僕が渡り歩いてきた10人規模の小さな会社の経営者たちは、新しい人を雇う際には決まって、判断力、吸収力、応用力といった能力を重視していた。もちろんデザイン力、企画力なども必要だが、それだけでは長く高いパフォーマンスを維持できるはずもないのである。
すでに大きく成長した大企業と違って、発展途上の小さな会社では、社内の環境も、作業の流れも、社内ルールも常に変化を強いられる。となるとそれにすばやく適応し、目の前の作業だけでなく、それが会社のポリシーに反しないうえで利益に繋がるのかを考えながら仕事ができなければならないのは当然である。また、業界的にも新しい技術がどんどん世に出てくるだけに、元々持っている知識や能力で満足しているような人間は2,3年もすれば「使えない人間」に成り下がるのである。早い話、小さな会社はいつだって「常に考えることを怠らない人間」を求めているのである。
そんな採用ポリシーを持っていたから、時にはハズレの人材を雇うことはあっても、僕が過去所属していた会社は、全体的には「判断力、応用力を備えた、考える人間」の集団となっていた。
しかし、経営者たちも人間だから完璧ではない。明らかに効率の悪いと思われる方法での作業を指示したり、給与明細を給料日までに渡しそこねたり、始業時間を守ることを社員に求めながら、遅刻社員になんのお咎めもなかったり、寝る暇もないほどの仕事を与えながらもさらに営業向けの勉強を強いたりと、時には明らかに非のある行動をしたりする。
そうなると「常に考えることを怠らない人間」である社員たちは黙っていない。
「会社が給与明細を給料日に渡さないってことは、俺たちも仕事を納期に間に合わせなくてもいいってことですかね?」
「始業時間守らなくてもなんのお咎めもないなら、明日から俺も遅刻して来るようにしますね。」
「俺たちに勉強を強いる前に、もう少し経営者として社内の状況を把握する勉強をしてください。」
そういうときだけそんな経営者たちは思っていたはずだ。
「言われたことを黙ってやってくれる社員がいい」と。
投稿者 masato : 2008年03月13日 01:13


