「失われた町」三崎亜紀

オススメ度 ★☆☆☆☆ 1/5
数年に一度起きる「町の消滅」。そんな不思議な世界で人生を左右される人々を描く。
登場人物の名前や地名などから、途中まで日本を舞台にしたとした物語と思って読み進めていたのだが、途中からどこか別の惑星の話のようなファンタジーのような雰囲気さえも感じた。にもかかわらず最終的に結局どこだかわからない。空想の世界の話であれば最初から登場人物の名前をカタカナにしてくれればわかりやすいと感じた。
そもそもの「町が消滅する」という常識はずれな設定は、本作品の根底となるテーマらしいから目をつぶるとしてもそれ以外も展開も登場人物たちの判断もスピーディすぎて、台詞も行動もすべてが現実感に乏しく感情移入などできるはずもなく、きっと著者の中では素敵な物語が展開しているのだろうが、読んでいる側としては、登場人物たちが、物語の中で頑張れば頑張るほどその薄っぺらでありきたりな行動に冷めていってしまった。
人々の一生懸命生きるさまや、運命に翻弄される姿、出会いや別れの感動を伝えたいならなにも「町が消滅する」などという設定じゃなくても、戦争だったり、災害だったりと、いろいろ描き方はある気がする。最終的になぜ、「町が消滅する」という舞台設定にしたのかの著者の意図も見えてこない。たびたび語っていることだが、常識外れの舞台設定をした場合、その違和感を覆い隠すぐらいの感動や面白さを提供しなければただの駄作で終わってしまう。今回はその悪い例。
読むのがつらくてあと何ページあるんだろうとなんども残りのページ数を確認してしまった。著者が好き勝手に書いただけという印象。残念ながら本作品には昨今の読書離れの一端を見た気がする。いろいろ批判してしまったが唯一、文章の紡ぎ方は非常に綺麗だった。(だからこそ物語の失望が大きかった)。
とはいえ、広い世の中にはこういう物語が好き、という人もいるのかもしれない。
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「夏の名残りの薔薇」恩田陸

オススメ度 ★☆☆☆☆ 1/5
山奥のホテルで毎年開催されるパーティ。毎回同じメンバーが招待されて、食事時には不思議な話が語られる。そんなホテルで宿泊者達が織り成す物語を描いた作品。
残念ながら理解できない作品だった。死んだはずの人がその後なんの説明もなく普通に生きていたり、と。物語中でたびたび引用される太字で書かれた文章も最後まで理解できなかった。恩田陸という作家がしばしがこういう手法に走ることは知っているし、「ライオンハート」や「三月は深き紅の淵を」もその類の作品で僕にはさっぱり理解できなかったのだが、今回も同様にさっぱりだった。
ひょっとしたらミステリーを読み漁っている人には何か著者とシンクロする部分があるのだろうか。それがないのであれば著者の自己満足にすぎないと思うのだが、こういう作品に対してあたかも「自分にはわかった」的なことを言い出す評論家がいそうな気がする。そして「あれが理解できる人が本当のミステリーファン」とか。僕に言わせればそれは著者を甘やかしているに過ぎないと思うのだが、とりあえず理解できた人がいるなら説明をして欲しい、というのが正直な感想。
きっと僕のような理系人間には好かれない作品なのではないだろうか。


コケティッシュ
なまめかしい、あだっぽいの意味で女性の粋な美しさや魅力を表現することば

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「リアル鬼ごっこ」山田悠介

オススメ度 ★☆☆☆☆ 1/5
自分と同じ「佐藤」姓を名乗る人の多さに辟易した国王は、「佐藤」姓を減らすために、「佐藤」さんを捕まえる鬼ごっこを政策として実施することを決めた。いわゆる大量虐殺である。大学生の佐藤翼(さとうつばさ)もその対象となった。
山田悠介という作家の名前は以前から書店でよく見かける。どの作品もかなり現実離れした設定が多く、そのためなかなか手に取る気にならなかったのだ。現実離れした設定といえば、幽霊を主人公とした、高野和明の「幽霊人命救助隊」や、クラスで殺し合うことが国の政策となっている高見広春の「バトルロワイヤル」などが思い浮かぶ。
それを踏まえて考えると、現実離れした舞台設定をするというのは、読者離れを引き起こすリスクを犯してでもそれ以上に訴えたい何かがある。と考えることができるのではないか。今回この作品を手にとったのはそんな思いからである。
しかし、残念ながら数ページ読んだだけでそんな考えをもったことを後悔した。登場人物達の行動も心情描写もすべてが薄っぺらい。死を間近に控えた人間達、そしてその周囲の人間達がこの作品で描かれているような行動をすると、著者が本当に信じているとしたらなんと乏しい想像力なのだろう。リアルさのかけらもない。
物語の中の目線もいつまでたっても定まらず、誰の目線なのか誰の気持ちなのか非常にわかりにくく、素人が書いている文章を読んでいるようだった。各自好みがあるのでこの作品を「駄作」と断言することはしないが、この著者の本を読むことはもうないと思う。
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「ゴサインタン 神の座」篠田節子

オススメ度 ★☆☆☆☆ 1/5
第10回山本周五郎賞受賞作品。
「女たちのジハード」が非常に面白かったので手に取った。内容としては主人公である結木輝和が結婚したネパール人のカルバナがその後次々と奇妙なことを起こすようになる。というもの。ストーリーとしてはわかるのだがなんといっても話の展開が遅くて何度本を閉じようとしたかわからない。
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「チェーンレター」折原一

オススメ度 ★☆☆☆☆ 1/5
ホラーの夏も近付いてきた。鈴木光司の「リング」を初めて読んだときのような感覚を得たいと考えて手にとったこの本。残念ながら期待は裏切られた。
内容は「不幸の手紙」の発展版である「棒の手紙」が送られて来る話。同じ文面の手紙を5人に送らないと棒がやってくるというものだ。残念なのはこの話の中で非現実が存在しないかのように書かれていながら最終的にはそれが許されているという、はっきりしない世界で展開しているからである。
最初から、超能力などの非現実な力が認められているストーリーであればそのまま受け入れられるのだが、一生懸命犯人を探した挙げ句、最期はそう来るのか・・・と、残念である。言ってみれば金田一少年が密室殺人事件の謎が解けなくて悩んでいたら、実は犯人は山村貞子(リング)で、殺人の方法は「呪い」だった・・というぐらい違和感の残る作品であった。