4月の頭からSecond Lifeのベータグリッド(テスト環境)でボイスチャットの試験運用が開始されている。ようやく先日試してみることが出来た。
感想はというと、試験運用ということでまだまだ不安定ではあるが、予想以上に可能性を感じさせるものだった。音質もMSNよりいいような気がするし、なんといってもSecond Life世界の距離に応じて人の声が大きくなったり小さくなったりするのが新鮮である。ちなみに声でリアルの性別がわかってしまうことから、Second Life内で異性を演じていた人にとっては憎むべき進歩なのだろう。
英語のヒアリングにまだついていけないが、ある程度会話を続ければそのうち理解できるようになるだろう、と楽観的。しかし、こんな面白い世界を無料で提供してもらってしまったら、ピンクのウサギ達にとっては脅威に違いない。
SecondLife(SL)ネタが続いてしまって申し訳ない。恐らく何を言っているかさっぱりわからない人もだろうが、それだけ刺激的な世界だということである。
最初からこんなことを期待してSLを始めたわけではないが、どうやらWEBサイトのような役割をこれから果たすのかもしれない、と、かすかな期待を胸の中に芽生え始めている。そんな未来が来るという前提で、企業のためにSLをどう利用すべきか。考えていることを書いてみようと思う。
もちろん企業として利用するためにはSLを宣伝の場所として使用するのだろう。現在でも多少の儲けは期待できるが、まだとても「利益」などと呼べるようなものではないのだから。
そうなると当然多くの人(アバター)の目に触れなければならない。立地条件や土地の使い方、建物の建て方などうっかり現実と錯覚して失敗してしまうことも多々あるだろうし、逆に現実では不可能な方法を使って効果的に宣伝することもできるかもしれない。
まず立地条件と建物の建て方についてであるが、SLの世界を旅していると気付くことだろう。すべての人はテレポートをすることができるために、交通の便は特に大きな意味を持たないのだが、少なくともSIM(※1)は4つ(つまり512メートル×512メートル)はないと、MAP上では小さすぎてその場所を見つけにくく、見つけにくければその場所に偶然立ち寄ることもない。
さらにその土地に降り立ってもらうための手法もいくつか考えられる。多くの人はMAP上でその場所を確認してからテレポートするわけだが、MAP上で判読可能なぐら大きな文字を土地の上に書いておくという手法も一部では行われている。「その街の景観が損なわれる」と考えるかもしれないが、ファントム(※2)にして、はるか上空に設置しておけばそんな心配も必要ないだろう。
建物についても最初は気合を入れて、しっかりとしたつくりの建物にしがちである。未だに屋根や壁でしっかり囲んである建物をときどき見かけるのはそのせいだろう。雨や雪が降ろうとも汚れることも濡れることもないSLで、そして、多くの人が歩きではなく、飛んで移動するこの世界で、建物を屋根と壁で覆うなどの行為は、ただ入りにくくするだけである。ウェブ流に言うならアクセシビリティが低いというこで、せっかくその場所を訪れてくれた人(アバター)はさっさと他の場所にテレポートしてしまうことだろう。
ちなみに多くの人は、人が集まるところに魅力を感じるようだ。そのため、多くのカジノなどはマネーチェアー(※3)を設置するなどして常に人が集まるような工夫をしている。おそらく、これから大量のアバターをPCの数だけ作って、自分の企業のSIMに常駐させるなどという手法を使う企業も出てくることだろう。このような手法はとても感心のできるものではないし、いずれ取り締まるための登録手続きの厳格化がされるだろうが、今できることを効果的に宣伝の役に立てることもまた選択肢の一つなのかもしれない。
思い返せばウェブサイトの創成期、大手検索エンジンYahooは登録するとその場で登録することができた。一週間ほど「New!」マークとともに上部に表示されて、その後もアイウエオ順で並ぶので「0」や「あ」で始まるサイト名で登録を繰り返したりしたものだ。あの時代にいち早く登録をしてしまった企業は、登録の審査が厳しくなって後発の企業が一生懸命登録申請を繰り返しているときに、顧客を確保できた。今の無法地帯気味なSLの世界もそれに似ている。
そのように今だからできてしまう手法は他にもいくつかある。もう一つ例を挙げるなら、勧誘IM(※5)である。メールの時代がほぼ飽和して、迷惑メールが溢れ返っている現実世界を見ると、SLの世界でいずれ迷惑IMが溢れかえらないわけがない。そして、その手法を使う企業が増えてくると、いずれ「登録した友人からしかIMを受け取らない」という設定ができるようになるに違いない。言い換えるなら勧誘IMなどの宣伝手法が使用できるのもそう長くないかもしれない。ある程度の反感を覚悟したうえなら試みてみるのもいいかもしれない。
