【このミステリーがすごい!大賞】の最近のブログ記事

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第7回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作品。

臨床心理士の佐久間美帆(さくまみほ)は、患者として藤木司(ふじきつかさ)という青年を担当することとなった。美帆(みほ)に心を開き始めたように見えた司は「声の色が見える」と言う。

著者柚木裕子のデビュー作品ということらしい。昨今注目が集まる心のケアという分野と、共感覚という一般の人にはおそらく一生かけても出会うことのないだろう特殊能力を組み合わせて、物語を構成している。
物語の中で、信頼を築いた美帆(みほ)と司(つかさ)は手首を切って死んだ女の子、彩(あや)の死の本当の理由を探ろうとするのだが、彩(あや)もまた失語症という普通の生活を送りにくい症状を抱えているため、彼らの生きかたやその特異な能力ゆえの生活のしかたや考え方が見えてくる点は面白いだろう。

失語症患者がパソコンをなかなか使わない理由のひとつに、感じよりもひらがなのほうが判別しにくいということがある。漢字ならば文字を見ただけでイメージが頭の中に浮かびやすいが、ひらがなはひつつひとつ読んでいかないと意味がわからない。

若い著者であろうことをうかがわせるようなIT用語もいくつか出てきて、新しさを感じさせてくれたが、共感覚や福祉施設、臨床心理士など、掘り下げようと思えばいくらでも掘り下げられる題材が揃っていただけに、全体的にちょっと変わったミステリーに過ぎない程度の作品で終わってしまった点が残念である。

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オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
第5回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作品。

門脇(かどわき)は久しぶりに再会した旧友、丹羽(にわ)の誘いにより、ブレイクスルートライアルというセキュリティ会社が企画するとある施設への浸入コンテンストに参加することを決意する。ともに人には言えない過去を抱えながら、最新の防犯技術を備えた施設への侵入を試みる。

「浸入」を目的として話は展開するから、そこには多くのセキュリティ技術について触れられている。指紋認証や静脈認証がそれである。それぞれのセキュリティシステムの長所や短所にも触れられている点はいろんな興味を掻き立ててくれるかもしれない。

物語としては、門脇(かどわき)を中心とした視点のほかに、その施設への侵入、もしくはたまたま居合わせたいくつかのグループへと移るが、いずれもその描写は感情移入できるレベルとは言い難く、個人的には、どれか一つに絞ってもっと詳細な成長過程などまで描いて欲しかったと感じている。
また、本筋の施設への浸入のくだりも、読んでて手に汗握るというレベルとは程遠く、全体的には、現代のセキュリティシステムに関する描写に適当に登場人物と物語を肉付けした、というレベル。

正直、この作品と言い「パーフェクトプラン」といい、この「このミステリーがすごい!」という賞自体に疑問を感じさせる内容であった。ひょっとしたら審査員達が「新しくなければならない」「ミステリーでなければならない」などのように、何か間違った方向の意識に縛られているのではないだろうか。

アリステア・マクリーン
スコットランドの小説家。スリラーと冒険小説で成功した。『ナヴァロンの要塞』で最もよく知られている。(Wikipedia「アリステア・マクリーン」

ギャビン・ライアル
イギリスの冒険小説・スリラー小説家。(Wikipedia「ギャビン・ライアル」

ジャック・フットレル
アメリカのジャーナリスト・小説家・推理作家。1912年タイタニック号の遭難事故で死亡。(Wikipedia「ジャック・フットレル」

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オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第4回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作品。

バチスタ手術の天才外科チームで原因不明の術中死が立て続けに起こった。田口(たぐち)医師は真相の究明に挑むこととなる。

病院という舞台を扱ったミステリーである。昨今のよくある病院内の物語と同様に、本作品でも医者の上下関係や立場を重視する姿や、その閉鎖的な世界の現状が描かれている。本来、人の話を聞くことを得意とする田口がチームバチスタのメンバーから話を聞くことで真相をつかもうと努める。よくあるミそして、人の話を聞くことを仕事としている田口であるがゆえの目線が、個人的に本作品で印象に残った。

人の話に本気で耳を傾ければ問題は解決する。そして本気で聞くためには黙ることが必要だ。

同時に日本の医療の問題点も随所に散りばめられている。

文化人や倫理学者に発言させ、子供の臓器移植を倫理的、あるいは感情的に問題視させる。日本で子供の臓器移植を推進しようとすると足を引っ張る。米国で行われる手術は美談として支援し、日本では問題視する。同じ小児心臓移植なのに、おかしいと思いませんか


中盤から白鳥(しらとり)という真相救命の鍵を握る人物の登場以降、既にそこまでにも頻出していた専門用語やカタカナ言葉が一気に増える、その一方でいつまで経っても話の展開にスピードが感じられなかったのが残念である。「このミス」大賞の評価には疑問が残る。

