「初恋」中原みすず

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
親戚の家で世話になっていたため肩身の狭い思いをしながら成長し、どこにも居場所を見つけることのできなかった高校生のみすずは、立ち寄った喫茶店で新しい仲間とで会う。そしてそれはやがて「権力への挑戦」として3億円事件へとつながっていく。
宮崎あおい主演の映画になった作品で、映画は観ていないがあまり評判がよくなかったのは覚えている。それでも1960年代と3億円事件を舞台にした独特な雰囲気はその映画のプロモーションCMからも感じることができた。
物語自体はそれほど大きく予想外の展開が起きるわけではない。ジャズ喫茶で仲間と出会うことによって、みすずがやがて3億円事件に関わるまでの過程とその後を描いている。
世間の大きな流れや、年齢とともに衰えていく行動力。みすずを含めた若者達の、大きな流れに飲み込まれていく様子を描いているようにも感じる。恋愛小説と見る向きもあるだろうが、個人的には、一人の思春期の女性が、世の中を理解し、ある程度割り切りながらも受け入れていく・・・、そんな大人になる過程を描いているように思える。
好みが分かれる作品だとは思うが、淡々と進むその物語の合間にただよう独特な空気。思いのほか強く心に残った。
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