つまり、現実世界を見本にしない手はないということだ。そうなると顧客管理ははずせない。なにしろSLでは名前さえ分かっていればプロフィールを見ることができるのだから。すでに一部のカジノなどでは行われている。スクリプトを用いてその場所に立ち寄った人の名前をリストとして保存すること。ひょっとしたらその名前をもとにプロフィールをコピーしてどこかのファイルにまとめている企業もあるのかもしれない。
さて、では実際に今、進出している企業について語ってみる。宣伝をするためには魅力的な商品を格安、または無料で提供するという手法は当然である。そういう意味では日産は車を配布しているし。その一方でトヨタは車をL$300で売っているとか。すでに一部でかなり反感を買っているらしいが。ちなみにリーボックもスニーカーをL$50で売っていた。なにも大企業がたかだか一台、一足、L$300とかL$50で反感を買っても逆に損だろうと個人的には思う。
そんな配布品について思うこと。確かに車はかっこいいし、乗れるとしばらく遊んでしまうものだ。とはいえ、それはすぐに飽きる。スニーカーはしばらくはいているかもしれないが、だれも人の足元などそんなに熱心に見ないものだ。
ではどんな配布品が宣伝効果が高いだろうか。そこでお勧めしたいのがキーボートと呼ばれるもの。チャットのために文字を入力するときだけそのアバターの前に現れて、入力し終わると消える。少しSL暦のある人なら誰でもなにかしらのキーボードをつけているものだろう。そして、それは常にアバターが身体に見につけているものでありインパクトもある。「それカッコイイね」「それ欲しい」などといった会話がされるのもだいたいこのキーボードについてが多い。
また、SLの中にはサンドボックスと呼ばれるものづくり専門に設けられたSIMも多数存在し、そこには常にある程度の人が出入りしている。そんあSIMを見つけたら、そのSIMのオーナーに企業のSIMへのテレポートスクリプトを埋め込んだ看板の設置を依頼してみるのも手かもしれない。特別なこだわりを持ってサンドボックスを運営しているオーナーはまだ少ないだろうし、空いているスペースを有効利用できるのだからオーナーにとっても悪い話ではないはずだ。いずれこの手法も増えていくことだろう。
SecondLife(以下SL)の世界で生活をしていると、改めて現実世界の物の価値について考えさせられるときがある。その中でも特に興味深いのは土地の価値である。
現実世界において土地は命の次に価値のあるもの。もちろん土地の大きさによってピンキリなので一概には言えないのだが、とにかく僕はそういう印象を持っている。では、何故土地にそこまでの価値があるのだろう。そして、なぜ人は土地を欲するのだろうか。
とりあえず思いつく理由を挙げてみる。
・土地には限りがあるから
・人間は健康管理のために風雨をしのぐ場所が必要だから
・持ち運ぶことのできない自分の所有物を保管する場所が必要だから
・友人や家族とくつろぐ場所が必要だから
・土地を持つことがその人のステータスを表すことになるから
こんなところだろうか。ではSLにおいても土地の価値は現実世界のそれと同等に扱えるだろうか。少しSLのシステムを説明しよう。SLにおいては誰かが一つのサーバーを設置することによって512m×512mの土地が増えることになる(サーバーの形態によってはその4倍もありうるが)。つまりSLにおいては、投資をして土地を作ろうとする人がいる限り土地は無限に増え続けるのである。そしてもちろんSLの中で生活するアバターたちは風邪など健康を害することはない。また、アバターたちは10,000個のオブジェクトを常時持ち歩くことができ、IM(インスタントメッセージ)を利用してどこからでもオンラインの人と話すことができる。
つまり上に挙げた土地を必要とする理由のうちいくつかはSLの中では存在しないのである。ではSLにおいて土地の価値とはなんだろう。ステータスだろうか。とは言えステータスとなりうるのも、現実の世界で「土地は高価なもの」という前提があったからこそである。では、店舗としての価値だろうか、それとも好みの嗜好の部屋を作るためだろうか。もちろんそれらの価値もあるだろう。ただ、はっきりといえることはSLにおいて土地とは現実世界ほどの価値はないということである。
とはいえ、SLの中にその土地の価値をそのまま持ち込んでいる人も多く存在する。恐らく何人かは現実世界の感覚をなんの疑問も持たずにそのまま持ち込んで、またある人はSLにおける土地の価値はそこまでないと知りながら、それでもこれから入ってくる多くのユーザーが土地に魅力を感じるであろうことを予想して土地を手に入れているようである。
土地に限らず、SLの中ではそんな現実世界の感覚から来る錯覚は数多く存在する。一つ例を挙げると、会話しているときに相手が立って、自分が座っているとひどく気になる、などがある。もちろんSLの中では立っていても疲れるわけでもないので相手に椅子を勧めないのは必ずしも無礼にはならないと思うのだが、これは現実世界のマナーがそのまま引き継がれた例だろう。逆に無視されている感覚もある、例えば相手の方を向かないで話をしても特に咎められることはない。首の向きを自由に変えることは非常に面倒なので当然ではあるのだが。
