いさかこうたろうの最近のブログ記事

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
4人の銀行強盗を描いた物語。

物語の中心となる4人の銀行強盗は、演説が得意な響野(きょうの)、体内に正確な時計を持つ雪子(ゆきこ)、スリの久遠(くおん)、人の嘘を見破るのが得意な成瀬(なるせ)と個性的なメンバーで構成されている。いつものように銀行の襲撃を終えたところで別の窃盗団と鉢合わせたところから物語は動き出す。

大人がただ単に走り回るだけでなく、雪子(ゆきこ)の息子である慎一(しんいち)の友人との問題などが盛り込まれている点が面白い。それ以外の大部分は予想通り展開されてとくに驚く部分はなかった。

他の伊坂幸太郎作品に比べると読みやすく、理解のできない話や登場人物もいないため、力を抜いて読むことができた。ただ、複数の個性的で特技を持った人物がチームを組んで大きなことをする、というのはよく使われる手法なので特に新しさは感じず、正直この作品がなぜそこまで有名かは理解できなかった。この辺りは僕には理解できない良さがあるのかもしれない。

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オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
引っ越してきたアパートで出会った青年は一緒に本屋を襲うことを誘ってきた。

例によって伊坂幸太郎のつむぎだす独特な世界。「ちょっと変わった人」と「一応普通の人」で進められるコミカルな会話は、「オーデュポンの祈り」のなかで繰り返された会話と非常に近いものを感じた。
物語は「現在」と「2年前」が交互の進んでいく。「現在」では本屋を襲うことを持ちかけた河崎(かわさき)と僕。そして「2年前」では琴美(ことみ)とブータン人のドルジが近所で発生している動物の虐殺事件に関心を持つ。

「現在」からは過去に少しずつ話が広がっていき、やがて2年の空白の期間が埋まっていく。この独特な世界観は、好きな人にはたまらないのだろう。伊坂幸太郎好きの友人から「これだけは読んでみて」と言われて挑戦したのだが、やはり僕の好みとは若干異なるようだ。

決して退屈ではないのだが、なにか、著者の訴えたいことを十分に理解できていないような読後感を毎回感じてしまうのだ。

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オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
3年後に小惑星が地球に衝突する。人々は働くのを辞め、学ぶのを辞め、何人かは暴徒と化し、何人かは自ら命を絶った。残された3年という月日を生きている人々を描く。

僕らはいつか死ぬということをもちろん知っていながらも、常にそれは遠い未来だと考えている。だからこそ「3年」と明確に自分の最期のときを突きつけられた人々の様子を通じて、生きることの意味を考えさせようとしているのだろう。

人々がそんなに簡単に命を絶ったり、そう簡単に食料を求めて暴徒と化すのか、正直疑問である。登場人物の一人のキックボクサーの苗場(なえば)さんは、世界の終りが3年後に迫ってもジムに通ってミットにハイキックを撃ち続けている、一風変わった人間のように描かれている。

彼はこういう。

明日死ぬとしたら、行き方が変わるんですか?
あなたの今の生き方は、どれくらい生きるつもりの行き方なんですか?

「明日死ぬとしたら?」と仮定して自分の行き方を見つめなおす考え方は、新しくもなんともなく、むしろ昔からたびたび語られることであるが、僕が思ったのは、むしろ、これって特別なことだろうか?ということ。こういう人、結構いるんじゃないかと思う。人間そんなに捨てたものではなく、最期まで格好よく生きることがきるのはのは一握りのヒーローだけじゃなく、日本にだって、僕の周りにだってたくさんいるんじゃないかと思うのだ。

そして僕自身も、もちろん実際にそんな状況になってみないとどうなるかなんてわからないが、この物語の中のような状況に陥ったら、なんか、毎日サッカーして、最期の日には空を眺めて楽しめそうな気がするのだが、他の読者はどう感じるだろうか?

今回、伊坂幸太郎という著者が人気ある理由が少しわかった気がする。彼の作品は何かを考えさせようとする、でも決して答えは示さない。そんな内容だから、「人生とは何か?」など、普段深く考えないで生きる人々になにか「はっ」とさせるような強い衝撃を与えるのではないだろうか?

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オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
コンビニ強盗を試みて逃亡の身となった伊藤(いとう)は小さな島に辿り着いた。そこは少し変わった人々と言葉を喋るカカシがいた。帰ろうとしても逃亡生活が待っている伊藤(いとう)はしばらくこの島で生活することにした。

序盤から伊坂ワールド全快である。どこかで伊坂幸太郎を小説界のシュールレアリストと称していたがまさにその言葉のとおり現実感の薄い物語。前々から伊坂幸太郎の紡ぐ物語と僕の読書に対して求めているものとのギャップは感じていたのだが、先日たまたま手に取った「魔王」が思いのほか良く、再び彼の作品を読んでみようとおもっての本作品だったのだが、ページをめくる手は遅くなるばかり。

物語はその見知らぬ不思議な島で展開していく。1人(?)のカカシの言葉を信じて島から出ようとしない人々の言葉は、時に人々が忘れかけている幸せの形や、しばしばフィルターを通してみている真実を、端的にあらわしている。