拡張型心筋症
心筋の細胞の性質が変わって、特にに心室の壁が薄く伸び、心臓内部の空間が大きくなる病気。

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オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第2回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作品。

代理母として生計を立てる小田桐良江(おだぎりよしえ)と歌舞伎町で働く田代幸司(たしろこうじ)、赤星(あかぼし)サトル、張龍生(ちょうりゅうせい)の4人は投資アドバイザーである三輪俊英(みわとしひで)の息子である俊成(としなり)を誘拐して、ある犯罪計画を立てる。彼ら4人の計画通りに進むかに思えたところで物語りは大きく展開していく、という話。

物語はクラッキング、オンライントレードなど旬な題材を盛り込んだ、まさに今風な物語に仕上がっているが、物語自体の面白さ、深みは予想を超えるものではなかった。物語よりも新たな専門知識の風を吹き込んでくれたことが印象的である。

ソーシャルエンジニアリング
ネットワークの管理者や利用者などから、話術や盗み聞き、盗み見などの「社会的」な手段によって、パスワードなどのセキュリティ上重要な情報を入手すること。パスワードを入力するところを後ろから盗み見たり、オフィスから出る書類のごみをあさってパスワードや手がかりとなる個人情報の記されたメモを探し出したり、ネットワークの利用者や顧客になりすまして電話で管理者にパスワードの変更を依頼して新しいパスワードを聞き出す、などの手法がある。

ベルフェゴール(Belphegor)
ベルフェゴールは、人間界の結婚生活などをのぞき見る悪魔で、牛の尾にねじれた二本の角、顎には髭を蓄えた醜悪な姿をした悪魔とされる。しかし、それとは別に妖艶な美女として描かれることもある。何故か車輪付きの椅子、または寝室の奥で洋式便所に座った姿で現される。

七つの大罪
「七つの罪源」ともいわれ、「罪そのもの」というより、キリスト教徒が伝統的に人間を罪に導く可能性があるとみなしてきた欲望や感情のことを指す。伝統的な七つの大罪とは高慢、嫉妬、憤怒、怠惰、強欲、暴食、色欲の7つを指す。

エニグマ
第二次世界大戦でドイツ軍が使用した暗号システム。ドイツ軍はエニグマに絶大の自信を持っていたため、 これが連合軍に解読されるとは夢にも思っていなかった。エニグマ暗号がもし解読されていなければ、 ノルマンディ上陸作戦や大戦での連合軍の勝利はずっと遅れたか、 あるいは、勝利そのものさえなかったかもしれない。

ES細胞
embryonic stem cellsの略語で、正式には「胚性幹細胞」という。不死化し、がん細胞のようにいくらでも永く増殖しつづける力をもっている。しかし、ヒトES細胞は、“人の生命の始まりである受精卵”を破壊して作り出すものだけに、いかに有用な細胞とはいえ、倫理的に果たして作製が許されるものかどうか、欧米を中心に真剣に議論されている。

ディスレキシア
学習障害の一つのタイプで、脳内の中枢神経系の機能障害。特徴としては、平均の知的能力があり、その他の障害が無いのにも関わらず、文字をすらすらと読むことができなかったり、スペリングをよく間違い、文字を書くことが苦手などがある。

ウィザード
本来「魔法使い」を意味する英語で、コンピュータの世界では稀に見る天才的技術者をウィザードと呼んだりもする。

サヴァン症候群
知能障害をもちながらも、例えば音楽や目で見た風景を写真と同じくらいに見事に再現できるなど、突出した記憶力を持つ人々のこと

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オススメ度 ★★★★☆ 4/5

第1回「このミステリーがすごい!」大賞金賞受賞作品。

指を失ったピアニスト如月敬輔と障害を持った少女、千織。二人に起こった奇蹟の物語である。正直このテの奇跡の話は良く有る。「このテ」というのがどんなテだかというのは、ネタバレになってしまうのでここで書くのは避けることにする。そんなよく使われる奇跡であるにも関わらず、この本は描写が非常にリアルで、こんな奇跡が起こってもおかしくないのではないかと思わせてくれる。つい「実際にどこかで起こったノンフィクションなのかな?」と思ってしまったぐらいである。
この本の魅力はそんなストーリーだけでなく、要所要所に読み直したくなる文章や言葉がある、読み終わった時にはページのスミがたくさん折れていた。

「心というのは肉体を離れても存在できるものなのか」
「人間だけが親子でもない別の個体のために命を投げだせる特別な存在なのではないか」

読んだあとにいろんな問いかけを自分に向けてみたくなる。

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