「心を整える 。 勝利をたぐり寄せるための56の習慣」長谷部誠

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
日本代表長谷部誠(はせべまこと)。華麗なパスを送るわけでも強烈なシュートを放つわけでもないのに日本代表の主将まで登りつめた男。その視点からサッカーに対する考え方や日々の生活を語る。
なんとも 日本人らしいサッカー選手。読み始めて、いやむしろ読み始める前から長谷部に対して僕の持っている印象はそんなだった。そもそも「日本人らしい選手」とはどんな選手だろう。たとえばマラドーナのように海外ではサッカーさえうまければ認めてもらえる国もあるが、日本はそうではない。中田英寿、宮本恒靖などがいい例だろう。
サッカーだけが上手くても決して驕り高ぶることなく、サッカーどころかスポーツに限らずすべてに目を向けて、勤勉すぎるまでに向上させる。僕の思う「日本人らしいサッカー選手」とはまさにそんなイメージである。そして多くの「日本人らしいサッカー選手」のなかでも、長谷部に対しては、テレビ出演のときの応対やその風貌からか、特に謙虚なイメージを持っていた。
本書を読み始めてもそんな彼に対するイメージは崩れることなく、むしろより強固に固まっていった。本書のなかで彼がなんども強調しているのは、一人の時間の大切さ、読書の大切さ、常にフラットでいることの大切さである。半分も読まないうちに、ものすごく僕自身の考え方をと共通する部分があると感じた。遅刻に対する考え方などまさに寸分たがわず同じ。

遅刻というのは、まわりにとっても、自分にとっても何もプラスを生み出さない。まず、遅刻というのは相手の時間を奪うことにつながる。

僕より7歳も年下の人間と考えが共通することを喜んでいいのかよくわからないが、日本代表にまでなるほどの男と共通する部分が多い、と前向きに受け取ろうと思う。全体的に特に新しい考え方はほとんどなかったが、多くのことを再確認させてもらった気がする。ちなみに「これも自分と同じだ」と思った考え方のなかで特に驚いたのがこんな考え方である。実は本書を読むまで自分でも意識してなかったのだが。

僕は何が起こっても心が乱れないように、普段から常に「最悪の状況」を想定しておく習慣があるということだ。

長谷部の言葉を僕自身の感覚で補足すると、常に「最悪の状況」と「最高の状況」を想像しておく、ということになるだろう。そうすることによってすべてが予想の範囲におさまり、決して動じることなく常に冷静に最高の決断ができる。実は結構なこれによって、リアクションが薄かったり冷淡に見られたりすることもあるのだが、とにかく僕にとっては非常に理解できる感覚である。
終盤ではワールドカップや、優勝したアジアカップについても語っている。

一度は心が折れそうになった。けれど、まわりのチームメイトを見て、そしてベンチで手を叩いて励まそうとしてくれている仲間を見たら、こいつらとだったら試合をひっくり返せるんじゃないかと思った。

若干サッカーや試合に関するエピソードが少なく、普段の生活や日々の心がけ、といった内容に重点が置かれているため、多くの人が楽しめるだろう。全体を通して、僕にとっては共感できることばかりで、一つ一つの言葉がやけにしっくりくる。しかし、逆に、女性や無秩序に生きることに重みをおく人間が読んだらどんな感想を抱くのだろう。
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