個人的に印象的だったのは、生まれながらに足の不自由な人間を見ながら、島のペンキ塗りが言う言葉。

あいつを見るといつも思う。俺はまだマシだって。俺は普通に歩けている。あの男が、奇跡でも起きないかと祈っている願いが、俺にはすでにかなっている。

伊藤(いとう)が島に着てから少しずつ起こる変化。そして島に伝わる言い伝え。

ここには大事なものが、はじめから、消えている。だから誰もがからっぽだ

多くのものが足りないように感じられるにもかかわらず、あえて一つ挙げようとするとその答えがわからない。その答えを島の人々は、島の外から来た伊藤(いとう)に期待する。

人に価値などないでしょう。ただ、たんぽぽの花が咲くのに価値はなくても、あの花の無邪気な可愛らしさに変わりはありません。

印象的な言葉をいくつか得ることができたものの、全体として評価すれば、この長い布石が最終的な結末に対して必要だったのか疑問を感じてしまう。このあたりが感覚の違いなのだろう。また機会があったら別の作品も手にとってみたい。

支倉常長
江戸時代初期の仙台藩士。伊達政宗の家臣。慶長遣欧使節団を率いてヨーロッパまで渡航し、ローマでは貴族に列せられた。(Wikipedia「支倉常長」

リョコウバト
北アメリカ大陸東岸に棲息していたハト科の渡り鳥。鳥類史上最も多くの数がいたと言われたが、人間の乱獲によって20世紀初頭に絶滅した。(Wikipedia「リョコウバト」

ジョン・ジェームズ・オーデュポン
アメリカ合衆国の画家・鳥類研究家。(Wikipedia「オーデュポン」

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オススメ度 ★★★★☆ 4/5
安藤(あんどう)はあるとき、自分が念じれば他人を自分の思ったとおりの台詞を喋らせることができることに気付く。そして、同じころ一人の政治家が世の中を騒がしていた。

物語は二部で構成されている。前半は安藤(あんどう)目線に立った展開で、後半はその5年後、安藤(あんどう)の弟の恋人である詩織(しおり)目線で描かれている。

今まで、「重力ピエロ」「グラスホッパー」という2作品に触れて、正直、この著者、伊坂幸太郎の作品は自分とは合わないのだと思っていた。「良い」とか「悪い」ではなく、多くの鍵穴にしっかり合致するマスターキーが自分の心の鍵穴にだけは合わないような、そんな感覚であった。しかし、今回は届いてきた。なんかじわじわ伝わってきた。

他の作品同様、本作品も、物語の本筋と関係あるんだかないんだかいまいちはっきりしないエピソードや台詞で構成されいている。憲法第九条や自衛隊など、少しだけ現実の社会問題を含んでいるように感じられるそれらのエピソードを読みすすめるうちに、なんかいろいろ考えてしまうだろう。

馬鹿でかい規模の洪水が起きた時、俺はそれでも、水に流されないで、立ち尽くす一本の木になりたいんだよ。

だからつい僕もいろいろ考えてしまった。

人間が争うのはなんでだろう。
人間が物事を深く考えるからだろうか。
それとも、人間が物事を深く考えないからだろうか。

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オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
主人公の泉水(いずみ)と父親の違う弟、春(はる)。あるとき放火事件が立て続けに起こり、春(はる)が次の放火場所を予測した。闘病中の父親と、すでに亡くなっている母親。少し変わった家族の物語。

物語自体に大きな流れがあるわけでもなく、取り上げているのは探せば世の中のどこかにありそうで目立たぬ人間関係である。ただ、そんな物語の中に散りばめられた、泉水(いずみ)と春(はる)の計算されつくした言葉のやり取り。それこそがこの物語の見所なのだろう。随所に溢れる、世の中を見透かしたような台詞の数々を読者は楽しむべきなのかもしれない。

政治がわからぬ。けれども邪悪に対しては人一倍に敏感であった。

個人的には僕の好みの作品ではないが、これはもはや好みの問題である。世間的な評価は非常に高い作品であるので手にとって各自が自分で評価してみるのも面白いだろう。

p53遺伝子
RB遺伝子とともに最もよく知られている癌抑制遺伝子。

テロメア
真核生物の染色体の末端部にある構造。染色体末端を保護する役目をもつ。

ローランド・カーク
1950〜1970年代に活躍したアメリカ合衆国のサックス奏者。

ボノボ
チンパンジーと同じPan属に分類される類人猿である。別名を、ピグミーチンパンジーともいう。

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オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
妻を殺された恨みを晴らすために非合法組織の社員として潜入した鈴木(すずき)。人を自殺させるのが仕事の鯨(くじら)。殺し屋の蝉(せみ)。法律の手が届かない場所で繰り広げられる世界。

物語中で、引用される、ガブリエル・カッソの映画やロックスター、ジャック・クリスピンは伊坂幸太郎の架空の人物らしい。物語を楽しむと同時に現実世界の知識を得たい人にとっては敬遠されることなのだろう。それでもこの引用された架空の映画監督ガブリエル・カッソの映画の描写が僕にとってはこの物語でもっとも印象的なシーンとなった。

大きなテーマを裏に秘めているようで、その輪郭は最後まで曖昧なままである。どこまでが現実でどこまでが非現実なのか。著者の訴えたいことをはっきりと汲み取りたい僕にとっては、この曖昧さは受け入れ難く、好みの作品とは言えないが、普段とは少し異なる物語に触れたいと感じている人は一度手にとってみる作品なのかもしれない。

スタンリー・キューブリック
映画監督。「2001年宇宙の旅」「アイズ・ワイド・シャット」など。

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