ふなとよいちの最近のブログ記事

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ベネズエラの荒れ果てた地でレアアースが見つかった。その採掘権で儲けようとするエリゾンド家。一方で、丹波春明(たんばはるあき)と鍛冶司郎(かじしろう)は二千万ドルを求めて危険な旅を続ける。

コロンビア、ベネズエラという麻薬や過激派などがはびこる、政府の支配の及ばない国を舞台にした物語。南米という社会としてはいまだ発展途上の地域の文化や人についての理解には役立つだろう。物語中で触れられている出来事のいくつかは実話に基づくものなのだろう。そのいくつかはとても印象的にも関わらず、聞いたこともないことなので、そのような記述に出会うたびに南米が僕らに日本人にとって地理的にも心理的にも遠い場所なのだと思い知らされる。

残念ながら主要な登場人物はみんな人の死をなんとも思わないような行動を繰り返すので、その行動やふるまいにいい刺激を受ける部分はない。著者船戸与一はどうしてもイランイラク戦争を扱った「砂のクロニクル」の印象が強く、あの世界観に再び触れたくて読み続けている気がする。その点で本作品は期待に応えてくれたとは言えない。もし南米の物語をもっと読みたいという人がいたのなら垣根涼介の「ワイルド・ソウル」をお勧めするだろう。

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オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第123回直木賞受賞作品。

フィリピン、セブ島のガルソボンガ地区に祖父と住むトシオ・マナハン13歳。ある日、日本人と結婚したクイーンと呼ばれる女性が、故郷であるガルソボンガ地区に戻ってきた。それをきっかけにトシオは内紛に巻き込まれていく。

その描写からはずいぶん昔を舞台とした物語のようにも感じるが、実際には1998年の現代を描いている。祖父とともに強い軍鶏(しゃも)を育てることに夢中になっているトシオ・マナハンが少しずつ大人になっていく様子が描かれる。

日本人とフィリピン人の間に生まれたがゆえに「ジャピーノ」と呼ばれるトシオ。そんなトシオの生活の様子から、フィリピンの田舎町での生活が見えてくるだろう。電気もなく、警察や役人は汚職に手を染め、貧富の格差によって生活が大きく異なる。そんななかで信念を持って生きる事はきっと大変な事なのだろう。

本書のタイトルにもなっている「虹の谷」はガルソボンガ地区でトシオのみが行き方を知っているという不思議な虹のできる谷のこと。しかし、トシオはそれゆえに悲劇に巻き込まれていくのである。

フィリピンの歴史についてもっと知りたくさせてくれる一冊。

浮塵子
イネの害虫となる体長5mmほどの昆虫を指す。(Wikipedia「ウンカ」

タイタン・アルム
インドネシア、スマトラ島の熱帯雨林に自生する。7年に一度2日間しか咲かない、世界最大の花。(Wikipedia「スマトラオオコンニャク」

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オススメ度 ★★★★☆ 4/5
第5回山本周五郎賞受賞作品。

独立国家の建設を求めて放棄しようとするクルド人。イランはホメイニ体制の下でそれを抑えようとする。そんな混乱のなかの中東に2人の「ハジ」と名乗る日本人がいた。

イランイラク戦争。まだ政治に関心を持つような年齢でもなかった僕は、その名前しか知らない。しかし、戦争というのは、他の国で豊かな暮らしを送っている人にとっては他人事でも、当人にとっては人生を左右するもの、人に寄っては人生そのものでもあったりする。本書が描いているのはまさにそんな人達である。

本書は「ハジ」と名乗る2人の日本人のほかに、イランの共和国軍である革命防衛隊に属するサミル・セイフ、クルド人でクルド国家の樹立を目指すハッサン・ヘルムートの視点からも語られる。サミル・セイフは国を守るためにそのすべてを注いでいるが、革命防衛隊内の腐敗に葛藤を続ける。また、ハッサン・ヘルムートもクルドの聖地マハバードの奪還を目指す中で、イランクルドとイラククルドの諍いなどの不和にも頭を悩まされる。

そんな状況のなか、「ハジ」と名乗る日本人の一人駒井雄仁によって2万梃のカラシニコフがカスピ海をわたってクルド人に届けられようとしている。そしてその後武器を得たクルド人たちはマハバードへ向かう事となる。

かなりの部分が史実に基づいているのだろう。これほど大きな混乱を知らずに今まで生きていた自分がなんとも恥ずかしくも感じた。

本書はハッピーエンドとは言えないだろう。そもそも戦争とは悲しみしか生まないのなのかもしれない。それでも、そんな時代だからこそすべてをかけて人生を全うする登場人物たちが羨ましく思えてしまう。

イスラム革命防衛隊
1979年のイラン・イスラム革命後、旧帝政への忠誠心が未だ残っていると政権側から疑念を抱かれた従来の正規軍であるイラン・イスラム共和国軍への平衡力として創設されたイラン・イスラム共和国の軍事組織。(Wikipedia「イスラム革命防衛隊」

ルーホッラー・ホメイニー
イランにおけるシーア派の十二イマーム派の精神的指導者であり、政治家、法学者。1979年にパフラヴィー皇帝を国外に追放し、イスラム共和制政体を成立させたイラン革命の指導者で、以後は新生「イラン・イスラム共和国」の元首である最高指導者(師)として、同国を精神面から指導した。(Wikipedia「ルーホッラー・ホメイニー」

イラン・イラク戦争
イランとイラクが国境をめぐって行った戦争で、1980年9月22日に始まり1988年8月20日に国際連合安全保障理事会の決議を受け入れる形で停戦を迎えた。(Wikipedia「イラン・イラク戦争」

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