「張り込み姫 君たちに明日はない3」垣根涼介

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
リストラを請け負う企業の面接官として働く真介(しんすけ)の物語の第3弾。今回も真介(しんすけ)の退職を促す面接によって、人生の岐路に悩む人たちの物語がリアルに描かれる。
本書で退職を勧められるのは、英会話学校、旅行代理店、自動車ディーラー、写真週刊誌で働く人たち。いずれも業界的に長くとどまる場所ではないところが共通している。
英会話学校の章では数年前のNOVAの倒産を期に浮き彫りになった英会話学校の内情、そしてインターネットの普及が逆風となっている現状を描いている。僕自身英会話に長く興味をもっているため特に楽しむことができた。
旅行代理店の回ではその業界の利益の少なさと残業の多さ。とはいえ本作品でもっとも印象深かったのが、この章でその退職を勧められることになった男。古屋陽太郎(ふるやようたろう)である。7年間、その会社に籍を置きながらも会社に対する忠誠心などまったくなく、その考え方は非常にドライで、個人的には非常に共感できる。
続く自動車ディーラーの章や写真週刊誌の章でも、人生の岐路にたった彼、彼女が、自分のやりたいことを再確認し、周囲の人に助けられて決断し、新たな一歩を踏み出していく様子は涙を誘うだろう。
毎回思うことだが、このシリーズを読むと転職がしたくなる。
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