「自分を動かす言葉」中澤佑二

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
日本代表主将までのぼり詰めだ著者はその徹底した生き方の力の源の一つとして「言葉の力」を挙げている。イビチャ・オシム、岡田武史、貴重な出会いのなかで著者が授かった言葉を紹介している。
本書のなかではいくつも印象的な言葉が紹介されているが、なかでも印象的だったのはこの言葉。

人生において『成功』は約束されていない。しかし人生において『成長』は約束されている

田坂広志さんの「未来を拓く君たちへ」のなかで紹介されていた言葉だそうである。また、この言葉は以前も聞いたことがあるような気がするが、マジックジョンソンのこの言葉も印象的である。ちょっと長いのだが全文引用させていただく。

『お前には無理だよ』と言う人のことを聞いてはならない。
もし、自分で何かを成し遂げたかったら、できなかったときに
他人のせいにしないで、自分のせいにしなさい。
多くの人が、僕にも『お前には無理だよ』と言った。
彼らは、君に成功してほしくないんだ。
なぜなら、彼らは成功できなかったから。
途中であきらめてしまったから。
だから、君にもその夢をあきらめてほしいんだよ。
不幸な人は不幸な人を友達にしたいんだよ。
決してあきらめては駄目だ。
自分のまわりをエネルギーであふれたしっかりした
考え方を持っている人で固めなさい。
近くに誰か憧れる人がいたら、その人のアドバイスを求めなさい。
君の人生を帰ることができるのは君だけだ。
君の夢が何であれ、それにまっすぐ向かって行くんだ。
君は、幸せになるために生まれてきたんだから

一方で「この言葉のどこに動かされたんだろう?」と思うような言葉も紹介されている。きっと言葉の重さは、その言葉を構成する単語や文と同じくらい、その言葉を与える人や、その言葉を与えられる状況に影響されるのだろう。そして本書で言葉について語るなかで、中澤の支えになった人々との交流が描かれる。悔しさや悲しさや情けなさや優しさ、そういったものすべてを自分の力にしてきたことが伝わってくる。
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「中澤佑二 不屈」

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ドイツワールドカップ、南アフリカワールドカップなど、日本代表だけでなく、横浜マリノスでの出来事など、そのサッカー人生を通じて、日本打表DF中澤佑二の知られざる一面を描く。
僕が彼について知っているのは、テスト生からヴェルディのレギュラーをつかんだということと、ドイツワールドカップ後に代表引退を決意したにもかかわらずバスケット界のパイオニアである田伏勇太と出会って代表復帰をきめたことぐらいだろう。本書はその認識を補いながらも、そのストイックで孤独な生き様を存分に見せてくれる。
本書は3つの章に別れていて、2,3章はそれぞれドイツ、南アフリカワールドカップを中心に描かれている。個人的には1章の「プロへの挑戦」が印象的である。特に高校時代のひとり「プロになる」というモチベーションのもとでサッカーに接するうちに、周囲から孤立していき、それでも目的のために信念を曲げない姿にはなんか共感できるものがある。
文中で中澤が影響を受けたとして引用されている言葉にはどれも重みを感じる。

多くの人が、僕にも「お前には無理だよ」と言った。彼らは、君に成功してほしくないんだ。なぜなら、彼らは成功できなかったから。途中で諦めてしまったから。だから、君にもその夢を諦めて欲しいんだよ。不幸な人は不幸な人を友達にしたいんだよ。
人生に成功は約束されていない。でも成長は約束されている。

本書でもドイツワールドカップを大きな衝撃と語っている。中田英寿の「鼓動」でもそうだし、数多くの日本のワールドカップを描いた書籍でも同様に選手同士の内部崩壊が招いた悲劇と語られているドイツワールドカップは、本書でも中澤だけでなく、宮本恒靖の目線からも語られており、興味深いものとなっている。
そして最後は記憶に新しい南アフリカワールドカップ。その内容からは決してそれが外から観ているほど輝かしいものではなかったことが伝わってくるだろう。チーム崩壊寸前の状態にありながら、4年前のドイツワールドカップの経験者たちがその失敗を糧に、崖っぷちの状態からチームを結束させた結果だとわかる。

言いたいことを言うのと、チームのためを思って言うのではまったく意味合いが異なる。個性は一定の規律のある組織の中にあって初めて力を発揮するものであって、ルールを無視すれば、単なる我が儘と取られても仕方がない。

それでも最終的にカメルーン戦のゴールで波に乗って、デンマーク戦ですばらしい試合をしたあのチームのなかにいて、あのチームとしての一体感を味わえた中澤がうらやましくてたまらない。

チームの一体感というものを初めて、強烈に感じた。一人のゴールをチームのみんなが祝福している。心の底から突き上げていくような喜びをだれもが共有している。四年前のドイツでは決して訪れなかった瞬間だった。このチームはいける。この勢いでいける。そう確信した。
仲間たちとの共鳴。すべてはこのためにやってきたのだと、心の底から思った。

中澤のサッカー選手としての成功を語るときに、「彼は努力だけで上り詰めた」という人が多いのかもしれないが、本書を読めばそうは思えない。人生の要所要所で彼は運命的な出会いによって救われている。見習うべきはそんな偶然が近づいてきたときに、それを掴み取る努力をいつの日も怠らなかったことだろう。
「日本代表」とか「ワールドカップ」とかそんな壮大なジャパニーズドリームだけでなく、何かを達成する上ではそれがどんな目標であれそんな意識は大事なんだと思えた。
余談だが、本書で中澤は自身のベストげーむとして、ドイツワールドカップ前のドイツ戦をあげている。中田英寿も「鼓動」のなかで、ドイツ戦での柳沢とのプレーが最高のプレーと語っている点が印象に残った。どうやらあの試合はサッカーファンにとっては見逃してはいけない試合だったらしい。
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