「ハチはなぜ大量死したのか」ローワン・ジェイコブセン

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
2006年から各地で報告されたミツバチの失踪事件。本書はそんななぞ名が事件の原因を探ることでハチや自然、その進化を語る。
なんという魅力的なタイトルなのだろう。この本を手に取る人の多くは、むしろ農業や昆虫に興味ある人間よりもミステリーファンなのかもしれない。僕自身もタイトルと最初のプロローグで一気に心を掴まれてしまった一人である。

2007年の春までに、実に北半球のミツバチの四分の一が失踪したのである。

序盤は、ミツバチの習性について説明している。コロニーと呼ばれる蜂のグループにおける、女王蜂や採餌蜂、貯蜜蜂の役割などである。それによってミツバチのコロニーがどれほどシステム化されたものだか理解できるだろう。
同時に、世の中の植物の多くが、蜂の助けを借りて受粉することによって果実をつけること。蜜蜂が消えたら、僕らの食卓に毎朝並んでいるものの多くが消えてしまうことを強調することで、本書が扱っている内容の重要性を訴えている。
さてCCDと呼ばれる蜂の失踪。その原因は新種のウィルスなのかダニなのか、それとも農薬なのか、携帯電話の普及に原因があるのか。信憑性のある説から荒唐無稽なものまで、各地であげられた報告やその矛盾点を説明し、また、その過程で過去に起こった、ウィルスやダニ、農薬に起因する事件を取り上げている。
話が時系列に進まないのでお世辞にも読みやすいとは言えない。そして物語が後半へと進むにしたがって不安になったのは。「なぜ大量死したのか?」の回答は本作品に最終的に書かれるのか?ということ。そう、残念ながら本作品にその答えはない。というよりも現実世界でもその原因未だわかっていないのだ。
ミステリーではなく現実の話なのだからそういう可能性があることを考慮すべきだったのだろうが、個人的にはがっくり来た。罪なのは本書のタイトルだろう。原書のタイトルは「The Collapse of the Honey Bee」の方が内容にはるかに合致している気がする。僕と同じような思いをする日本の読者は多いに違いない。本書は蜂の失踪事件をきっかけに、自然への人間の接し方について再度深く考えさせる方向へ意図された内容なのである。
最初からそういう目線で見れば、本書は非常に面白い。最終的に本書が訴えているのは「回復力」の重要性である。自然界で動物や昆虫が大量に死ぬのは理由があり、やがてその耐性を持ったものが生き残って種は強くなっていく。それを人間が下手に手助けすれば弱いまま種が残り、いつかそのしっぺ返しを食らう時が来るのである。自然界のバランスを保とうとする「回復力」の範囲内の変化であれば介入せずに見守ることも重要なのだと説いているのだ。

人は芋虫なしに蝶だけを欲しがるが、そういうわけにはいかないのだ。

本書を通じてミツバチのすばらしさを知るだろう。著者も書いているが、僕も本書を読んでミツバチを飼いたくなってしまった。
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