「ティム・クック アップルをさらなる高みへと押し上げた天才」リーアンダー・ケイニー

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
2011年にスティーブ・ジョブスがなくなって、多くの人がアップルは衰退していくと思ったことだろう。しかし実際にはその後CEOの座に就いたティム・クックによってアップルは世界初の一兆ドルの企業となった。ジョブスとは多くの面で異なるCEOはどのようにしてアップルを進化させたのかに迫る。

正直この本に出会うまで、ジョブスの後のアップルのCEOを知らなかった。もちろん、名前を聞いたことはあったのしてもすぐに思い出せるほど認識していなかった。しかし、実際にはジョブスの死後アップルはさらに発展したと知って、どのようにティム・クックがアップルを導いたのかを知りたくなって本書を手に取った。

本書でもっとも興味深いのは、ティム・クックのものの考え方である。

世界を我々が発見したときよりも良い場所にして後に残す

これはティム・クックが繰り返し引き合いに出し、今やアップルという企業自体のものの考え方にもなっている言葉である。実際、アップルはジョブスの死後、一気に環境や自分たちの関係会社のケアや、慈善団体への寄付など、世の中に良い行いをする方向へ大きく舵をきったのである。また、ティム・クックは同性愛者であることを公開しており、それゆえにジェンダーマイノリティでや、アジア系、メキシコ系などの少数派に対する理解が強い。それも企業としての強みになっているのだろう。

本書のクライマックスは、サンバーナーディーノで14人の死者を出した狙撃事件の容疑者のiPhoneのロックの解除を巡ってFBIと争った場面である。悲劇的な事件を起こした容疑者の捜査という正義を理由に、iPhoneのロック解除の権限を求めたFBIに対して、それによって引き起こされるユーザー情報の危険性を懸念してアップルは拒否するのである。

必ずしも正しいことは、多くの人の支持を集めるわけではない。それでもアップルの決断は、やがて理解され多くの人の支持を集めるのである。

ティム・クックによって、すばらしい製品を生み出していたアップルが、さらに人格的にも優れた企業となったのだと感じた。

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