どうやら価値や礼儀の中には、SLに入ったことで廃れていくものと維持されるものがあるようだ。果たして土地の価値はこれからどうだろう。僕はそんなSLの中で見える人間の心理に少し注目している。もちろん徐々に増えていく日本企業の動向にもである。
SecondLifeで出会った人たち。
イタリア人の男性は僕に2枚の絵を見せてくれた。彼はその絵を売って生活しているという。クリーブランド近郊に住む女性は言った「私は情けないことに英語しか話せないけど、あなたは英語と日本語を話すことができる。それは世界を二つの方向から見つめられるってことで、すごく価値のあることなのよ。」スコットランドの男性は言った「Shinsuke Nakamuraはいい選手だ。アンリ?ああ、彼は僕の応援するチームでプレーして欲しいな。」
ブリズベンの女性は言った「オーストラリアには日本人がたくさんいるから、みんな日本のことは良く知っているの。」「横須賀に住むアメリカ人の男性は言った「今朝隣の男性が自殺していた。自殺って初めて見たよ。」「芸者を見つけたんだけど来ないか?」イギリスの男性は言った「僕はグランパスエイトが好きだ。プレミアリーグは年俸高すぎるし欲張りすぎるから嫌いだよ。浦和レッドダイヤモンズ?聞いたことあるな。」
アメリカに住むハンガリー人の男性は言った「君は質的な成長をし、僕は量的な成長をしているんだね」「ニコルキッドマンは背が高くて綺麗だけど僕のタイプじゃない。僕の好きなタイプはジュリアロバーツなんだ。」「僕は空手をやっている。船越義珍の教えは僕の人生に大きな影響を与えているよ。」プエルトリコの女性は言った「英語を勉強したければもっと人の多いところにいかなきゃダメだよ。でもあなたの英語上手だよ。」アイルランドの15歳の少年は言った「たくさん武器を手に入れたんだけど、いらない?」
ロシアの男性は言った「日本人は愚かだ。充分すぎるものを得ているのに、自分達は幸せじゃないと思っている。」「村上春樹がロシアでヒットするのは、彼の書く物語の中の登場人物が、ロシア人の知らない快適さを知っているからだと思うんだ。」通りすがりのアメリカ人が言った「僕は『新世紀エヴァンゲリオン』が好きなんだ。トトロ?トトロは見たことないよ。」オックスフォードの男性は言った「僕はウェインルーニーが好きなんだ。クリスチアーノロナウド?うん、彼もいい選手だ。でも今シーズンもチェルシーが優勝すると思うよ。」
南アフリカの男性は言った「日本人は愚かなんかじゃないよ。僕の知っている日本人はすごくいいやつだよ。」「君は僕の唯一の友達なんだ。『なんで?』って僕が聞きたいよ。」オハイオ州に住む53歳の男性は言った「アメリカ人がたくさんいるって?そんなこと言わないでくれよ。アメリカ人が馬鹿みたいに聞こえるじゃないか。」「センチやメートルを使わずにフィートやインチを使うところはアメリカ人のおかしなところの一つだね。」「アートや音楽は情熱を育むための食料だよ。僕は長い間それに飢えてきた。」「僕は脊髄の病気で家から出ることができない。悲しく思わないでくれ。君は元気になったら世界を旅するといい。」
どうやらモニタの中からでも世界は無限に広がるらしい。
先日、遅ればせながらSecond Lifeの世界に生を受けて、ここ一週間ほど世界を歩き回っていた。しかし、未だにこの世界で生きる意味が見つからない。
Second Lifeの世界では現実の世界、つまり僕がこうしてブログを書いている世界を「First Life」と呼ぶ。Second Lifeの世界ではFirst Lifeのビデオカードの性能が視力と運動神経に大きく影響を及ぼし、知性はFirst Lifeのものがそのまま利用できると言っていいだろう。
一週間ほどSecond Lifeの世界にいて感じた不思議なこと。綺麗な女性を見ると足が止まる。ときどきSecond Lifeの中の音が、First Lifeの音と区別がつかなくなる。日本語を話せる人が少なくて寂しい、など。五感が無意識にSecond LifeとFirst Lifeを混同していることに気づく。
また、Second Lifeでの行動はFirst Lifeでの行動と同様に考えることもできる。先ほど「未だSecond Lifeの世界で生きる意味が見つからない」と書いたが、このまま生きる意味が見つからなければそのうちSecond Lifeで生きることを辞めるだろう。つまりそれはFirst Lifeの世界で言えば「自殺」と同義である。したがって、「残された人の気持ちを考えろ」「生きていればそのうちきっといいことがある」など、First Lifeで自殺志願者達に向けられる声が、そのままSecond Lifeでも当てはまる。それでも僕はSecond Lifeで生きる意味が見つからなければ二度とログインしないだろう。僕はFirst Lifeでも自殺否定論者ではないから特に矛盾は感じないのだ。
とりあえず日本語を話せる人が増えるのを待つとしよう。今日も僕は桃源郷にいる。



