「流星ワゴン」重松清

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
永田カズオ38才、妻ともうまくいかず、受験の失敗によって荒れた息子の家庭内暴力が日に日に増す中、ふと考えた。

死んじゃってもいいかなあ、もう

そこに一台のワゴンがやってきて、窓から顔を出した男の子が言った。「早く乗ってよ。ずっと待ってたんだから。」そして、そのワゴンはカズオを不思議な世界に連れて行った。
子供の頃、父親は大きく、そして言うことは常に正しい。そんな存在だった。もちろん怒られたこともある。今思うと時々理不尽な怒られ方をしていたようにも思う。それでも、あの頃の僕には度胸も気持ちを表現する言葉も足りなくて、自分の思いをぶつけることができなかったが、たくさんの言葉を身に付けた今ではいろいろ言い返せるかも知れない。もう一度あの瞬間に戻って自分の気持ちをぶつけてやりたい。そんな考えを持ったことがある人って意外と多いのではないだろうか。でもそれは決して実現することはない。
この本の中ではそんな実現することのない状況を見せてくれる。ワゴンでいろんな場所に連れて行ってもらったカズオは自分と同じ38歳の父親と会う。彼はそこでいろんな思いをぶつける。息子の素直な思いをぶつけられて戸惑う父親。そして、父親になって息子との接し方に戸惑っているカズオ。そんな二つの親子の関係を対比して子供の思いや父親の思いを伝えてくる。これから父親になるひとや子育てに悩む人にはなにか手がかりになるのかもしれない。
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「ナイフ」重松清

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
イジメをネタにした短編集である。イジメの当人。イジメの被害者の父親など、いろいろな視点の物語が集まっている。イジメを受ける当人よりも、周囲の人間の反応の描き方がリアルである。周囲の人はみんな、助けが必要だと感じ、それをすることでさらにイジメを増長するのではないか。と何もできない自分に怒りを葛藤するのである。
イジメという問題は、僕にはもう縁がない。そう思っていたが、自分の息子や娘がイジメにあったらどうするか?たぶん何もしないだろう。それが一番いいと思うから、しかしそれでいいのだろうか。残念ながらこの本の中にその答えはない。
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「エイジ」重松清

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5

第12回山本周五郎賞受賞作品。
昨日まで普通にクラスメイトとして過ごしていた一人が、通り魔だった。主人公のエイジは自分とその友人との間になんのちがいがあるのか考え、悩む。
僕自身がこの本のエイジに近いのか、この本の作者に近いのかはわからないけれど、あまりにもドラマチックに描かれる学性生活に違和感があることは否めない。「キレる」という言葉がたくさん出てくるが、少なくとも僕が学生のときにはそんなに人は簡単に「キレ」たりはしなかった。今の大人が考える中学生のイメージはこんなものなのか・・・それとも実際今の中学生はこうなのか?いや、やはり決してそんなことはないだろう、そういう人がいるのも事実なのかも知れないが、一部の話題性のある中学生を取り上げて、「今の中学生はこんなやつらだ」そう語るのはやめるべきだ。
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