでWebのビジュアルデザインで経験を積んでいることが多い。その過程ででHTML、CSSのコーディング程度は出来る人間もいるだろう。

UXという言葉が全盛の時代に業界に入ってきた20代のデザイナーは、ユーザー調査などの上流工程に関わるUXデザイナーか、アプリなどのデザインと比較的簡単なHTMLコーディングをこなするUIデザイナーのどちらかに別れる傾向があるようだ。

このようにIT業界に限って見ても世の中にはいろんな「デザイナー」がいるのである。自分たちの会社で求める人物像をはっきりさせないで採用を始めても、結局ミスマッチとなり、お互いに無駄な時間を費やすハメになるだろう。

もし、知り合いにデザイナーがいたり、知り合いの会社のデザイナーに話を聞けるなら、そのデザイナーに、どうやって自分たちの求めているデザイナーをさがせばいいか聞くのが一番いいだろう。

僕自身もデザイナーの採用をすることはあるが、ポートフォリオから採用すべきデザイナーを決めるのは至難の技である。小さな企業であれば、すぐれたデザインをするだけでなく、そのデザインを論理的に非デザイナーに説明する言語化能力を持ったデザイナーの存在は強力な力となる

というわけで結局は

近くのデザイナーに聞く

というなんとも参考にならない答えになってしまったが。間違いなく確実な方法である。なによりもデザイナーはデザイナー同士の繋がりを持っていることが多いし、デザイナーのコミュニティに属していることもある。

孤軍奮闘のデザイナーにオススメ High Resolution

世の中には組織の中で唯一のデザイナーとして働く人は多いだろう。そんな人は、エンジニアや社長やプロダクトオーナーと毎日戦いながら、その組織が提供するサービスを優れたデザインにするために孤軍奮闘しているのだろう。そして、弱気になった時ついつい

優れたデザインができないのは
周囲が悪いからだ

と思ってしまったりするのだ。これは悪い傾向である。(笑)

そんな人にとって有益なのは、「他の企業のデザイナーはどのように困難を乗り越えているのか」を知ることではないだろうか。

今日オススメするYouTubチャンネルのHigh Resolutionはまさにそのためのチャンネルである。Pinterest, Uber, Airb&bなどの有名企業のデザイナーたちにインタビューをしており、そのデザインに対する考え方に触れることができる。

1本1時間近くあるので、気軽に見ることができないが、重要な部分だけ短く切ったバージョンもあるようで、気分に応じて使い分けてもいいだろう。自分の場合一人で仕事している時、流し続けていたりしている。

個人的にはSpotifyのデザイナーRochelle Kingのデータドリブンデザインの話が印象的でした。これを聞いてすぐに書籍を購入して、社内にデータドリブンデザインの文化を根付かせ始めた。

もし、英語が苦手で「英語が難しくて理解できない」という箇所があったら個別に質問いただければ説明するので、ぜひトライしてみて欲しい。

UIデザイン アクションのUIを2つに分類する

UIデザインの手順方法を言葉にするのは簡単ではない。きっと世の中の多くのUIデザイナー、デザイナー同士レビューをしあったりした中で得られるた知識を、無意識に実行しているのだろう。それでも、いくつか言葉にできる考え方はあり、知っているだけで行き詰まった時の助けになる。今回は紹介したいのが僕自身がアクションのための要素(ボタン、入力フィールド)をデザインする中で、意識している考え方である。

それは、ある画面をデザインするとき、その画面のアクションを

・ユーザーがしたいこと
・ユーザーにさせたいこと

のいずれかに分類することである。

例えばAmazonのようなオンラインショップであれば、「ユーザーがしたいこと」は「商品を閲覧する」や「商品の評価を見る」ということで、「ユーザーにさせたいこと」は、「レビューを書く」(コンテンツを増やす)「シェアする」(ユーザーを増やす)などである。

「ユーザーがしたいこと」のためのUIを考えるとき、それはユーザー自身がそもそもアプリを使う目的なので、UIが多少見つかりにくくても、多少使いにくくても成立するのである。(もちろん作る側としての理想は、使いやすく、わかりやすくであるが。)

ところが「ユーザーにさせたいこと」のためのUIは、見つかりにくければまず使ってもらえないし、使いづらければすぐに離脱してしまう。つまり、より目立たせなければいけないのは、後者の「ユーザーにさせたい」行動のためのUIである。ただし、ここで気をつけなければならないのは、「ユーザーがしたいこと」をするためのUIを、「ユーザにさせたいこと」のためのUIが邪魔してしまってはならないということである。なぜなら、それはアプリ全体の不信へと繋がりユーザーの離脱へとつながるからだ。

こうやってそれぞれを1つづつ考えるとひどく当たり前のことに聞こえるかもしれないが、実際には「ユーザーがしたいこと」も「ユーザーにさせたいこと」も複数あることが多い。そんなときも、そのアクションはどちらのアクションなのか、しっかり考えるとあるべき姿が見えてくるだろう。

はじめに

気がつけば18年ほどデザイナーとして都内で働いてきました。理系出身でかつ英語もスペイン語を話せるというデザイナーとしてはやや特殊なバックグラウンドも手伝って、多くの企業から声をかけてもらえるようになりました。

そんな中、いろんな企業の採用担当者と会話する中で、日本において「デザイナー」という職業がまだまだしっかりと認知されていないと同時に、多くのデザイナーもまたどのような能力をつければそんな企業側のニーズに答えらるかを理解していないと気づきました。

その一方で、海外のデザインの情報に見れば、日本よりもずっとデザイナーの評価が高く、またそれを裏付けるようにデザイナーの活躍する範囲も単に美しいビジュアルを作る以上のものであることも気付かされます。

未だに明確なプランはないのですが、ここでは日本における「デザイナー」が、海外のような活躍をするために、なにかしら情報発信できればいいと思っています。